現在、世界の存在する人体冷凍保存サービス会社は3社。2社が米国に、残る1社はロシアにあり、それぞれ自前の保存庫を持っている。ロシアの企業「クリオスル」はユーラシア圏内では初の、そして唯一、合法的かつ独自の科学的基盤に乗っ取ってこうしたサービスを行なっている。蘇らせることのできるチャンスについて、「クリオルス」社のヴァレーリヤ・プライド代表取締役は次のように語っている。
「きっかけは父の遭難でした。雪の中で凍死したのです。父の命を救うことはできませんでしたが、私は物理学を専門とする者としてその当時あった全ての可能性に積極的に取り組み始めました。人体冷凍保存技術は当時すでにありましたが、当時のものは研究者が医療目的で保存のために凍らせるというもので、解凍させた皮膚、角膜、骨髄、精子が使われていました。それを見た私は、成人の脳組織の小さな部分が冷凍し、解凍された後にその神経細胞の電気活動が活発化していることに気づいたのです。こうしてアイデアが生まれ、関心を持ち、共同組織者も見つかりました。
人体冷凍保存技術とは端的にいえば遺体の循環器系に特殊な化学物質(抗凍結剤)を注入することにつきる。この処置を行なった後、遺体は液体窒素の温度であるマイナス196度まで徐々に温度を下げ、それからデュワーに移す。これは大型の魔法瓶のようなカプセルで液体窒素が使われている。こうして保存した場合、遺体の状態は数百年に渡ってほぼ変わらることはない。
2014年10月28日、「クリオルス」に日本から初の要請が入った。苗字は「ニシカワ」さん。ニシカワさんは87歳で横浜の病院で脳死宣告を受けた。母親を熱愛していた二人の息子は将来、母が蘇ることを切望し、遺体の冷凍保存を決意する。遺体の冷凍保存と空輸の段取りをつけたのは鈴木晴之さんだった。その鈴木さんが数日前、モスクワを訪れた。鈴木さんは今度は「日本トランスライフ協会」のためにロシアの人体冷凍保存技術を視察する目的で現地入りしている。日本代表団の鈴木晴之さん、鏑木孝昭さん、中島新さんはスプートニクの独占インタビューに次のように語った。
「クリオスル」社は2012年からロシア初の神経冷凍保存を開始している。この分野では米国、イタリア、スイスで人体組織の培養、再生を行なう専門家らとしのぎを削っている。そのほか同社は中国、スイスでの人体冷凍保存庫の建設に協力を行っている。また移植、救急医学、ナノテクノロジーといった分野の専門家らとの協力により、最初の人体冷凍保存のクライアントらが永遠の命を得るまでにはいかなくても、科学の発達に多少でも貢献できるかもしれないと期待されている。