ロシアの田舎に泊まったら牛に食われかけた話

© Sputnik 日本/中村浩章宿泊先の猫
宿泊先の猫 - Sputnik 日本
ロシアの田舎に2度泊まってきた。最高の料理に静謐な自然、伝統バーニャ(ロシアの蒸し風呂)に、心温まる夫婦と猫3匹…今も思い出にひたり、にやつきながらこれを書いているので妻に不審がられている。なお、宿泊希望者は連絡を取れば、誰でも家に泊まれる。それについては末尾に記載する。

初訪問は3月初旬ー雪に囲まれた世界

初めてそこを訪れたのは今年3月初旬。3月6日夜、モスクワから列車で9時間半。名前はシャフニヤ(Шахунья)。ニジニ・ノヴゴロドから車で3時間から5時間といった場所なので、黄金の環観光ついでというのもあり。

翌日朝の5時に列車を降りた、寝起き眼を迎えたのは強烈な寒さと、栗色の髪をした優しそうな男の人。名前はコスチャ。挨拶を一通り終え、自動車に乗り込む。車は日本のトヨタだが、ロシアの冬の寒さには耐えられないらしくロシア車を買いたいという。会話はほぼ妻に任せ、私は大自然の景色をぼんやりと眺めた…と言いたいところだが、窓の外は真っ暗で何も見えなかった。電灯などほとんどないのだ。

駅から30分ほど走った車は、半径1キロは人家がないであろう雪原の中にぽつんと立つイズバに止まった。イズバとはロシア伝統の丸太小屋で、切妻屋根にひょっこり煙突が突き出ていた。夜明けで、雪と空気がぼんやりとしたうす青紫をおびている。しかし、車を降りた私の心を揺り動かしたのは、自然の広大さでも空気でもなく、静けさだった。一切の無音。パソコンが、人が、車が、あらゆるものががなりたてるモスクワを離れ、雪が全てを飲み込む地に来たのだと実感した。男性の妻、カーチャと静かに挨拶をして9時ごろまで仮眠しようと床に就くと、猫が近寄ってきた。警戒心がなく、すぐに撫でさせてくれる。猫のごろごろ音が子守唄のように家中に響く。

© Sputnik 日本/中村浩章冬の家
冬の家 - Sputnik 日本
冬の家

ふと目を覚ますと、朝ごはんがかまどで準備中だ。起き上がり布団を片付けた後、洗面台に向かう。と。蛇口がない。理解が追いつかずにあたりを見回すと、洗面器の上に水溜めを、下にバケツを見つけた。どうやら、バケツから水溜めに水を移し、水溜めから蓋を少しずらして水を出すようだ。妻が横から、水は湧き水から汲んでくるもので貴重なのでジャブジャブ使わないようにと言ったのもあり、おそるおそる水を出す。冷た。洗面台を見ると排水溝にフタがされている。水を流そうとふたを開けると理由がわかった。冷気が排水溝から上がってくるのだ。冷た。

朝食までに部屋の構造を把握した。大きな1部屋が簡易な壁やカーテン、そして中心にあるロシアの暖炉兼かまどオーブンであるペチカで仕切られている。この家のペチカは電気式ではなく薪で焚く本格式。暖かい空気や煙が壁にめぐらされたパイプを通り家中に行き渡る。1日は余裕で暖かさが保たれるという代物。初ペチカに感動しきり。

© Sputnik 日本/中村浩章ペチカの上では寝れるし暖かい!
ペチカの上では寝れるし暖かい! - Sputnik 日本
ペチカの上では寝れるし暖かい!

朝食が来た。竈でことこと煮られ、湯気が立つ穀物がゆと、ドライイースト不使用のパン、チーズ、そして、空腹の目には宝石かとまばゆいカーチャが作った5種のヴァレーニエ(ロシア版ジャム、実が大きく、汁の粘度が低い)、粘土の容器に入った自家製牛乳そしてコーヒーをいただく。ヴァレーニエは、ロシア人が愛し、自ら野原で摘む野いちごヴァレーニエなど。

© Sputnik 日本/中村浩章燃えてるところでお粥やスープを作る
燃えてるところでお粥やスープを作る - Sputnik 日本
燃えてるところでお粥やスープを作る
© Sputnik 日本/中村浩章チーズとヴァレーニエ
チーズとヴァレーニエ - Sputnik 日本
チーズとヴァレーニエ

朝食を終えてから外に出た後に一面の雪の中、ロシア古式の遊びを小一時間ほどする。遊びは皆で手を繋いでから、先頭の人が走ったり手の下をくぐるので、手が離れないように後についていくもので、歌はないが「なべなべそこぬけ」に近い。スピードと複雑さを増していくと対処できなくなり、絡まって団子状になったりコケたりする。家に戻ってからお菓子とハーブティーを飲んで小休止。聞くと自分たちで摘んだハーブの茶。ハーブティーに恋した瞬間だ。

スノーモービル初体験

しばらくして、コスチャの友人宅に行く。友人宅は広い雪原の斜面近くに立つイズバ。最初に貸してくれたゴム製の雪そりでロシアの子どものように遊んでいると、スノーモービル許可が出た。出撃開始。

計3回、道なき野原で搭乗体験をさせてくれた。1度目は男性の背中にしがみつき、2度目はモービルに結びつけたゴム製のソリに、3度目は本物のソリを結びつけ、男性の子供と妻と私で一緒に乗る。なお、ゴーグルと手袋は必須だ。モービルが超速で雪原を駆け巡り、丘を跳ね、カーブとともに雪を撒き散らす。雪は容赦なく全身に飛びかかり、体内に入る空気が押し出す叫び声が雪原に響く。ちなみに、ゴムソリに乗っている時にボーッとしてたらスノーモービルから落ちた。油断ダメ絶対。

© Sputnik 日本/中村浩章油断してた頃
油断してた頃 - Sputnik 日本
油断してた頃

友人夫妻宅でおいしいご飯と自家製茶をたっぷりといただき、日もくれたので、幸せ気分で帰宅する。道も見えない暗闇と吹雪の中、徒歩で家へ進む。コスチャがこの辺りにはよくオオカミが出ると冗談を言ってくる。

3匹の猫の歓迎とともに家に到着すると、カーチャがキッチン下にある保管庫を見せてくれた。階段を下りた先には、暗がりに電球が光り、食材や瓶が並んでいた。居住スペースが階段を登ったところにあり、実質2階にある理由は、寒さ避けと、涼しい1階部分で食品を保存するためかと納得。

© Sputnik 日本/中村浩章帰宅時の猫
帰宅時の猫 - Sputnik 日本
帰宅時の猫

その後、民族衣装を纏ったコスチャとカーチャが、歌を披露した。コスチャがバラライカ(ロシア伝統の弦楽器)で、カーチャはギターで。妻も歌を披露したが、学生時代リコーダーすら吹けなかった私はただ楽しく聴いていた。そろそろせめて歌の1つでもマスターすべきであろう。

© Sputnik 日本/中村浩章バラライカを弾くふりをする私
バラライカを弾くふりをする私 - Sputnik 日本
バラライカを弾くふりをする私


村探検ーサマゴンに牛小屋
翌日、森に向かっている途中に、村の年配夫婦のお客に呼ばれることにする。田舎では前もって言わずともお客に行けるのだ。テーブルを覆うお菓子やご飯の中、自家製酒のサマゴンもあった。サマゴンはベリーやハーブをつけており香り高く美味しかったが、度が強く、飲むとめっちゃむせた。2杯目はやめておいた。

© Sputnik 日本/中村浩章男性が持つ琥珀色の液体がサマゴン
男性が持つ琥珀色の液体がサマゴン - Sputnik 日本
男性が持つ琥珀色の液体がサマゴン

森の散歩から帰ってきたあと、あるお宅に自家製牛乳を買いに行く。ついでに牛舎を見せてもらう。牛舎には計3頭の牛。1頭は気が立っており1頭は無関心、1頭はコートからマフラーからニット帽までグイグイと舐めてきて、私を食おうとしてるのかとすら思ったが顔を1舐めした後にすぐに止めた。おいしくなかったらしい。

© Sputnik 日本/中村浩章猛烈に迫る牛
猛烈に迫る牛 - Sputnik 日本
猛烈に迫る牛

さて、名残惜しいものの列車の時間が来た。列車まで送ってくれたコスチャに礼を言って列車に乗り込む。コスチャに手を振りつつ、必ず戻ると心に決める…実際すぐ8月に再訪した。さすがに早くてコスチャとカーチャもびっくりしたろう。そのことについては次回。

© Sputnik 日本/中村浩章コスチャとカーチャ
コスチャとカーチャ - Sputnik 日本
コスチャとカーチャ

行き方。チケットの値段、連絡先。
列車の乗車券は直前に購入したので片道2000ルーブル(約3400円)ほどだったが、余裕を持って買えば半値の1000ルーブル(約1700円)。
所要時間はモスクワから列車で約9時間。
希望者はコスチャにフコンタクチェで連絡を。3食・ツアー付き1泊1,000ルーブル。いつでもお客は大歓迎とのこと
もしくはフェイスブックでカーチャに連絡
夏、ジャガイモを掘ったり木こりとして働くなどのボランティアは無料宿泊可。
ベジタリアン向け料理可。
ロシア語が好ましいが、英語でも対応可。

中村浩章

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