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望月教授による証明が数学界を二分

© Flickr / João Trindade望月教授による証明が数学界を二分
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数学の難問「ABC予想(オステルレ・マッサー予想)」を証明したとする、京都大学の望月新一教授による論文について、世界の数学者らは様々な形で受け止めている。理解できる人が世界で20人ほどの500頁にわたる望月氏の著名な論文を、望月氏本人が率いる科学雑誌が掲載に向け受理したのだ。

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査読雑誌に科学論文が掲載されるということは、関係分野の有能な専門家らがその論文を終わりまで読み評価したことを意味する。つまり必要な水準の査読のもと、その過程で誤りや捏造の確率は最小限にまで低められるのだ。京大の数理解析研究所が発行する数学誌面で、ABC予想を証明する望月氏の論文が2018年初めに掲載される見通しになっている。この論文は既に2012年に完成していたもので、その長さは500頁にわたる。この掲載については朝日新聞が報じている。ところが、この論文の掲載は望月氏の大勢の同僚にとって、査読者らが同論文を最後まで読み承認したということを意味することにはならない。ABC予想の証明に際しての問題は、論文の執筆者以外では誰もその証明を理解できないという点である。掲載に向け論文を受理した雑誌の編集長が、望月氏自身であるという事実も疑念を呼んでいる。

「ABC予想」は1980年代に提示され、現代整数論の未解決問題として長い間残ったままだった。この予想を証明するため、望月氏は新たな数学的手段「p 進数タイヒミューラー理論(p-adic Teichmüller theory)」を構築した。ABC予想について、この理論に基づいて組み立てられた証明を評価するために、英オックスフォードと京都で2回にわたって国際会議が開かれた。現在、この証明について討論できる能力のある人の数は20人とみられている。しかし、これら「身を捧げた人々」の中に、望月氏の論文をより広い範囲の研究者らに説明できる人が一人もいないことがわかったため、学会は依然として懐疑的な態度を崩していない。

今回のニュースについてニュージーランド・カンタベリー大学の数学者、フェリペ・ヴォロシュ氏は、「掲載に向け(論文が)受理されたという事実は、私にとっては何かを変えるものではない。依然として私は、理解できる形での説明を待っている状態だ」とコメントしている。

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一方、ヴォロシュ氏と違う意見を持っているのが、英ノッティンガム大学の数学者、イヴァン・フェセンコ氏だ。フェセンコ氏は、望月氏による証明を完全に理解し、証明に誤りを発見していない数少ない研究者の一人だ。フェセンコ氏は、論文は既に検証されており、日本の雑誌に掲載されるという事実は、関係する分野をリードする専門家らが日本出身であるということで説明できると主張している。この雑誌は論文そのものについて、画期的な業績であり、過去半世紀にわたる整数論の歴史の中で最高の成果であると評価している。しかし、数学界の多数派がフェセンコ氏に同意するためには、望月氏による証明の内容を把握できるだけでなく、それを他の人に説明できる人が現れる必要がある。

望月氏は、ロシアの数学者であるグリゴリー・ペレルマン氏と比較される。ペレルマン氏は、「ミレニアム問題」の一つ、「ポアンカレ予想」を証明したことで知られる。2006年には「フィールズ賞」、10年には米クレイ数学研究所からミレニアム問題の一つを解決した業績に対し賞が授与されることが決まったが、ペレルマン氏はこれらの受賞を辞退した。その後ペレルマン氏は研究活動を中止し、メディアによる取材を拒否している。

望月氏は1969年東京生まれ。16歳で米プリンストン大学数学科に入学し、1994年に日本に帰国した。同僚らは、望月氏が数学の問題を解く際高い集中力を発揮すること、米国文化を嫌っていること、日本を去る気がないことを指摘している。

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