「緑の回廊(通関簡素化)」は露日に何をもたらすか?

© AP Photo / Eugene Hoshiko岸田文雄
岸田文雄 - Sputnik 日本
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「ロシアは日本との経済協力にあるネガティブな傾向を修正することに関心を向けている。」ラヴロフ外相は岸田外相との会談を終えるにあたって、こうした声明を表した。否定的傾向は今年2015年のわずか6ヶ月間だけで両国の貿易取引高が29%も落ち込んだ事実に集約されている。ロシアから日本への輸出は23%も落ち、日本からの輸入も39%も減った。これはひどすぎる。

とはいえ、ポジティブなことも実際にはある。「サハリン1」、「サハリン2」のように日本企業が株式の30%、22.5%を所有する大規模なエネルギープロジェクトのほかにも、ヤマル半島やギダン半島ではロシアの「ノヴァテク」社と日本の一連の企業は液化天然ガスの生産プロジェクトを積極的に実現化しているし、ロシア領内で組み立てが行われている日本車も車種のラインナップは拡大している。それにロシアの各地で行われている道路、施設建設、生産の刷新にだって日本企業は参加しているからだ。こうした好例は少なくないが、それでも全体からすれば、協力のレベルはロシア側にも日本側にも満足のいくものではない。

経済の相互関係の拡大、というのが9月23日、モスクワを訪問中の岸田外相が参加する形で行われた第11回露日政府間委員会の会議の議題だった。公式的発表では農業分野(畜産品の日本向け輸出を含む)での協力から、両国の金融制度間の相互関係まで広範な問題が討議されている。特に日本側は、日本の銀行がロシア市場への進出願いを出していることを明らかにしている。これについては9月初旬ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの段階ですでに示されていた。極東でのロシアの、また露日のプロジェクトに対し、日本の銀行のなかで融資の構えを示しているのは一行どころではないといわれている。

政府間委員会の会議のあげた成果のなかで最も将来性が高いとされているのが、露日双方ともが相互の商品取引のための「緑の回廊(通関の簡素化)」の組織問題に共に取り組む姿勢を示したことだ。この構想はロシア連邦通関庁がかつて提案したものだが、現在これに日本側から強い関心が示されている。というのもこれは、貨物輸送に関して露日双方間の通関手続きの簡素化を図るというテーマだからだ。

北海道銀行の堰八(せきはち)義博会長は、ロジスティックスと通関手続きはまさに露日の経済関係にとっての頭痛の種だとして、次のように語っている。

「北海道銀行は2009年にサハリン州のユジノサハリンスクに事務所を開設し、昨年3月に当地、ウラジオストクに事務所を開設しました。日本の中でも特に北海道は極東ロシアと気候風土がとてもよく似ています。両地域の経済交流、人的交流を活性化するために日々、情報収集や企業へのサポート活動を展開しております。またアムール州で一昨年、私ども北海道の農業技術をもって、約400ヘクタールで農地を借りまして、実際の試験栽培を大豆、小麦、一部コーンの栽培をしました。こういったことでいろんな実験もやっております。またサハリン州ではビニールハウス建設を北海道の企業とやりまして、今2棟無償でデモンストレーション用に作成しまして、今後サハリン、極東地域で展開していきたいと思っています。

こうした活動の中で多くのお客様から耳にするのは、価格、時間の問題です。つまり言い換えれば物流、通関の問題です。まず、日本と極東ロシア間との物流は十分整備されているとは言いがたく、非常に使い勝手が悪い上にコストも高いために取り扱い荷物が増えない原因と考えられております。物流ルートは貿易の根幹となるものです。今、私どもの銀行は特に日本海側の地域の貨物をひとつのルートに集約して、できれば韓国と中国の荷物と合わせて極東ロシアに持ち込むことができないか、いくつかの地方銀行とプロジェクトを立ち上げまして、今、研究をしているところでございます。こういったものがもし出来上がると、物流ルートは大幅に改善されるものと考えております。また先ほど申し上げました通関手続きが非常に煩雑であるという声を多く聴きます。現実問題として日本から極東ロシアへの荷物は数日で到着しているのに、通関手続きがそれ以上の日数を要するケースもあります。苫小牧からウラジオストクに農作物を送る輸送実験を行いました。船便の荷物はだいたい3日でつきますが、陸揚げするまでに最大2週間ほどかかっています。ぎりぎり物が傷まないでなんとか揚げられたというような状況でございました。通関の問題を含めまして、民間の力ではどうしようもないものがありますので、すべての品目について物流と通関手続きをなんとかワンストップでできる窓口を造っていただければと思っています。 」

ロシアは極東における日本との実際的な協力の発展に非常に関心を持っている。第1に極東地域の発展は21世紀をかけてロシアが行わねばならない最優先課題だからであり、第2に今日最もダイナミックに発展する市場である東アジアへ自国の製品を携えて進出したいという需要が存在するからだ。また第3に中国の経済情勢が危機感を呼んでおり、これに関連してロシアの輸出ポテンシャルはかなりタイトに制限されているという状況がある。

付け加えると日本の側には、露中関係が露日関係によって本格的に多極化されるようもっていきたいという関心がある。両国の経済協力のベースを著しく拡大することは政治問題の解決のためにも欠かせない。

 

 

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