Facebookにおける 日本的なタブー 「からし」のような記事も必要だ

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アメリカ科学雑誌「サイエンス」によれば、Facebook社の研究者らによって「情報フィルター」の存在が明らかになったという。このフィルターの機能は強力で、自分と意見を異にする人たちとの交流・建設的な対話の機会を奪い、ひいては真実を感じる感性を歪めてしまう。研究は特にアクティブ、なおかつ自分自身の政治的立場をオープンにしている7万人のアメリカ人ユーザーを対象に行われた。自己の世界観(リベラル・ニュートラル・コンサバ)を自己申告の数値で表してもらい、それらのユーザーがFacebook上でどのような記事をシェア・閲覧したかを分析したのである。

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調査には、調査期間の間ユーザー間で20回以上シェアされた政治のニュースが用いられた。対象となるURLは半年で22万6千にものぼる。調査者らは記事をシェアしたユーザーの政治的見地から判断し、記事の「イデオロギー適合度指標」を算出した。Facebookの研究者らは、この指標はシェアされた記事そのもののイデオロギーを示しているのではなく、その記事をシェアしたユーザーのイデオロギーを表している、と主張している。予想されたことではあるが、リベラル派がシェアした記事はリベラル派の人々の間でだけ大変人気になった。コンサバ派についても同様だ。一方、ニュートラル派の人々は、滅多に政治の記事をシェアしなかった。ちなみに、スポーツや旅行など、政治に関係のない記事で人気になったものは、政治的世界観の垣根を超えて、多数シェアされた。

よく知られていることだが、Googleのような検索サイトでも状況は同様である。サイト側はユーザーの希望を「予想する」と同時にユーザーからリクエストされた情報を分析し、データを提供する。予想は、過去のユーザーの行動をもとに行われるので、ユーザーは自分が好む意見ばかり目にすることになるのだ。そして結果としてこのように思い始める。自分の意見というのは唯一絶対信用に足るもので、この問題に対する他の観点というのは存在しようがないと。社会学者たちはこの現象が、民主主義に対する潜在的な脅威であると見て取っている。

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ロシアの専門家は、アメリカのこのような調査結果は、ロシアには当てはまらないとしている。古典的なアメリカの、リベラル対コンサバという世界観の二項対立は、現在のロシアの世論形成と共通点がない。
日本ではアメリカに比べ、政治記事をシェアする文化は浸透していない。イデオロギー色の強い記事をシェアして友人のニュースフィードを邪魔するよりも、今日食べた美味しいものの写真を載せたり、友人の近況にコメントするといった古典的な使い方が好まれている。これは政治家自身も同じことだ。情報選別フィルターが形成される以前に、政治について大っぴらにFacebook上で語ることへの大いなる抵抗感があるのである。Facebookを有効活用している若手の政治家を代表し、富士見市議会議員の伊勢田幸正さんに意見を伺った。

Q: アメリカの調査結果は日本においてあてはまるでしょうか。日本の政治家によるFacebookの活用の傾向をどのように分析されますか。

A: 日本では、政治や宗教を堂々とSNS上で語ることを敬遠しますね。多くの保守系の地方議員のFacebookには「角が立たない」ような書き込みが大多数で、集団的自衛権など争点が分かれるテーマには言及しないのが普通です。もし堂々とそのようなテーマを発信する人がいたら、それは選挙に大変強い人か、あるいは次回の選挙を見送る人です。
一方、私自身は革新系の議員の方とも交流がありますから比較できるのですが、革新系の議員はどちらかといえば主義主張を隠しません。政権批判のツールとしてSNSを利用しています。両方にいえるのは、政治ネタばかりを発信するのでなく、昼食や余暇などのプライベート情報も公開するなど、バランスを皆さん心がけています。政治だけだと「飽きられてしまう」というのは意識の根底にあると思います。

Q: ご自身は、どのようなスタンスでFacebookを利用されていますか。

A: 政治的な主張をするときもありつつ、地元行事や食事などの話題も織り交ぜています。一番フォロワーの反応がいいのは生まれたばかりの赤ちゃんの記事です。(編集部注:伊勢田議員には先日お子さんが誕生しました。)これが日本の国民性かな、と感じますね。しかしソフトな話題ばかりですと面白くなくなってしまうので、「からし」のような記事も必要だと認識しています。

伊勢田さん自身は政治家として、自分と異なる立場の人の意見も積極的に収集しているが、「フィルターの壁」に意識的に気づいて行動している日本人は少数だろう。日本の一般ユーザーにとって、自分のニュースフィードが政治のニュースで埋め尽くされることは抵抗がある。政治家のフォロワーが期待しているのは、政策論議でなく、政治家のプライベートをかいま見たり、彼らとコミュニケーションをとることだ。

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ラジオスプートニク英語版の取材に対し、アメリカ諜報機関出身のリチャード・スコット氏は、アラブの春の余波でエジプト革命が起こった当時はまだソーシャル・ネットワーク空間が自由で、情報選別フィルターの機能は脆弱だったため、革命を起こすことができた。現在は特定のイデオロギーを浸透させることを狙い、かつマスコミに投資することのできる限られた人々によって、テレビ同様ネット空間も「利用されている」だけだと述べている。いっぽう日本では今までもネットで革命は起こらなかったし、これからも起こらないだろう。インターネットを使った選挙運動がまだまだ厳しく制限され、日本人の政治的話題に対するデリケートな感性が残る限り。

とくやま・あすか

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