TPP、アメリカの最大の誤算とは?日本の外交力が気に入らないトランプ政権

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米国のトランプ大統領は、18日の日米首脳共同記者会見で、離脱を表明したTPP(環太平洋経済連携協定)について、あらためて「TPPには戻りたくない」と述べた。しかしトランプ氏はこの数日前、TPP復帰に向けた再交渉の検討を通商代表部に指示していた。現在、TPPには11か国が参加している。3月8日には、日本が調整役となり、米国を除いた新協定に署名がなされた。今後、参加6か国以上の国内承認手続きが完了すれば、新協定が発効される。日本政府は2019年の発効を目指している。

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なぜ米国はTPP発効目前のタイミングで、復帰と離脱の間で揺れ動いているのか。国際経済に詳しい杏林大学の馬田啓一名誉教授は、「いったん発効してしまうと、参加国には米国の要求を押しもどす力があります。米国が戻ってきて再交渉になり、ルールが変わるのは、どの国も嫌なのです。米国もそれがわかっているので、今あえて邪魔をしているわけです」と話す。

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現段階でTPP再交渉の可能性はゼロであるにもかかわらず、トランプ氏が再交渉を検討するように指示した意味とは何だったのか。

馬田氏「業界団体に対するガス抜き、中間選挙を控えての苦肉の対応だと言えます。結局は、共和党の支持をつなぎとめる為のリップサービスでしょう。トランプ氏の本音としては、TPPのような多国間交渉よりも、二国間交渉の方がやりやすい。二国間交渉ならば、不動産交渉で身につけた、相手の弱みにつけ込み、強引に言いなりにさせるやり方、相手から譲歩を引き出す作戦が使えるからです」

トランプ政権にとっての最大の誤算は、米国が離脱すればTPPがまとまるはずがないと思っていたのに、日本が主導してまとめ上げてしまったことだ。

馬田氏「日本は当初米国を説得する方向でしたが、それが無理そうだとわかり、方針転換しました。日本は、いつか米国が戻ってくるという前提で、調整役を果たして11か国の署名にこぎつけました。これは実に上手いやり方で、今後の展開に期待できるようにうまく事を進めたと思います。このことは米国にしてみれば想定外の事態でした。そのためトランプ氏は、市場を失うことを恐れた食肉などの業界団体から突き上げに合っています」

安倍首相は従来どおり、「TPPが日米にとって最善の枠組み」との立場を崩していない。馬田氏もまた、TPPには米国の参加が不可欠であり、最終的には日本が米国を引き込み、アジア太平洋の大きなルールを確立していくべきだと考えている。

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馬田氏「TPPはこれからずっと11か国のままというわけではなく、まとまって動き出せば、入りたい国は出てきます。TPPはアジア太平洋の通商秩序となる重要な協定で、米国が戻るためには、復帰の口実を作る助け舟を出してあげることが大事です。実質的には再交渉は行なわず、それでいて『米国の言い分を聞いてあげた』という材料を与えるのです。そういう妙案を日本が打ち出せるかどうかで、米国の復帰が決まるでしょう」

対日貿易赤字は不平等だと訴える米国は、日本のペースで事が運んでいるのが気に入らない。だが日本にしてみれば、話し合いができないのは米国のせいだと考えている。

馬田氏「米国では、トップダウンで予測不可能なトランプ氏のもとにいても意味がない、と次々と官僚が辞めています。深刻な人材不足のせいで、事務レベルの交渉ができていません。優先順位としてはNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉、米韓FTA再交渉、中国への対応ときて、日本への対応は最後になってしまっているのです」

日米首脳会談では、日米の通商問題を協議する新たな枠組みを設けることで一致した。日本側のトップとなるのは、TPPをまとめたことで安倍首相の信任が厚い茂木敏充経済再生担当相だ。茂木氏は、日米FTAは念頭に置いていないと述べ、米国の思惑通りにはさせないという姿勢を示している。

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