ロシアでも増えている「さとり世代」情熱のやり場を知らない若者たち

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現代の日本の若者の特徴を表す言葉であるとされている「さとり世代」。さとり世代とは一般に、堅実・現実的で高望みをせず、情熱や物欲がないと言われている。人生に「悟り」を開いたかのような若者を指したこの言葉は、なんとロシアでも使われている。モスクワを中心とする大都市で、自らを「サトリ」と称する若者が増えているのだ。

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ロシアのサトリとは一体どんな若者たちなのか?日本のさとり世代との共通点は何なのか?まずは、サトリを自称するモスクワの大学生パーヴェル君(仮名)に聞いてみた。

パーヴェル君「僕は両親と暮らしていて、学費は払ってもらっています。今、バイトはしていません。必要性を感じないので、クラブ(夜の社交場)なんかにも行きません。一年前のバイトで稼いだ3万円ちょっと、使い道がなくてそのままになっています。今、これといって情熱を燃やせるものがないんです」

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それは恋愛に対しても同じことだ。パーヴェル君には彼女がいたが、別れてしまった。「真剣な付き合いをしたいという希望もないし、時間もありません。今まで誰かと付き合っても全部同じ終わり方をして、飽きちゃったんです。みんな、僕のところへ来ては去っていくから、誰かのために闘ったり、心配したり、恋しく思ったりすることは、まずありません。いつかは家庭を作らなくちゃいけないのかな、とは思いますけど」

都内の私立大学に通う美咲さん(仮名)。彼女の周りにも、何に対して燃えていいのか、人生の目的を見つけられていない人が多いと言う。

美咲さん「あまりにも情報が多すぎて、かえって、自分が何に情熱を傾けられるべきかわかっていない人が多いと思います。見つける前に燃え尽きちゃうんです。恋愛に対しては、冷めているというより、他にやることがありすぎて恋愛の優先順位が相対的に下がっていると思います。例えば子どもがいたりすると、キャリアの邪魔になりそうだし、結婚しないという選択肢もポピュラーになってきました。私たち女子学生の間では、結婚がゴールだという考え方は激減しています」

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ロシアの心理学者、エレーナ・トゥルリナさんによると、ロシアのさとり世代の男性は「男性が稼ぎ頭になるべき」という思い込みがないため、家事や子育てに多くの時間を割くこともいとわない。しかし同時に、女性とうまく関係を築くことができない人も増えているという。ロシア男性といえばひと昔前まで「肉食系」だったが、様相は変化してきているようだ。

パーヴェル君は自分の行動について他人に説明するとき「僕はヒッカだ」と話す。ヒッカとはひきこもりの人を指す。(ちなみにこの言葉は語尾変化するため複数形だと「ヒッキー」になる。「サトリ」と同様、ロシア語化している)「僕はもの静かで閉鎖的な人間です。病気とかではありませんし、ヒッカというのも冗談で言っているのですが、どんな冗談の中にも真実があるというロシアのことわざがあります」

トゥルリナさんは「最近、モスクワの中高校生を対象にした研究が行なわれました。それによると彼らには概して、何かをしたいという情熱が足りません。特にキャリアについてその傾向が顕著で、『生活費が足りればいい』と考えています。両親が多くの時間を職場で過ごし、自由時間もなく疲れきっている姿を見て、そういう人生に疑問を感じているのです。一方、地方の若者はもっと野心的で、大都市に出て稼ごうと考えています」と話す。ロシアでは大都市と地方の生活水準が違いすぎるので、自ずと若者の価値観も変わってくるのだろう。

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キャリアに対する考え方には日露で相違点が見られ、同じさとり世代でも日本人の方がシビアに考えている。美咲さんは「両親の世代に比べると、私たちの方が就職に対して神経質になっています。早めに就職活動をして、早めに内定をもらい、大手の良い会社に入り、安定した生活を送りたいという希望が強いです」と言う。

ロシアの専門家たちは、さとり世代の価値観は、インターネットの普及によって形成されたと考えている。「サトリ」をテーマにしたエッセーを書き、若者の間で人気になったユリア・ステパノワさんは、「さとり世代は、異世界の子どもたち第一号。彼らにとってヴァーチャルの世界は現実世界の投影ではなく、それ単体で独立しているものであり、自分の評価に大いに影響を及ぼすものです。その意味で、パスポートや履歴書と同じくらい大事なのです。インターネットで情報にアクセスする権利さえあれば、さとり世代に国境はありません」と話している。

(徳山あすか、ダヴィッド・ナルマニア)

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