北極での日露経済協力、政府のバックアップに期待

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15日、北極圏の気温が1900年以来最高になっていることがわかった。米海洋大気局が年次報告書の中で明らかにしたものである。北極に注目が集まる中、日本政府も、北極に対する研究開発の姿勢を活発にしている。これについて北極の国際政治に詳しい日本大学・国際関係学部助教の大西富士夫氏は、歴史的背景を踏まえ、次のように背景を分析している。

日本と北極との関わりは古く、日本政府は1920年にスピッツベルゲン条約に調印。その後90年代の冷戦終結前後に北極観測・研究の流れが出てきた。1987年、ゴルバチョフ書記長が行った北極圏の軍事対立緩和を呼びかけたムールマンスク演説の中には、北極における科学協力に関する提案が含まれていた。その後、自然科学の研究者が中心となり「国際北極科学委員会」が作られ、日本は当初からこれに参加してきた。

科学研究分野以外での日本の北極に対する取組みには、当時の石油公団(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構)がグリーンランドのカヌマス・プロジェクトに参加した例がある。しかし、残念ながら、経済分野での取り組みは、同プロジェクト以外には広がらなかった。冷戦終結以降、日本と北極の関わりの主軸となってきたのが科学の柱であり、それと並列して、よりエフォートは小さいながら、外交の柱と経済の柱があった。大西氏は次のように述べている。

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大西氏「2007年に北極海の海氷面積が著しく減り、同年9月の海氷面積最小記録の更新以降、日本は観測分野の取り組みを強化してきました。今年の10月16日付で「我が国の北極政策」が発表されましたが、これは政府としては初の北極に関する公式文書です。政策を作り、外交の柱を強化しようという話は海氷面積の縮小以降から準備が行われてきました。特に、ロシアはじめ、北極諸国との協力の可能性を探していく外交努力が行われてきました。こうした努力の甲斐もあり、2013年5月に、日本は北極評議会のオブザーバー国として正式に認められました。また、海氷が減少して以降、経済分野の関心も広がり始め、日本は特にNSR(北極海航路)の潜在的可能性を非常に重視するようになりました。NSRはアジアと欧州の物流を短縮することができ、世界の物流全体に大変なインパクトを与える可能性があります。このように、科学の柱に加えて、外交、経済の柱でも色々な取り組みがここ数年増えてきました。ですから、ここ最近急に北極政策ができたわけではなくて、2007年以降変わりゆく北極海の自然環境の中で日本はコミットメントを強化してきたのです。」

日本は「我が国の北極政策」の中で、パートナーとしてロシアを名指ししている。具体的なロシアとの協力の可能性について、大西氏は次のような見解を示している。

大西氏「日本政府は今年の9月に、北極域研究推進プロジェクト(ArCSプロジェクト)という自然・社会科学分野を含めた5か年の研究プロジェクトを開始しています。もちろんこれは先に述べた「北極政策」とも連動しています。本プロジェクトの重要な柱は国際連携拠点の整備と国際的な研究の推進、若手研究者の教育等です。国際連携拠点の整備の中で、日本は北極圏に観測整備基地をもつロシア、アメリカ、カナダ、ノルウェー等と組み、研究者が現地に行って、協力させてもらえるような足場を作ってきました。

特にロシアとはすでに合意があり、セーヴェルナヤ・ゼムリャ島にあるケープ・バラノバ基地において、日本の研究者がロシアの研究者の協力の下で観測を実施することとなっています。これは、日本の国立極地研究所とロシアの北極および南極研究所、科学アカデミーの間で合意されています。

研究分野以外でのロシアと日本の協力も可能性があります。2013年の安部首相・茂木経産大臣のロシア訪問に続き、翌年3月に東京で日露投資フォーラムが開かれ、様々な業種の代表者が1000名超参加しました。これはシベリア・極東地域も含めた投資フォーラムでしたが、もちろん北極圏もその中に含まれていました。これでロシアへの民間投資が進むと思われましたが、ウクライナ危機が発生して国際情勢が変わってしまいました。日露外交関係が停滞を迎え、北極圏が含まれた経済協力が残念ながらストップしています。

しかし私は北極圏において日本のビジネスが活躍する場があると考えています。例えば先住民の方々は気候変動によって生活環境の変化のリスクにさらされているので、日本のインフラ技術でもってそうしたリスクを緩和することなどが考えられます。これ以外では、農業分野や医療分野などでも日本企業の投資・進出が考えられます。これらの分野での協力が実現すれば、シベリアの人々の経済生活・福祉の向上に貢献することができます。したがって日本とロシアは北極で科学観測協力だけではなく、外交上の機が熟すれば、両国政府が経済的な結びつきの強化を図れる可能性が十分にあると思いますし、それは両国にとってメリットがある話です。」

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