あるロシア人心理学者の意見 伝統としての家庭内暴力

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女性の権利向上が声高に叫ばれ、あらゆる男女差別の疑いが法廷闘争のテーマとなる西洋と違い、日本の女性には自分に対する物理的暴力を隠そうとする傾向が存在する。

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一見民主的な日本で、この最も現代的で先進的な国の一つにおいて、そのような傾向が何十年にもわたって変わることなく維持されることがあり得るのだろうか。そして日本人女性自身は本当に不安にならないのだろうか。

研究者らはこの現象を以下のように説明している。個人主義的な西洋文化とは違って、日本文化においては、自分の「家」と「家族」をありのままに受け入れ、家族関係における否定的な要素が存在することさえも他人には言わない習慣になっているのだ、と。

そのような「女性的従順の基礎」はほんの小さい子どものころから形成される、と心理学者のナタリア・マズロワ氏は指摘する。マズロワ氏は長年にわたって日本で多くの夫婦に助言を行ってきた。

「日本では、我慢と忍耐は決して女性だけに当てはまる特徴ではなく、社会全体の精神性なのです。とても小さい年齢の時から、そのように育てられるのです。日本の子どもたちは泣いたり不平を言ったりすることは許されません。忍耐の伝統は小さな子どものころから醸成され、何事も我慢するという国民的特徴にまでなっているのです。自分の何か明るい感情や体験を公然と表現する習慣はありません。もちろん、うれしい出来事、例えば大学入学とか誕生日とかを共有することについては完全に許容されていますが、それでも控え目に言う方が良いとされます」

一方で、欧州の平均的な女性が自分の個性に自信を持ち、自分で自分を養うことができるということに世界はもうかなり昔から慣れている。しかし最も美しい絵画にも、裏面というものが常にある。欧州の女性の少なくとも20%が、たとえ1回だけだとしても夫やパートナーから過去に暴力を受けたことがあるとされている。さらにそのうちの14%は、社会的保護を受ける必要から、暴力を受けたことについて外部に通報することが不可欠だと考えたという。

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ところが日本の場合、家庭内暴力についての質問に対して、そのような暴力を受けたことがあると答えた人は全体のたった9%しかいない。だがこの数字が現実を反映していると考えることはまず不可能だ。なぜなら、警察に家庭内暴力について相談した女性の割合は0%、つまり一人もいないとされているからである。

「うれしくない情報を外に広めることは絶対にしてはいけないことになっています。単純に、そのような話題は言いふらすのにふさわしくないのです。そしてこのような考え方は女性によって家庭の中にももたらされるのです」。そうマズロワ氏は説明する。「21世紀になって、非常に現代的なテクノロジーがあふれ、日本人女性の生活にも新しい習慣が広まっている今でも、こと家族のテーマに関しては日本は前世紀の水準のままです。原則として、日本における妻という存在は所有物の一つであって、誰も違うようには受け取りません。隣人も、友人も、法執行機関も家庭生活に介入することは決してありません。日本では家庭というものは、夫が自分がしたいと思うことを何でもできる閉鎖された領域なのです。ですから恐らく、誰も家庭内暴力の議論を始めようとはしません。この現象が日本の家庭では広くみられるのにもかかわらずです。しかしこのことは他人の目にはぴったりと閉ざされています。暴力が突然すべての境界線を越えた場合は、離婚はもちろん、結果としてあり得ます。けれども離婚に至らなければ、妻は耐え忍び続けることになるのです」

とは言っても、教養のある日本人女性、あるいは大都市に住む女性は外の世界から隔絶されているわけではない。彼女らの目の前には常に、自らの自由を一つも犠牲にすることなく、家庭生活を作り上げようと努力する欧州の女性という手本がある。そしてもちろん、そのような欧州の女性はパートナーから暴力を受けることをよしとしない。

言うまでもなく、家庭内暴力は当たり前の現象として観察されているわけではないが、多くのことに耐えようする日本人女性の姿勢は、結婚とはいったい何かということについての欧州とは別の考え方から来ているものだ、とマズロワ氏は指摘する。

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「日本では、恋愛や家族についてのロマンチックな考えに基づいて結婚が成立することは稀です。日本人にとってはこれは滅多にない現象です。家族というものは、非常に明確な原則に則って出来上がるものなのです。結婚しようと思う若い男性は自分の婚約者に、自分の銀行口座にいくら貯金があって、これからの5年間に職場でどれだけ成果を上げるか報告しなければなりません。そして正にこの点が、日本人女性がこの若者と結婚するかどうかを決める際の決定的要素となるのです。家庭生活の中で自分がどのような財政的基盤を得るのか、女性ははっきり理解しなければなりません。そしてその選択のあとは恐らく、自分の気に入らないかもしれないことも我慢する決心をするのです。気に入らないことは結局とてもたくさんあるのですが」

ある性別に属しているということは、その人の行動パターンに対する私たちの社会としての具体的な期待も決めてしまうものだ。例えば、男性であることからは行動する際の決断力、力強さそして責任感を私たちは常に期待する。女性的とされる性格は、より繊細で、またより軽率であることを連想させるかもしれない。だが現代社会でも家庭の中でも、いわば「ひっくり返った性別の人」とでもいうべき人がますます多くみられるようになっている。

例えば、ロシアでは「ポトカブルーチニク(恐妻家)」という表現が非常に広く使われている。この表現はイメージ通りに説明すれば、「妻の靴のかかと(カブルーク)に踏まれて(ポト)いる夫」のことである。このような男性は普通、家庭内の最も重要な決定を妻に委ねている。この時夫は愚痴一つこぼさずに配偶者のあらゆる機嫌に耐え、妻の気まぐれをすべて実行する。「ポトカブルーチニク」の妻は、家庭における真の指導者であり、普通夫よりもたくさんのお金を稼いでいる。しかしそれでも、このような男性が家庭内の序列における自分の地位の低さに苦しんでいるというのは事実ではない。「ポトカブルーチニク」の地位は多くの場合むしろ都合がいい。というのは家庭の物質的状態に対する責任を回避できるからである。

ひょっとしたら、日本の家庭でもこのようなことが時々あるのだろうか。

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「『家族の女主人』という考えは完全に西洋のものです。東洋世界が全体としてそうであるように、日本社会にとってこれは考えられません。しかしだからと言ってこのことは、生まれつきの忍耐心にもかかわらず、日本の家庭の中で女性が何らかの物言わぬ犠牲者になっていることを意味しているのではありません。全くそうではありません。それどころか、中にはひどい性格の女性もいるかもしれません。夫に対し定期的にヒステリーを起こして何か、例えば贈り物や服、旅行を要求するような人です。世界中のどの女性とも同じように、日本の女性もそうするかもしれない、と私は考えています。それでもやはり、日本の家庭では重要な決定は女性が下すのではなく、最後はいつも夫が決めているのです」

しかし人間は、というよりも女性は、「天使のような忍耐力(ロシア語では「並外れた忍耐力」のことをこう表現する)」をもつ人でさえ、不満を自分の中に抑え込むことが常に出来るわけではない。心理学の法則によると、そのようなことをすれば必然的に精神的崩壊につながってしまう。ロシアの女性は、同性の友人と会ったりおしゃべりしたりして「感情をぶちまける」ことで体の力を抜く。その友人はよき助言者であることもあればそうでないこともあるが、ロシアの女性にとってはこうした友人こそが真の助っ人であり心理学者なのだ。では、「心にたまったもの」を吐き出したいと願っている日本の女性は誰に相談すればよいのだろうか。西洋の女性がよくそうするように、心理学者に相談することはできるのだろうか。

「日本の職場では仕事以外のテーマは話し合う習慣がありません。天気と自然、生け花は別ですが。もちろん、同性の友人と一緒にどこかに行ってくることはできます。いろいろなちょっとした話題を話し合ったり、存分に笑ったり、お酒を飲んだりといったことです。実は日本人はかなりたくさんお酒を飲みます。しかしそういう場で家庭の問題を話す人は誰もいません。心理学者のところへ行くこともできるかもしれませんが、私の意見では家庭の問題について相談に乗ってくれる心理学の分野自体が日本にはありません。実際にあるのはもっと敷居の高い学者的で学問的な分野です。医師のように支援してくれることを専門にした心理学は、あまり普及していません」

今回、これまで度々日本を訪問し、日本の数多くの夫婦を観察しその相談に乗ってきた経験をもとにした、ロシア出身の心理学者、ナタリア・マズロワ氏の意見を皆さんにご紹介した。ひょっとすると、例えばロシアでもよくあるように、この意見も結局ステレオタイプでしかないのかもしれない。だから私たちは、読者の皆さんがこの問題についてどう考えているかを知ることにこそ関心がある。皆さんはロシア出身の心理学者の意見に賛成できないかもしれないし、自分の意見を付け加えたいと思うかもしれない。あるいは真っ向から反論したいと思われるかもしれない。どのようなものであっても、皆さんのご意見を是非お聞かせください。

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