慰安婦問題、今度こそ終止符?新財団は使命を果たせるか

© AFP 2023 / JUNG YEON-JE 日本軍の慰安婦として強制的に働かされた韓国の女性たち
日本軍の慰安婦として強制的に働かされた韓国の女性たち - Sputnik 日本
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先月28日、旧日本軍の従軍慰安婦に関わる問題解決のため、韓国で「和解・癒し財団」が発足した。この財団は、昨年12月の「最終的かつ不可逆的な解決」をするという日韓合意に基づき設立されたもので、日本政府は8月中にも10億円を拠出する見込みだ。

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慰安婦問題の日本の態度は非論理的
過去にも、元慰安婦を支援するための組織が存在した。1995年に設立され、2007年に解散したアジア女性基金だ。アジア女性基金は、当初韓国内で肯定的に受けとめられたが、後に否定的な評価を受け、慰安婦問題のしこりは残り続けることとなった。韓国政治に詳しい奥薗秀樹氏(静岡県立大学・国際関係学研究科准教授)は、アジア女性基金が失敗に終わった理由について次のように話している。

奥薗氏「1965年に日韓国交正常化した際、日韓請求権協定が結ばれました。その中には両国間および両国民間の請求権に関する問題が、『完全かつ最終的に解決』されたことを確認する、と明記してあります。これが日本の法的な立場です。しかし韓国の主張は、請求権協定の中に慰安婦問題は含まれておらず、日本政府に法的責任が残っているというものです。

問題は法的に解決済みであることを前提に、道義的観点から何ができるのか、ということで考え出されたのがアジア女性基金です。アジア女性基金の活動にあたり、医療や福祉にかかる費用を日本の予算で支援することは、道義的責任の見地から差し支えありませんでした。しかし問題は現金支給です。元慰安婦の方に償い金という形で一人あたり200万円を渡すことになりましたが、償い金を国の予算から出すと、『法的に解決済み』という日本の立場にそぐわないので、償い金は募金でまかなうことになりました。結果、韓国は『日本は国家として責任を認めていない』と反発し、アジア女性基金は失敗に終わりました。」

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日韓の軍事情報協力をまたも妨げる「慰安婦」問題
和解・癒し財団では、故人も含めた元慰安婦に現金支給を予定しているが、前回の反省をふまえた形になっている。

奥薗氏「12月の合意では、元慰安婦の方々に対し、名誉と尊厳の回復、および心の傷の癒しのために日本政府の予算で事業を行うということになっています。韓国側にすれば『これは日本政府の予算なのだから、事実上日本が国家としての責任を認め、反省している』という解釈ができます。また日本は国内向けに、『元慰安婦の名誉と尊厳の回復、および心の傷を癒すために予算を使うのであって、法的に解決済みということについては一歩も譲歩していないのだ』と説明することができます。この合意は、日本も韓国も一定程度満足できるラインで、しかもアジア女性基金よりは一歩前進した形で、落としどころを探ったものだと言えます。」

大統領の再選が禁止されている韓国で朴槿恵政権の任期は残り一年半となった。今年4月の国政選挙でも与党セヌリ党は惨敗し、朴政権の求心力低下は避けられない。このような政局において、和解・癒し財団は使命を果たすことができるのか。奥薗氏は「韓国が合意に基づいた措置を着実に履行していけるよう、日本も側面支援をすべき」と指摘している。

奥薗氏「ようやく辿り着いた合意を双方が大事にし、着実に前進させていかなければなりません。ソウルの日本大使館前の少女像については日本側がこのタイミングで撤去するよう強く求めすぎると、逆に日韓の合意そのものを履行することが厳しくなる事態を招きかねません。少女像の件は、韓国政府が適切な解決に向けて努力をしている限りは、日本側も長い目で見て、あくまで合意に基づいた措置を淡々と進めておくということが求められていると思います。それが、この問題を次期政権に引きずらないためにも重要なことです。」

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