おかしな安保関連法、戦争にはつながらない、でも平和も強化されない

© AP Photo / Eugene Hoshikoおかしな安保関連法、戦争にはつながらない、でも平和も強化されない
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今日、参院平和安全法制特別委員会で採決された安保関連法は東アジアの安定を強化する目的ではなく、日米同盟を第1に中国を抑止する目的で強化することを目指したものである。有名なロシア人研究者で戦略技術分析センターのヴァシーリー・カーシン氏は、こうした見解を表している。

カーシン氏はこの同盟関係強化に日本は米国よりも少なからず、いや、ひょっとするとずっと多くの関心を抱いていると指摘する。その理由は日本が米国以上に中国の軍事力の伸長に大きな憂慮を感じているからだ。このため、中国との軍事政治的競争政策に引きずりこまれているのは、今や日本ではなく、米国だということができる。

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ところがこの同盟関係で日本が演じることになるのは補助的役割だとカーシン氏は指摘する。米国はもちろんのこと、巨大な軍事力を有しているが、この軍事力は世界中に分配されている。中東、欧州での事件に反応せざるを得ない米国にはアジア太平洋地域に著しい軍事力を補填するのは簡単ではない。米国の専門家らの間では、日本は海上警備や潜水艦対策では米国の群を抜いていると評価されている。カーシン氏は、今の日米中国抑止戦略の中でも海上自衛隊のこのファンクションはさらに求められることになるとの見方を示している。

この部分は、すでに採択されてしまった集団防衛の法案と並んで、中国の不満を呼ばないわけにはいかない。問題はその不満が何に流れ出すかということだ。

カーシン氏は、安保関連法を採択し、米国との軍事同盟を強化した日本を中国が罰しようという挙に出ることもありえるとの見方を示している。中国は尖閣諸島海域に漁船船団、警備艇、軍用機を差し向け、これによって緊張した状況を作り出そうとするだろう。島付近での対立は以前のとおり船通しの衝突や放水の掛け合いにとどまるだろうが、こうしたことが起きてしまうと、中国国内ではそれに続いて反日的な声明が熱を帯びて高まり、これによって中国で事業活動を行う日本人ビジネスマンは損害を蒙ることになるとカーシン氏は指摘する。

日本にとっては、中国が1945年に日本に戦争で勝った事実を自国の新たな歴史の心棒的な出来ごとにすえ、国民の政治的、イデオロギー的結束の主たるファクターとしたことが気に入らない。

もちろん、日本との深刻な軍事対立を中国は望んでいないとカーシン氏は語る。中国に必要なことは、尖閣諸島付近でそうした大胆な行動を起こすことで、東アジア諸国に対し、外的勢力、つまり米国と政治的、ましてや軍事同盟を結んではならないぞ、その代わり中国を中心としてその周りにアジアの新秩序を構築すべきだぞ、ということを示すことだ。そうしておきながら中国は自国の海軍力を積極的に伸張し続けるだろう。だがこれは、日本が安保関連法を採択するよりもはるかに前に着手されていたことだ。

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カーシン氏は、日本は安保関連法を採択したが、だからといってシリアスな紛争、ましては外への攻撃を急ぐわけではもちろんないと指摘している。それを物語るのは、日本は沿岸警備、対ミサイル、対潜水艦防衛を強化しつつ、冷戦期に設定された陸上自衛隊の戦力を縮小する構えを見せていることだ。日本は近未来には攻撃国になることはない。それは現段階では憲法9条を廃止することはないというのが唯一の理由ではない。攻撃国となれないのは、戦後、米国によって構築された日本の政治システム自体がそれを邪魔しているからだ。日本の行政システムは非中央集権化し、透明である。まして本格的な攻撃を行うには10-15年の間、休みなく準備を行う必要がある。ところが日本の首相が4年の任期を再選する例は稀だからだ。第一、日本がアジアで攻撃を開始するなど、そんなことは米国が許さない。仮に米国が中国を相手に戦争を起こさねばならなくなれば、その時は同盟国の義務として日本も参戦することは当然だ。カーシン氏はこうした考察を行った上で、それでも安保関連法が採択され、米国との軍事同盟が強化されれば、それが東アジアの平和と安寧につながることはないとの見方を示した。

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