健康寿命の伸長を目指して:日露ヘルスケア協力の先頭に立つ北大病院

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今月中旬、北海道大学病院の寳金清博(ほうきん・きよひろ)病院長ら代表団がサハリン・ユジノサハリンスクを訪問し、サハリン州政府のナタリア・スタルチェワ副首相らと面会した。これにより日露間の医療協力、特に北海道とサハリンの結びつきが深まるだろうと、期待が集まっている。寳金氏らは、一年半前にも極東ロシアの視察をし、現地の大学病院と親睦を深めてきた。

北海道とサハリンの医療協力で思い出されるのは、26年前にサハリンで当時3歳の男の子コンスタンチン君が大火傷を負い、札幌で治療を受け、奇跡的に一命をとりとめたことだ。1990年東西冷戦の末期に、制度的・時間的制約など様々な困難を乗り越えてソ連人の小さな男の子の命を日本で救えたことは大きなニュースとなった。その後、男の子の名前にちなんでコースチャ基金(公益信託北海道・ロシア極東医療交流基金)が創設された。これはコンスタンチン君への義援金と、北海道の出資金を合わせて創設されたものである。この基金により、サハリンの若い医師は札幌で研修を受けることができていた。

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今回のサハリン訪問では、従来の研修という形のみにとどまらず、互いの医療情報を交換するためのシンポジウムを10月28日に札幌で開催することについて合意がなされた。サハリンからは10名前後の医師、日本側からは北海道大と札幌医科大から報告者を出し、がんを中心とした約10のテーマの発表を行う。この種のシンポジウムは次年度以降も、定期的に継続される予定だ。

また、サハリン側からは、映像を通した恒常的なコミュニケーションが行えるようなシステムをサハリンと北海道の間で作れないか、という提案が出された。

寳金氏「当初、私たちは予想していなかったのですが、今回サハリンの側から、ITを活用したテレビ会議を継続的に行えないか、という強い要望がありました。既に北海道大学病院はアジア諸国・米国との間ではITを活用しカンファレンス(症例検討会)を行っているので、そのシステムをそのまま運用すれば、ロシアとも同じことができるだろうと思います。行政や大学の情報通信の専門家とも相談し、ITを使った医療情報の交換を行っていくことを前向きに検討していきます。」

寳金氏によれば、ロシア人の死因は20年前の日本の状況に似ているという。ロシアの統計によると、2014年に亡くなったロシア人のうちおよそ55パーセントが、血管がつまる・破裂するといった類の病で亡くなっており、26パーセントが悪性腫瘍によるものだ。これをふまえれば、ロシアへの医療協力は、脳卒中や心臓病に対処するための救急医療もまだまだ視野に入れておかなければならない。また、将来的にロシア人の平均寿命がもっと伸びれば、現在日本で大きな問題となっている認知症への対処の経験が、ロシアに役に立つと見られている。

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寳金氏は、北海道大学病院が日露関係に果たす役割について、次のように話してくれた。

寳金氏「近年『国際医療部』を院内に設置しました。そこを介して様々なルートから問い合わせがあり、既に1名の患者さんが、新しい放射線治療『陽子線治療』を受けるためサハリンから当院に来られました。また、サハリンでは治療が難しい患者さんの、顎の怪我の治療も行いました。医療制度の違いや費用、言語の問題はありますが、ロシアの患者さんのご要望がある限り、北大病院としても積極的に治療をしていきたいと思います。

今年は安倍首相のロシア訪問もありましたし、まだ実現していませんが、プーチン大統領も日本へ来られると聞いています。安倍首相がソチの日露首脳会談で提案した『8つの経済協力プラン』の中でも、ヘルスケア・健康医療分野における協力が大きなテーマになっています。微力ではありますが北海道大学病院としても、極東ロシアを中心に中身のあるプランを立てていき、積極的に日露関係に貢献したいと思っています。」

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