【視点】アークティックLNG2プロジェクトから撤退か残留か、悩む日本

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アークティックLNG2プロジェクト - Sputnik 日本, 1920, 22.02.2024
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米国は2023年11月、ロシアの北極圏でのアークティックLNG2プロジェクトを制裁対象にした。日本政府は三井物産とJOGMECのプロジェクト参画をめぐる状況を詳しく調べている。
上川外務大臣は2月16日の定例記者会見で「北極LNG2については、昨年11月の米国制裁の影響の詳細を、引き続き、精査しているところでありますが、我が国のエネルギーの安定供給を損なうことのないよう、総合的に判断をし、そして、適切に対応してまいりたいと考えております」と述べた
上川氏はまたサハリン2プロジェクトについて、日本はエネルギー安定供給の観点から、権益を維持する方針だと述べた。スプートニクは、米国の制裁が日本のガス輸入に与える影響について、専門家らに尋ねた。
「現在の地政学的状況で米国は日本に圧力をかけ、日本企業はこのプロジェクトから撤退すると考えている。近年、政治と経済の領域では政治が勝っており、米露対立では利害関係が非常に大きい。したがって米国は日本の利益はこの際無視してよいと判断したようだ。もちろん、プロジェクトに参加している日本企業は損害を被るだろう。その投資を彼らは凍結したり償却することができる。全体として、日本経済に深刻なダメージを与えることはない。現在、世界市場には大量のガス供給がある。日本は伝統的にオーストラリアや中東からガスを購入してきたが、今や米国が日本に液化ガスを提供することができる」
ボリス・シュメリョフ氏
経済研究所政治研究部長
「LNG(液化天然ガス)は日本のエネルギー安全保障にとって非常に重要な製品だ。そしてロシアは日本に最も近いガス供給国であり、他の供給国は遠い。したがって『サハリン2』が優先される。これは北極圏プロジェクトにも当てはまると思われる。そのため日本は同プロジェクトに全力で留まろうとするだろう。なぜ米国はアジアで最も親密な同盟国である日本の利益を考えないのだろうか? それは、米国は常に自国の経済的利益を優先するからだ。米国には政治的、軍事的同盟国は存在するが、経済的同盟国は存在しないし、存在し得ない。米国には、パートナーはいる。競争相手も存在する。だがそのために米国が自国の利益を無視するような経済的な『友人』は存在しない」
セルゲイ・ピキン氏 
ロシア・エネルギー開発基金の責任者
「日本政府は時間を稼ぎ、制裁の例外を獲得しようとするだろう。いずれにしても、プロジェクト実施から得られる利益はもちろんのこと、プロジェクトへの何億ドルもの投資を放棄して、ただ立上げてそして撤退することは明らかに得策ではない。しかし、このプロジェクトから日本へのLNG輸入は、たとえ出荷が始まったとしても、極めて課題が多い。まず、LNG用のタンカーを探さなければならず、これには追加で運用コストがかかってくる」
アレクセイ・グリバチ氏
国家エネルギー安全保障基金副代表

「日本と中国の企業は、アークティックLNG2への参画に喜んで同意した。これにより、彼らは自国に生産分を供給する権益を得た。北極海航路の輸送費用は安価で、この地域には数十年分のガス埋蔵量がある。米国には、さまざまな開発段階にあるLNGプロジェクトが10件あり、その総生産能力は年間1000億立方メートル以上だ。米国産LNGを日本や中国に供給する場合、1000立方メートルあたり約50ドル割高になる。最近、米国は競争の手段として『金銭の脅し』を使っている。米国は公に同プロジェクトを破壊するつもりだと宣言し、現在プロジェクトの参加者は高額の罰金に脅かされている。

このプロジェクトに参加する外国企業には2つの道がある。米国に制裁の一部解除や延期を求めることだ。また、ドル圏で活動しない、新たに設立された企業に権利を譲渡して、プロジェクトから撤退することもできる。中国は喜んで人民元建てに切り替えるだろう。一方、フランスや日本にとっては難しいだろう。

米国の制裁はロシアにとって不愉快だが、大きなダメージはない。アーキティックLNGの3つのラインの設備はすべて購入済で、第1段階が稼働しようとしており、企業は買い手を見つけるだろう。米国は自分自身をもっと心配すべきだ。埋蔵されているガスを一刻も早く売り払おうと躍起になっている。埋蔵量はそれほど多くない。合理的に採掘できるのは12年程度。そのうえ、一昨年の欧州での異常な価格高騰の後、多くのガス生産業者が新しい設備の稼働を急いだ。その結果、価格は3年ぶりの安値に戻り、ガス生産業者の不興を買った」

アレクサンドル・フルシュドフ氏
石油ガス情報通信社の専門家
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