日本はもっと活力のない国になる、子どもに割くお金はない

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3日、自民党は参議院選挙の公約を明らかにした。それによれば「2019年10月に消費税率を10パーセントに引き上げ、その間、赤字国債に頼ることなく安定財源を確保して可能な限り社会保障の充実を行う」としている。赤字国債に頼らず、どのように社会保障政策の財源を捻出するかについては、明記されていない。

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消費税の引き上げ延期をめぐって安倍晋三首相は、2014年11月の記者会見で「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と述べていた。

政府の経済政策が予定通り進んでいるのならば、いったん断言した方針を、参議院選挙直前のタイミングで曲げる必要はないはずである。3日のテレビ番組収録に参加した古賀誠・元自民党幹事長は「これだけ政局が安定し、内閣支持率の高い首相の下で(消費税増税が)できないなら、いつやるんだという心配は正直言ってある」とコメントした。小泉進次郎農林部会長も、「増税は延期するが、社会保障は予定通り充実させるというおいしい話だけでは駄目だ」と釘をさしている。

市民からは、「絶対的に必要でないならそもそも増税すべきではない」「増税を延期した理由は選挙に勝つためではないか」「消費税が上がると思っていた国民が多い中での再延期は、政局を複雑にし混乱させることになるのでは」などといった様々な声が出されている。

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慶應大学ビジネス・スクールの小幡績(おばた・せき)准教授は、消費税増税の再延期は「じわじわと日本の活力を阻害するだろう」と見ている。

小幡氏「長期的にはマイナスの影響をもたらすでしょう。日本は短期の景気対策ばかりをしてきたため、長期投資へまわるお金が足りなくなっています。短期の景気対策の結果、1000兆円も借金を抱えているということは、民間の資金を1000兆円も使ってしまっているということです。そのため民間は実物投資や海外への金融投資などの、利益を出す投資ができなくなっています。結果として、日本経済全体の所得がダウンし、潜在成長力が落ちてきています。しかし短期的には、日本の赤字が膨らみすぎて危機に陥るということはないでしょう。増税再延期はもっと長期的にじわじわと、日本の活力を阻害する方向に影響すると思います。」

自民党が行おうとしている社会保障政策の充実とは、誰を対象にしたものなのか。日本の待機児童問題が一向に解消されないのも、ここに一因がある。

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小幡氏「私自身は、日本政府の支出の大きな部分を占めている社会保障関連の支出を減らしていくことは必要だと思います。高齢者への年金額を減らす、という策しかないと思われますが、いざ年金が減るとなると有権者の怒りを買いますので、これは政府にはできません。

となると、今のところまだ予算がついていない、これから必要となってくる分野に、お金をつけることができなくなります。託児所や幼児施設への補助、小中学生に対する教育投資といった分野への政府の補助は足りないままです。この分野は非常に民営化・自由化が遅れているということもあり、例えば託児所などの建物等にお金がついたところで、供給は急には増えません。働き手が不足しているという問題は依然として残るためです。ですから政府は、お金を出さずにすませようとしているところもあると思います。」

増税が延期され、目先の家計のことだけを考えると少し安心してしまうが、小幡氏は長期資金の不足は結果的に、誰にとっても良くない結果を生み出してしまうと指摘している。目前に迫った参院選は、有権者がどれ程長期的な視点をもって臨むかが問われる選挙となりそうだ。

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