よく知られているように、ロシアとの共同経済行動を目指す安倍首相の立場は、米国内に苛立ちを呼び起こしている。米国はそれを、ロシアに対するG7の団結した立場に反するものとみなしている。日本国内自体にも懐疑的な見方が存在する。安倍首相は、ロシアに対する経済援助を先走り過ぎ、その見返りとなる領土を得られないかもしれないと見る向きもある。
しかし、これに対して極東研究所のエキスパート達は、安倍首相の持つロシアに対する関心は、もっと幅広いもので、東アジアにおける日本の戦略的ライバルとみなされている中国と間接的に結びついている、と捉えている。日本国内には、露中の接近は避けられないが、一方だけに偏った状態は、日本にとってもロシアにとっても危険だとの理解がある。
「今回のプーチン訪日は、ロシアは東アジアにおいて親中国政策をとっているとする見方を払拭する役に立つ。あべこべに訪日は、ロシアの対外政策の柔軟性と独立性を確認するものだ。もし今回の訪問が、領土問題を解決しなくても、二国間関係は悪化することはなく、かえって改善されるだろう。」
またキスタノフ日本調査センター長は「日本は、周囲のあらゆる隣国と領土争いを抱えているが、ロシアだけが最高首脳レベルで、このテーマについて日本と交渉することに合意している」と指摘し、日本のマスコミが、南クリルの若干の島に対する共同管理から共同立法地域の創設まで、比較的様々な問題解決のバリエーションを報じていることに注意を促した
日本政府は、こうしたバリエーションのうちのどれか一つロシア側と合意すれば、領土問題を、全く動かない状態から前へと進めることができる、と考えている。
13日に行われた読売新聞及び日本テレビによるインタビューの中で、プーチン大統領は「ロシアには、日本との間に領土問題はないが、もし日本側が、そうした問題があると考えるのであれば、ロシア政府は話し合う用意がある」と発言した。一方先に安倍首相は「私の世代で、この問題に終止符を打つ。この決意で(プーチン大統領との会談に)臨みたい」と述べている。
キスタノフ日本調査センター長は、こうした安倍首相の発言にコメントし、次のように続けた-
1956年の共同宣言のシナリオに従って、南クリルのうち2島を日本に譲渡される事は、あり得るかとのスプートニク記者の質問に対し、キスタノフ氏は次のように答えた-
「理論的には許されるが、事実上それは絶対に不可能だ。会談では、この問題の解決をさらに進める公的な決まりが作られるだろう。現在、どのような妥協が可能であろうかという問いの周りですべてが回っている。双方の面子が立つような何らかの公的決まりが考え出されるだろう。双方にとって同じく受け入れ可能な問題解決の『魔法の鍵』を見つける必要がある。」
ロシア極東研究所日本調査センターの指導者キスタノフ氏の考えでは、もしプーチン・安倍会談において、領土及び平和条約締結問題解決のための所謂「ロードマップ」が作成されたならば、それだけでも今回の出会いは、実りの多いものとみなすことができる、とのことだ。