ブログ開設にあたって

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「スプートニク」からブログ開設の依頼を受けた。思えば不可思議な要望である。なぜなら、拙著『プーチン露大統領とその仲間たち:私が「KGB」に拉致された背景』(社会評論社、2016年)で書いたように、2016年2月、KGBの後継機関である連邦保安局(FSB)に拉致された「札付き」の私にブログを開設せよという依頼であったからである。

私は自分の意見を公表する場として、主として地球座のサイトを利用してきた。私のタグつきのサイト画面には10月4日現在、13の主張が並んでいる。ゆえに、新たにブログを開設してもらう理由は見出せない。だが、ロシアの実情について、なにを書いてもいいという依頼を信じれば、どこまで率直な意見がこのブログに掲載してもらえるかを試してみることは決して無駄ではないと思うようになった。それに、今年、もう3冊の本を上梓しているから、多少とも拙著の宣伝になるかもしれない。というわけで、この依頼を受けいれることにした。

第1回のブログとして紹介したいのは、拙著『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016年)である。この本は、この20年ほどの研究成果をまとめた集大成と言える。計測の困難な社会事象として、私は腐敗や権力をめぐる研究をずっとつづけてきた。腐敗が権力に深くかかわっていることを知り、腐敗問題に特化した研究を本にまとめたというわけである。すでに、英語の本として、Anti-Corruption-PoliciesというものをMaruzan Planetから2013年に刊行したが、新しい著書は新たな所見から全体を書き直して333頁にまとめたものだ。

この本の「はじめに」で、つぎのように書いておいた。

「カール・マルクスの国家分析が不十分であったことは周知の通りである。柄谷行人は、「マルクスは資本主義の本質を深く考察したが、彼の国家理解は不適切であった」と指摘している(Karatani, 2014, p. 175)。なぜか。それは、マルクスが「税」を捨象したからにほかならない。『資本論』では、資本によって稼ぎ出された総所得が利益、地代、賃金という三つの形態を通じて分配され、それが三つの社会階級を形成することにつながると論じられている。だが、これはリカードの『経済学および課税の原理』と決定的に異なっている。リカードは、税収に基づく階級(軍と官僚)の存在を暗に示唆していたのだが、マルクスは国家を捨象しただけでなく、軍・官僚という「階級」を捨象したのである。つまり、本書の試みはマルクスの捨象した官僚について真正面から考察することを意味していることになる。」

大言壮語すれば、本書はマルクスの回避した軍・官僚のかかわる腐敗の問題を真正面から論じるものなのだ。その出来は読者に任せるが、東京都庁の官僚の無責任や、富山市議員の政務活動費の不正請求および情報公開請求を受けた官僚の不手際といった昨今の社会問題に接するいま、官僚をめぐる腐敗問題はきわめて重要な社会的意義をもっていると思う。ゆえに、本書を読むことで、腐敗について深く洞察してほしい。腐敗について真正面から論じた大著は少なくとも日本にはないのではないか。だからこそ、少しでも多くの人にこの問題にもっと関心をもってもらいたい。

ついでに、7月には『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』という新書をポプラ社から刊行した。世界中の官僚の問題を腐敗と関連づけて研究成果を別の角度から分析したものである。「ロビイスト」や「電子請願」の話を中心にまとめている。

ロシアの専門家と称せられる私がなぜ腐敗やロビイストの話を書いたのかと問われれば、それは「グローバリゼーション」と呼ばれる現象が広がるなかで、ロシアだけを研究してもなんの意味もないと感じているからである。「グローバリゼーション」という世界の潮流のなかでこそ、いまのロシアの現状を位置づけることができると信じている。

だからこそ、筆者は拙著『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版会, 2007年)において、世界のパイプライン問題を論じるなかでユーラシア大陸におけるパイプラインも取り上げるという視角を明確に示した。拙著『核なき世界論』(東洋書店, 2010年)がなぜ生まれたかというと、世界の権力構造を論じるなかで地域問題を軍事面から考えるには、核兵器の問題を真正面から論じる必要があったからである。こうした努力を前提に、ロシアの軍事問題をはじめて論じることができる。その前年に書いた拙著『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店, 2009年)こそ、世界の軍事戦略を前提にロシアを論じたものであったということになる。

というわけで、今後、このブログにおいて、世界からロシアをどうみるかという視点に立った私の考えをお伝えしたい。その内容は、マスメディアに掲載されたり、登場したりしている「似非専門家」とは一味も二味も違うものとなるはずだ。

ウクライナ危機の表面化に際して、日本では、ウクライナを併合したロシアだけを悪者として非難する言説が横行した。しかし、これはまったく間違っている。ウクライナ危機は、アメリカ国務省次官補のヴィクトリア・ヌーランドを中心とする勢力がウクライナのナショナリストを煽動して武装訓練まで施し、民主的に選ばれたヴィクトル・ヤヌコヴィッチ大統領を武力で追い出したクーデターによって引き起こされたのである。この点にふれず、ロシアのクリミア併合を批判しても、それはまったく誤った議論と指摘しなければならない。にもかかわらず、日本では私のような主張は無視されつづけているようにみえる(拙著『ウクライナ・ゲート』や『ウクライナ2.0』を参照)。こんな状況にあるからこそ、ブログによる情報発信の重要性がますます高まっているのだ。今後のブログに期待していただきたい。

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