ガガーリンはソ連とロシアの平和主義の象徴だった

© Sputnik / Yuriy Abramochkin / メディアバンクへ移行ガガーリン宇宙飛行士、ソ連女優オリガ・レペシンスカヤ氏(中央)と日本人女優岡田嘉子さん(その右隣)と共に
ガガーリン宇宙飛行士、ソ連女優オリガ・レペシンスカヤ氏(中央)と日本人女優岡田嘉子さん(その右隣)と共に - Sputnik 日本
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1962年5月、世界初の有人宇宙飛行士ユーリー・ガガーリンが初めて日本を訪問。その直後、ソ連と日本の貿易取引量はなんと15倍も拡大した。この事実は3月9日、ガガーリンの生誕日にちなんでロシア文化放送TVで放映されたドキュメンタリー映画で明らかにされた。

この事実を知った私、アンドレイ・イヴァノフ(モスクワ国際関係大学、国際調査研究所、上級研究員)は先日表した解説「狂った世界は、核戦争の準備か?」にコメントを書き込んでくださったある読者に対し、回答を書こうと思う。 

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米国とNATOがロシアとの核戦争を準備しているという私の解説に書き込まれたコメントは、簡単に言えばロシアが今、かつてのソ連のように全世界に対立しているというものだった。おそらくこうした断言は全く正しくない。第2次世界大戦時、例えばソ連は全世界に対立したわけではない。対立した相手は日独だった。そのソ連と一緒になって米英仏中が対立したのである。戦後、世界が共産主義と資本主義という対立する陣営に真っ二つに分かれてしまったとき、ソ連は西側と平和的な協力を構築しようとした。そして日本も、2発もの原爆を自国に投下した米国の忠実な軍事政治連合国となってしまってはいたが、ソ連と文化交流、経済交流を結び、拡大するきっかけを探していた。そのひとつとなったのが、あの1962年5月に行われたガガーリン飛行士の訪日だった。ガガーリンはまず、宇宙船に乗って地球の周りを回ったあと、今度は平和と友好の使者として全世界を回った。

ガガーリンは1968年、訓練飛行中の事故で死亡。1991年、ソ連は崩壊。そして、世界初の有人飛行を果たしたガガーリン、ソ連で生まれた平和共存の理想の両方を未だに敬意をこめて記憶している今のロシアは絶対に世界に対立しようとするはずがない。

残念ながら国際政治の世界で敵のイメージ、または米国人の好んで使う「バット・ガイ」が利用されることは稀ではない。長きに渡り「バッド・ガイ」役だったのはソ連だった。ソ連の指導者らはその初期には世界に共産主義革命を起こすことを夢見、ブルジョアジーを心から震撼させていた。とはいえ、ファシズムの脅威のおかげでブルジョワジーは共産主義者と同盟を組もうと走りよってきたのだが。  

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今、状況は似た様相を呈している。ロシアはもはや世界革命を夢見てはいない。世界中で革命を起こしているのは、または支援しているのは、今や米国人のほうで、ロシアはそうした革命が自分たちのところまでやってこないように必死だ。そしてこれが米国とその同盟諸国である欧州を非常に苛立たせている。またロシアが他人の助言や命令に従おうとしないことが彼らには気に入らない。なぜならロシアは1990年代に、西側の助言や命令に従ったがために、経済は崩壊、科学や文化は退廃、国防能力は落下という苦い経験をさんざん味わい、それに従えばどういう結果になるかをまざまざと知ってしまったからだ。それともごらんいただきたい。ウクライナは革命の結果、どうなっただろうか。ただしご自分の目で見ていただきたい。決して西側のジャーナリズムを通してではなく。西側のジャーナリズムはウクライナで名国粋主義が高まったことも、汚職が進み、言論の自由が奪われ、一般市民が殺されていることになど目を向けようともしない。

ロシアはウクライナが、ユーゴスラビアが、そしてイラクが味わったような運命を背負いたくない。このロシアの抵抗をさしてオバマ米大統領は、ロシアは「ダーイシュ(IS,イスラム国)と同様、平和に脅威をもたらしていると非難したのだ。ロシアと「ダーイシュ」の間の共通点など、意識の状態でもおかしくならないと見出せるものではない。だがこんな意識状態で国際政治を行なうなど恐ろしい話だ。

ありがたいことにテロの脅威が実際にせまったことで米指導部も状況を冷静に見つめざるをえなくなり、シリアにおいてロシアとの協力に踏み出した。だが、無謀極まりないトルコのエルドアン大統領をテロとの戦いに向かわせることはファシズムと戦うよりきついに違いない。だがこの戦いで勝ち、米国が1945年に、そして2015年にもそうしたように、ロシアを自国の最大の敵呼ばわりさせないことが重要なのだ。ロシア自身はこうした役割を求めておらず、この先も米国と協力を行う構えを示している。しかも「ダーイシュ」が壊滅されたところでロシア、米国、その他の人類にとっての本当の脅威というのは残念ながら残存しつづけるのだ。 

写真、1枚目はガガーリン飛行士が、クリミアで保養中の日本人女優、故岡田嘉子さんの求めに応じてサイン、2枚目はユーリー・ガガーリン宇宙飛行士、ソ連女優オリガ・レペシンスカヤ氏(中央)と日本人女優岡田嘉子さん(その右隣)と共に。

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