コンサルタント企業「アルパリ」のアナリスト、アンナ・ボドロヴァ氏は合意締結は多くは日本の出方にかかっているとして、次のように語っている。
6月27日月曜、安倍首相は日銀に対し必要となれば英国で事業を行なう日本企業に対して財政資金を拠出するよう呼びかけた。こうした企業の数は1000社にのぼる。これらの多くにとって英国は単に主たるマーケットの1つにとどまらず、EUへの「窓」の役目を果たしている。
危険にさらされてしまったのは英国で出された許可書を有し、EU全体にサービスを提供する権利を持っている巨大金融コーポレーションだ。たとえば野村ホールディングスの支社もそうだ。ロンドンで働く野村の社員は2500名いる。状況がうまい方向に発展しなかった場合、オフィスをパリかフランクフルトに移さざるを得ない事態もありうる。ロンドンに本社を置くキャノンも戦々恐々としている。このオフィスは欧州、アフリカ、中東での年間1兆円の売り上げを管理している。日立だって憂慮する理由は十分にある。日立は主たるライバル企業である独のシーメンスに対抗しようと、欧州市場に生産拠点を近づけるために鉄道担当部門のヒタチ・レールウェイ・システムズをたった2年前、日本から英国へ移したばかりだ。
ボドロヴァ氏は英国がEUから離脱した場合、タリフは上がる危険性があるとして、さらに次のように語っている。
「日本の輸出ではかなりの部分が欧州市場への供給でなりたっている。だから日本の産業界には安定した長期的パートナーと契約の堅実性を確保する事が重要なのだ。こうしたことの重要性は日本のパートナーらにとっても変わらない。特に最小限度の政治、経済リスクが影響してくる支払能力に話が及ぶとなればなおさらだ。ところが日本経済は今、最小限度のリスクでも軽視できる状態にはない。ここ数年、日本は経済を刺激するため巨額の資金を投入してきている。ということはつまり国家債務も常に膨れ上がっているということだ。現段階では日本政府はそれをどうするつもりなのかについては口をつぐんでいるがメーターは回り続けている。日本政府がインフレ、消費の活性化、GDPに関して掲げた目的を達成したとき、この国家債務に関する恐ろしい問題が立ち上がってくる。これにさらに長期的な貿易経済パートナーが両足を引きずり始めたならば、情勢は完全に容易いものではなくなってしまう。」