米海軍の船、ロシア海岸線への接近をなぜ危険視するのか

© AP Photo / Noel Celis, Pool米海軍の船、ロシア海岸線への接近をなぜ危険視するのか
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米国艦隊は国際法の規範をしばしば軽視し、主権国家の領海に許可なく侵犯を行う。だが米海軍もかつて厳しい反撃にあったことがあった。

1988年2月、米海軍のヨークタウン級航空母艦、駆逐艦ケロンの2隻が黒海水域へと入り、ソ連の沿岸部へと向かった。ソ連の海上の境界線をあつかましく侵犯したことについて米国側はこの後、自国流の「無害通航の規則」の解釈で説明しようと試みた。ところが米国船がソ連の領海を6マイル(10キロ)侵犯した本当の理由は別だった。

米海軍の船がレーダーや他の通信手段のスイッチをONにしたまま航行していたということは、諜報課題を遂行していたことを示す。ソ連の領海の侵犯を行う前、米空母と駆逐艦はソ連の国境線付近でおかしな行動をとっていた。ソ連軍事海上諜報活動の専門家らは、米国人はソ連の海底ケーブルに情報摂取のための特殊危機を設置していたとの考えを示している。

米国の船はソ連の領海に入ると、ソ連国境警備隊の「あなた方はソ連の領海を侵犯した」という警告を無視した。違反船を取り締まるため、警備船「ベズザヴェートヌィ」と「SKR6」が差し向けられた。ソ連の警備隊らは再び米国の船に「ソ連の領海は侵犯してはならない。我々は最後はあなた方の船に船体をぶつけ、体当たりを行えという命令を受け取っている」と呼びかけた。だが、この警告は領海侵犯者には何の効き目ももたらさなかった。そこでソ連の船は米国船に接近しはじめたとして、当時警備船「ベズザヴェートヌィ」の司令官を務めていたウラジーミル・ボグダシン氏は次のように語っている。

「『ヨークタウン』の排水量は『ベズザヴェートヌィ』の3倍で、大きさも2倍だ。衝撃から私の船の船首は大きく左に、船尾は右に曲がった。そこで我々は船尾を近づける始めた。これは我々にとっても、むこうにとっても非常に危険な行為だった。我々は4管の魚雷発射管を2基搭載しており、それぞれが甲板で発射態勢をとっていた。魚雷は船体の衝撃から発火する恐れもあった。米国側は船尾に8基のミサイル装置『ハーブーン』を搭載していた。」

衝撃の後、「ベズザヴェートヌィ」と「ヨークタウン」は全く逆の方向に進んでいったが、両方の司令官とも元の進路に船を戻すよう命じた。ソ連の「ベズザヴェートヌィ」は再び米空母に接近する。そして更に強力な体当たりで米空母の方が衝撃を受け、脇にどけられた。この結果、衝撃はヘリポートのあたりに伝わり、「ベズザヴェートヌィ」の高い船首が米空母「ヨークタウン」のヘリポートへと突っ込み、手当たりしだいに破壊し始めた。この2度目の体当たりで「ヨークタウン」では「ハーブーン」の4基の発射装置が破壊され、火災が発生した。

同時に2隻目のソ連の警備船は米駆逐艦「ケロン」の動きを止めようとし始める。ボグダシン氏は「SKRはケロンの4分の1の大きさしかないが、船首を甲板に突き刺し、その衝撃で後ろに飛ばされた』と語っている。

この間、、「ベズザヴェートヌィ」は「ヨークタウン」から離れ、領海を離れない場合、体当たりを繰り返すと警告した。「ヨークタウン」では甲板からヘリコプターの発射準備を始めたが、ソ連側は「ヘリコプターが甲板を離れた場合、ソ連の領空を侵犯したとして撃墜する」と警告を発した。事件現場には航空隊も送られた。米国船の上空に2基の軍事ヘリ「ミー24」が現われると、米国船は2隻ともコースを変え、中立水域へと出て行った。

黒海でのこうした軍事紛争が続いた後、米海軍にとってはこの海域は穏やかな海域ではなくなった。「ヨークタウン」の司令官は辞任させられ、米上院は半年間、米第6艦隊が地中海、黒海で行うあらゆる諜報活動に対する拠出を凍結した。また米海軍の船はソ連の海岸線に12マイル以上接近することはなくなった。

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