声楽家・荒牧小百合さん:音楽を一緒にやると、そこに壁は感じない

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荒牧小百合さん - Sputnik 日本
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日本声楽家・荒牧小百合さんが、桜の美しさに満ちた日本の春の雰囲気をモスクワに運び届けた。荒牧小百合さんは、「ロシアにおける日本年2018」の認定事業としてモスクワとモスクワ郊外で音楽仲間と一緒にコンサートを行った。またロシア国立舞台芸術大学ギーチスでマスタークラスを行い、スクリャービン博物館を訪問し、モスクワの音楽院の学生たちとも交流した。通信社スプートニクの記者が、荒牧さんのコンサートを訪れ、芸術やインスピレーション、また初めて訪れたロシアについて話を伺った。

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荒牧さんは、モーツァルト、プッチーニ、マスカーニ、ヴェルディーのオペラのアリアや、チャイコフスキー、ベートーベン、バッハ、シューベルト、日本の作曲家の歌曲などをレパートリーに持つ。最高レベルのプロフェッショナリズム、美しさ、優雅さが、オペラのアリア、歌曲、巧みなジャズ、民謡と、ジャンルに関わらず各曲を印象付ける。

荒牧さんは、日本の音楽愛好家たちに愛され、「国の宝」と呼ばれている。モスクワの「ロマンスホール」で開かれた荒牧さんとその音楽仲間たちのコンサートは、ロシア語で歌われたロシア歌曲だけでなく、その芸術性とおおらかさでも観客を魅了した。アンコールでは「からたちの花」、「この道」、「まちぼうけ」、「日記帳」が披露された。

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荒牧小百合さん

荒牧さんは「スプートニク」のインタビューで、初めて訪れたモスクワの印象などについて語ってくださった。

スプートニク:今回モスクワは初めてですか?

荒牧さん:モスクワに来たのも、ロシアに来たのも初めてです。全員初めてです。

スプートニク:皆さんは日本でもいつも一緒に演奏していますか?

荒牧さん:日本でも一緒に演奏する機会がありますけれども、グループではなくて、今回のコンサートに参加したい人たちが集まってくれました。

スプートニク:モスクワでコンサートを開くことにしたきっかけは、やはり露日交流年でしょうか?

荒牧さん:そうです。

スプートニク:モスクワでのコンサートのために特別なプログラムを用意されましたか?

荒牧さん:せっかくの交流の機会なので、今まではあまりロシア語の歌を歌ったことがないんですけれども、今回のためにロシア民謡とロシア歌曲、ロシアのオペラのアリア、例えばイオアンナのアリアといったものを勉強してきました。

スプートニク:民謡もレパートリーに入っていますね?

荒牧さん:民謡も入っています。ロシア語で歌います。日本語でも歌うけれど、ロシア語でも歌います。ロシア民謡は日本ですごく人気があって、みんな日本語では歌ったことがありますけれども、ロシア語で歌うのは今回が初めてです。

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スプートニク:日本でロシア民謡が人気だったのは昔のことではありませんか?

荒牧さん:確かにそうですね。私の父親の代はみんなこういう音楽が大好きでした。今の若い人たちは聞いたことがあり、知ってはいるけど、歌ったことはないかもしれない。でも歌ってみるとすごく近い感じになる。音楽がそんなに私たちの気持ちと離れてない感じがします。

スプートニク:それはなぜでしょうか?メロディーが日本の皆さんの心に近いのでしょうか?

荒牧さん:本当にそうだと思います。

スプートニク:言葉を知らなくても近く感じますか?

荒牧さん:そう思います。日本語で歌っていた時よりも、ロシア語で歌った時の方が流れがもっとよくなるから、余計にそう思います。

スプートニク:荒牧さんのレパートリーにはロシアの作曲家の作品は入っていますか?それとも今回だけですか?

荒牧さん:大学院の時の先生がモスクワ音楽院で勉強していた人だったので、彼女に習っている時にチャイコフスキーを5曲ぐらい勉強したことがあります。でも大学院が終わってから日本ではロシア歌曲を歌う機会がほとんどなかったので歌わずにいましたが、今回またもう1回勉強し直しました。

スプートニク:好きな作曲家や好きな曲はなんですか?

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荒牧さん:チャイコフスキーは大好きですね。本当に素晴らしいと思う。いっぱいいるんですけど、ラフマニノフも好きだし、プロコフィエフも好きだし、昨日はみんなでスクリャービンの博物館に行ってきたんですけど、ピアノもすごく素晴らしいし、感動しました。小さい時から憧れている作曲家たちです。

スプートニク:荒牧さんはオペラ歌手ですが、日本ではオペラは人気がありますか?

荒牧さん:あんまりないです。ファンは少ないです。ファンはものすごく大好きだけど、そういう人は少ない。そしてそのファンの年齢もとっても高いから、若い人たちはあんまりオペラを聴かないです。

スプートニク:なぜですか?

荒牧さん:わからない… たぶん小さい時にクラシックに触れる機会がまったくなかったりとか、あとはオペラはお金が高いとか、難しいとか、そういうイメージがあるんじゃないでしょうか。

スプートニク:ロシアではそれなりに大きな都市であれば、大抵オペラ・バレエ劇場があります。オペラは一般的にすごく人気があるわけではありませんが、ロシア人は割とよくオペラに行きます。

荒牧さん:テレビで見ました。オペラにもコンサートにもよく行くんですよね。みんな生活が苦しくてもコンサートのために特別にお金を貯めてチケットを買って、貧しい人もお金持ちの人もコンサートに行くっていうDVDを見たことがあって、すごく感動しました。

スプートニク:モスクワの印象はどうですか?

荒牧さん:他のヨーロッパの国に行ったこともあるんですけど、他の国に行くとアジア人はすごく冷たい扱いを受けるんですね。みんなじゃないけど。だけどロシアに来てからは一度もそういう冷たい扱いをされたことがなくて、みんなすごく優しくて、何の壁も感じないのがすごく大きいです。すぐに打ち解けることができる。これが今回大きな発見でした。日本にいるとロシアのことはニュースでしか私たちは見ることができなくて、今そのニュースは難しい問題ばっかりが私たちの耳に届くんだけれど、その印象がまったく変わりました。

スプートニク:ロシアの観客はどうですか?

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荒牧さん:すごく温かい。みんな楽しんで聴いているのがよく伝わるし、民謡を歌うと一緒に歌ってくれたりとか、ノリがいいです。

スプートニク:ロシアの食べ物はどうですか?

荒牧さん:美味しい!すごく美味しい。何を食べても美味しい。フルーツも野菜も美味しいし、ペリメニも美味しかったし、何でも美味しい。塩分もちょうどいい味。他のヨーロッパの国はもっと味が濃いので、毎日すごく美味しいです。

スプートニク:ロシアでは、日本の伝統文化、そして現代文化がとても人気があります。ですから文化交流はとても大事なことではないかと思っています。文化交流についてはどのようにお考えですか?

荒牧さん:インターネットとかではなくて、こうやって実際に会っていろいろ一緒にやってみることが大事だと今回思いました。会わないとわからないことがいっぱいあるけど、会うとすごく分かる。例えば何も説明しなくても感じることもあるし、私たちはロシア語ができないけれども、言葉ができなくても交流することができる。あと音楽を一緒にやると、全然そこに壁を感じないです。

音楽は、知らない人たちと感情のレベルでコミュニケーションをとる最も効果的な方法と言われるのは、恐らくその通りだろう。音楽家は子供の頃から様々な音や価値観に溢れた世界で育つため、この多様性を当たり前のこととして認識している。そのため他の文化、異なる聴衆に対してより忠実だ。内面の落ち着きを備えた洞察力と感受性といった組み合わせを持つ音楽家たちは、様々な国の文化を伝える「外交官」のような存在だ。

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