遼寧の艦載機は主に、ロシアの艦載戦闘機スホイ33と同様の性能を持つJ-15艦載戦闘機。そして、これはあらゆる艦隊に必要な演習というだけではなく、中国の軍事力誇示と、係争海域で軍事力を用いることができるという誇示でもあることは明らかだ。
12月16日、中国海軍が同海域で米国の無人潜水艦を奪ったことは記憶に新しい。無人潜水艦が拿捕されたのはフィリピン・ルソン島の西50海里で、中国が南シナ海で主権を主張する境界線「九段線」付近。短い調査の後、潜水艦はすぐに返還された。事件は解決したが、わだかまりは残った。なぜならこれは、南シナ海で集中的な偵察が行われていることを証拠付けているかもしれず、そうであれば、緊張の高まりが避けられないためだ。
さて、なぜ中国に空母が必要になったかだ。中国は経済、産業力に関わらず、ウクライナで未完成の空母「ワリヤーグ」を買うチャンスが現れるまで、長いあいだ、自前の空母を作ることができなかった。ロシアの空母「アドミラル・クズネツォフ」に類似するワリヤーグは、大連の港に運ばれて改修され、2012年9月には就役した。これで空母建設の経験を持つにいたった中国の造船業者は、同様のタイプの2隻目の空母建設に着手している。一方、公海での覇権争いのためには空母1隻を持ったところで、まして2隻ですら足りず、しかも中国東岸からの海への出口は、米国と日本を含むその同盟国の空軍基地によって遮断されているからだ。
このように、空母「遼寧」と現在、造船中の2隻目の空母には、攻撃的な作戦よりも、急激な情勢悪化や軍事紛争の際にリスクゾーンで商船団を護衛するためのエスコート船という役割が課されると仮定できる。いずれにせよ、中国政府には、自国の海上コミュニケーション保護のためにあらゆる対策に走る準備がある。
そのため、遼寧1隻では日本に対する脅威にならないものの、中国の空母艦隊発展とともに、状況が変わる可能性もある。3隻ないしは4隻の、完全に装備された空母でもあれば、米国とその同盟国に対する正面攻撃に用いられる可能性もあり、中国側はその攻撃で勝利することだって十分あるからだ。いくつかの情報によると、遼寧はJ-15艦載戦闘機30機を搭載できる。搭載機の数は、評価によって22機から36機と幅があるものの、空母「遼寧」が3隻ないしは4隻もあればそれによる大規模攻撃は著しい損害を与えるだろう。そして、日本の航空自衛隊と海上自衛隊の基地が最優先目標のリストにあることはよく知られている。