露日の学者 放射線被爆は遺伝するかどうかの究明に挑む

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モスクワで開かれた第15回会議「小児科と小児外科におけるイノベーション・テクノロジー」に出席した大阪大学医学部の放射線基礎医学の世界的権威、野村大成名誉教授は、御自分の報告の中で「日本とロシアは、世代間の健康維持の研究において主導的役割を演じることができる」と述べた。

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野村名誉教授は「今の世代の我々が、その責任を負っている将来の世代の人々の健康という観点から見れば、この研究は極めて重要だ」と捉えている。つまり、遺伝的特性の伝達という問題だ。よく知られているように、細胞の遺伝装置であるDNAは、遺伝物質を保ち、それを世代から世代に伝えることを保証する非常にデリケートで精度の高い構造を持っている。しかしその構造は、化学物質や放射線などを含め一連の原因により損傷を被ることがある。 先天性異常や発達障害、免疫力の弱体化、そしてガンのリスク、機能的精神的障害の増加など、放射線を浴びた両親から生まれた子供達には、遺伝子上深刻な影響がでるということだ。こうした障害を引き起こす原因は、遺伝子の突然変異である。言い換えれば、親が放射線を浴びた場合、その子供の遺伝子装置は不安定になり、その事が、あらゆる遺伝子、とりわけガン細胞への形質転換のプロセスを担当する遺伝子が突然変異する可能性を増大させてしまう。

生物学的タイプの異なる子孫における遺伝的影響は、異なる形で現れる。いくつかのタイプの動物群において、そうした影響が顕著に表れたているとしても、人間においては今のところ、最後まで研究されていない。放射線を浴びた両親から生まれた子供達に関する統計的に信頼できる遺伝子的影響のデータが乏しいため、人間は、他の動物に比べて放射線感受性が高く、その集団において、遺伝性疾患にかかる負荷がかなり大きいことが説明できていない。

広島や長崎で被爆した、あるいは様々な核施設での事故や核実験の結果、放射線を浴びた両親から生まれた子供達の病気発生率に関する疫学的データは、極秘とされているか、統計的に不十分であったり矛盾した内容となっている。それに比べ、動物実験で得られたデータは、もっと均一な結果を示している。例えば野村名誉教授が長年にわたって行ったマウスを用いた実験では、放射線は遺伝的に、子孫の成長に深刻な悪影響を与え、ガンのリスクやゲノムの不安定性を増加させ、放射線を浴びた両親から生まれた健康な子孫の生存率さえ低下させることが証明された。その後、ゲノムの不安定性に関するデータは、チェルノブイリ原発の事故処理(除染)作業にあたった人達の子供達に対するモニタリング調査の結果によっても確認された。そして福島第一原発事故後、この問題は新たに、極めてアクチャルナ問題となっている。

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2014年、日本の医学生物学イノベーション研究所とロシアのピロゴフ名称国立研究医科大学小児放射線防護研究センターは、共同研究に関する覚書を結んだ。日本側は、マウスにおける放射線遺伝学上の強固な実験データ持っている。野村名誉教授の話によれば、遺伝学的悪影響は、放射線を照射された親から58代目のマウスでも認められた。しかし、実験データを大げさに扱い、動物実験をもとに人間に対する遺伝学的リスクについて騒ぎ立てることは、正しいとは言えないだろう。

一方ロシア側にも、その規模において他に類を見ない、三世代にまたがる信頼性の高いデーター・ベースがある。親の子宮内で被爆した人達、チェルノブィリ原発事故後、除染作業の過程で様々な量の放射線を浴びた彼らの両親達、高濃度汚染地帯で生まれた人達、そこで現在まで暮らす人達など、データは幅広い。そうしたことから、ロシアと日本の学者達は、最新の技術を用いて、動物と人間に対する放射線の世代間の影響を調査する比較研究を行うことができるだろう。

こうした種類の日本側との研究や共同プロジェクトの重要性について、国立研究医科大学小児放射線防護研究センターのラリサ・バレワ教授は、スプートニク日本記者のインタビューに応じ、次のように述べている-

「これはもちろん、非常に重要なことです、親から子供に何らかの病気が遺伝するのかどうか否かですが、リスクはあり、それも大きいと思います。この問題の解決には、最新の分子・細胞テクノロジー、そして放射線を浴びた親及びその子供達のDNAなどの状態に関するデータ・ベース作成の助けを借りた綿密な調査が必要です。そしてそれに続く、長期にわたる臨床的観察と分析が求められます。これもまた、私達と日本の専門家達との協力の目的です。」

こうした露日の協力は、科学界における新しい発見となるばかりでなく、放射線を浴びた両親から生まれた子供達、つまり未来の世代の子供達を保護する予防措置作成の科学的基盤を作り出すに違いない。

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