小説家 中村 文則氏 ドストエフスキーと自分の初めての長編小説について語る

日本の芥川賞(2005年)及び大江健三郎賞(2010年)受賞作家である中村 文則氏が、第18回国際書籍見本市“Non/fiction”の枠内で御自分の著書をロシアの読者に紹介するため、このほど初めてロシアを訪れた。氏のベストセラー作品「銃」「土の中の子供達」「掏摸<スリ>」は、すでに英語、フランス語、ポルトガル語など多くの言語に訳されている。ドストエフスキーの作品が氏の創作活動に及ぼした影響について語ったロシアの文学ファンとの集いで、中村氏は「ロシア文学を熱烈に愛しているのに、自分の作品がまだ一つもロシア語に訳されていないのは残念だ」と述べた。

12月3日に開かれた講演会の後、スプートニク日本のアンナ・オラロワ記者は、国際交流基金のブースで、中村文則氏に、お話を伺った。

中村氏によれば、ドストエフスキーとの出会いは、氏の作家人生を決定づけたとのことだ。ドストエフスキーは、中村氏が若い頃、自分自身を探し続けながらも、行く道を選びかねていた時、その作品によって新しい世界を開き、中村氏を救ったという。

中村氏は、スプートニク記者のインタビューの中で、次のように語った。

© Sputnik / アンナ・オラロワ小説家 中村 文則氏 ドストエフスキーと自分の初めての長編小説について語る
小説家 中村 文則氏 ドストエフスキーと自分の初めての長編小説について語る - Sputnik 日本
小説家 中村 文則氏 ドストエフスキーと自分の初めての長編小説について語る
中村氏:ドストエフスキーの作品が、人間の暗部、暗い部分を書いている事、そして善悪の問題を描いていることに影響を受けている。ドストエフスキーの描く人物像というのは、日本人にとっても馴染み深いので、その辺が共鳴するというか共振するところがある。

記者:講演会で、あなたはドストエフスキーは、自分を救ったとおっしゃいましたが、その事について、もう少しお話しくださいませんか?

中村:私はあまり明るい人間ではない、そしてドストエフスキーの作品の登場人物たちも明るくない。こういう小説が存在するのなら、暗い自分が存在してもいいじゃないか、そんな風に私には思えた。そして、そうした人間の暗い部分が芸術として昇華されるという事に、すごく感動した。だから、自分の持つ暗さも役に立つのではないかと思うようになった。そうした事でドストエフスキーから影響を受けたり、救われたりした。彼の描く人物に救いの言葉もあったりするので、そうしたものが自分に響いて助けられた。

記者:ドストエフスキーなしの人生を、お考えになることができますか?

中村氏:ドストエフスキーは、自分の中であまりにも大きな存在だ。彼がもしいなかったらといった感覚はない。そのくらい自分の中にしみこんでいる。『カラマーゾフの兄弟』という作品を読まなかったら、あの若さで作家になろうとは思わなかっただろう。私は25の時にデビューしたが、あの作品を読んでいなかったら、もっとデビューは遅かったかもしれない。

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記者:モスクワ訪問後、北の都、白夜で有名なサンクトペテルブルクにいらっしゃいますが、もちろんこの町はドストエフスキーとも深い関係があります。訪問中どんな計画をお持ちですか?

中村氏:事前にいろいろ調べている。ドストエフスキー博物館とか『罪と罰』に出てくる川とか広場とか、そこを訪れるのが今から楽しみだ。子供に帰ったように、今ワクワクしている。こういう気分になるのは自分でも珍しい。

記者:国際書籍見本市Non/fictionについて、感想をひと言お願いします。

中村氏:今回の見本市は、すごく大規模で人もたくさんで驚いた。いろいろな国のフェスティバルに行っているが、ここは大きくてお洒落だ。人がたくさん本を購入している姿を見ると嬉しくなる。ロシアには、小説を読む文化が根付いてのだなと実感した。

ドストエフスキーの作品は、日本で大変人気がある。光文社が出した新訳の『カラマーゾフの兄弟』は、ミリオンセラーとなった。中村文則氏の作品が一日も早く翻訳され、ロシアでもそれに劣らず人気を集めるよう期待している。

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