共同経済活動を巡り、首相は11月下旬の記者会見で、ロシア側と協議しているかの言及を避けていた。これまで日本側は「ロシアの法令に従って実施すれば、ロシアの管轄権を認めることになる」と慎重だった。首相には、ロシア側が積極的な同構想に乗り出すことで、プーチン氏から領土問題での譲歩を引き出す狙いがありそうだ。
ただ日本側は、日本の法的立場を害さないことが前提で、北方領土の主権を主張するロシア側との溝は埋まっていない。領土問題を巡る主張も平行線のままとみられ、今月15、16両日に山口県と東京で開催する首脳会談でどこまで一致点を見いだせるかが焦点だ。
関係筋によると、ロシア南部ソチで5月6日に開いた首脳会談で、首相は北方領土交渉に関し「これまでの発想にとらわれないアプローチで進めよう」と呼び掛け、合わせて共同経済活動に関して具体案の検討を開始するよう提案した。9月と11月に実施した2回の首脳会談でも協議されたとみられる。 両政府は首脳間の協議を踏まえ、ビザなし交流の対象拡大を検討。日本のビジネス関係者が北方四島で活動するため、現在、元島民や報道関係者らに限定している渡航の枠組みを緩和できるか協議を進める。
共同経済活動を巡り、プーチン氏は11月に南米ペルーで行った首脳会談後の記者会見で、首相と会談の中で協議したと明らかにした。ラブロフ外相は今月3日、首相から提案し、日露両国で協議中だと説明していた。
先に伝われたところによると、日露両国の政府や民間企業が出資し、北方領土で合弁事業などを行う構想。水産加工場や養殖場などが想定されている。1996年、プリマコフ外相(当時)が初めて日本側に提案し、98年には検討に向けた委員会の設置で合意した。しかし、北方領土を実効支配するロシア側は、自国の法令に基づく実施が前提との立場。領有権は日本にあり、ロシアの主権是認につながる活動は認められないとする日本側と折り合わず、これまで議論が深まってこなかった。