アフガンの「イスラム国」、地域安全保障への現実的な脅威

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アフガニスタン情勢は日をおう毎ではなく、文字通り毎時間ごとに悪化の一途をたどっている。「イスラム国(IS)」はアフガンでの地位を確立し、イスラム帝国の一州として新領土「ホラサン州」の樹立を宣言した。ISの計画では「ホラサン州」にはアフガンとパキスタンの全土および中央アジアの一部、イラン東部が入ることになる。ISを支持する数千人がアフガンの20を越える州で戦闘を繰り広げている。

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アフガニスタンおよびその周辺の情勢はこの先どう展開していくのか? 同地域および世界の安全保障にいかなる脅威が待ち受けているのだろうか?

イラク、シリアで活動を開始した急進主義的グループの最初の一団がアフガン領内に姿を現したのは2014年初秋だった。それからわずか半年の間にISはアフガンで著しく影響力を拡大した。全世界的拡大という大命題のほかにIS指導部はアフガンであまりにプログマティックかつ重商主義的目的を推し進めている。イラクでの有志連合の爆撃および石油ターミナルの相次ぐ破壊の後、イラクやシリアで活動するISの収入源は縮小の方向へと向かった。このためIS指導部はアフガンでの重要資源および麻薬栽培のビジネスの一部を強奪しようと図っている。

これに眉をしかめたのはアフガンだけではない。それに反対するタリバンも憤慨した。政治イデオロギー的にはタリバンとISは双子の兄弟であるにもかかわらず、アフガンでは2つはライバルで激しく対立する敵になってしまった。その理由はタリバンが偶然にもISのなかにアフガン支配を巡る闘いで大きなライバルとなる要素を見つけてしまったことにある。本質的にはタリバンは、アフガンにおけるパシュトゥーン人の国家性の維持を求めて闘うパシュトゥーン人(アフガン人)の民族運動でありながら、ISのアラブ・プロジェクトによって作られた大きな国の一「エミラート(州)」になることをもう欲してはいない。タリバンはアフガンの政権を狙った戦いで1996年にそれを手中に収め、2001年まで維持してきたが、そうした戦いの数十年の間に、その目的遂行のためにあまりに多くの力と資金を費やしてしまった。このため、タリバンとISが互いをジハード(聖戦)の敵と呼ばわり、武装戦に突入したことも驚くには値しない。

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だがアフガンにおける反政府運動はそんなに簡単なものではない。ISはタリバンの抵抗にあい、相手を分裂させようと躍起になっている。ISはこれを巧みに行い、成功例をあげている。ISはタリバンのなかで失望したメンバーを積極的に集めており、タリバンの中でも若者の層は、政権を失ってからの14年におよぶ戦争が何の成果ももたらさなかったのに対し、ISは短期間でイラク、シリアの大部分を掌握し、大きな可能性を有すに至ったとして、その大成功を理由にISの呼びかけに反応を示している。このほか、アフガンにとっては金融のファクターが一番重要となる。タリバンの野戦司令官がISに寝返った場合、毎月支払われる額は500-600ドル。一兵卒にはおよそ200ドル。これはアフガンの経済困難と失業を考えれば、彼らにとっては多額だ。しかもこの給与額が関心を呼んだのはタリバン兵だけではなかった。有志連合の撤退で5万人を下らない大量の解雇者が出た。彼らは多国籍軍に勤務し、職を失ったのだ。失職したアフガン人が生活の糧を探した挙句見つけたのがISだったというわけだ。

ISという世界でも最もラディカルなイスラム急進主義者の持つ金とイメージがタリバン指導部との関係を絶ち、IS、またアフガン北部と中央アジア諸国で反政府活動に参加している「ウズベキスタン・イスラム運動」へと移る理由となったことは十分ありえる。

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国連の調べによると、今日、アフガンにおけるISのメンバー数は数百人の段階から6000人へと増大した。ISの武装戦闘員らはアフガンの大半の州で活動している。プーチン大統領もカルザイ元アフガン大統領との先に行われた会談で、「いわゆる『イスラム国』がアフガンでより活発に活動を展開し、ますます自信を深めていることは忌々しいことだ。私の知る限りでは34州のうち25の州で『イスラム国』のアピアレンスが確認されている」と語っている。カルザイ元アフガン大統領はこれに対し、ISはアフガンとは全く関係なく、「この地域全体に影響力を拡大する目的で外的な力で作られたもの」で、アフガンはISにとってはトランポリンの役割を果たしていると語っている。

2人のリーダーの行った状況の正当な評価はアフガンにおけるISの危険性を如実に表している。アフガンはISにとって金融、人材、プロパガンダのリソースを汲む源となりつつあり、中央アジア、カフカス、イラン、ロシアを含んだ地域全体を相手にしたテロ活動のベースとなりつつある。

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現在、アフガン政府軍と警察の要員はおよそ33万人。悲しいことだか、これだけの数ではアフガン全土の危険には、対応できないのは間違いない。軍備も財政も道徳的精神的な資質も彼らには足りない。こうしたほかにアフガンでは民族義勇軍も存在しており、3万人近くの人員が従軍しているが、これを完全に養うにも国家資金は足りず、給与をもらえない人間はそれが支払われる方へと移ってしまう。

このため、国際的な支援やイスラム主義者を絶対悪だとみなす全員が積極的な合目的的な活動を行わない限り、これには勝てないことはますます明白となりつつある。ロシアのラヴロフ外相は6月30日ウィーンでケリー米国務長官と会談した後に声明を表し、「米外相との会談では状況がより積極的な行動を要するものであることについて、共通の理解が得られた。『イスラム国』に反対する万人の同意に依拠する行動が必要だ」と語っている。

これは完全にアフガン情勢に関係したものだ。疑いなく絶対に望ましいのは、国連安保理が、現代文明を脅威に陥れる人間嫌いのイデオロギーと規範を浸透させる武器と機関銃で戦うイスラム主義者の武装戦闘員を相手に、直接的な戦闘行為を行う権利を有する広範な国際軍事政治同盟の創設を批准することだろう。

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