「アラブ版NATO」 成功のチャンスはいかほどか?

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米国は数か月にわたって新たな軍事ブロック「中東戦略同盟」の創設プロジェクトに取り組んでいる。同軍事ブロックには、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール、オマーン、バーレーンが加わる可能性がある。報道によると、この「アラブ版NATO」の主な目的は、イランに対抗すること。一方、専門家らは、潜在的な同盟国間には数多くの相互矛盾が存在するため、中東諸国を一つにまとめるのは容易ではないと指摘する。

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中東にアラブ諸国の新たな軍事同盟を創設するという案は、新しいものではない。米国は「アラブの春」の時期から、同案を推進してきた。軍事・政治分析局のアレクサンドル・ミハイロフ局長は、通信社スプートニクの取材で、米国が同盟創設に向けて再び努力することになった理由について、次のように語った-

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「米国が推進している構想は理解できるものであり、米国の関心を完全に満たしている。米国は中東に対イラン軍事同盟を形成し、ついでに『アラブ版NATO』との同盟を通じてイスラエルの防衛力を強化したいと考えている。イランの他にシリア、さらにはNATO同盟国のトルコも同組織の潜在的標的となる可能性がある。なぜならこの2つの国は、現在、米国の衝動に明らかに従っていないからだ」。

新たな同盟では、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプトが軸となり、ヨルダン、クウェート、カタール、オマーン、バーレーンは『アラブ版NATO』を内側からしっかりと「固定する」役目を担うとみられる。アラブ統一軍は4万人の兵士を擁し、本部はカイロに置かれる計画。

トランプ政権は、まだ存在しない同同盟の名称を考えた。名称は「中東戦略同盟(MESA)」とされ、10月中旬にワシントンで開かれるペルシャ湾岸諸国の首脳会談で、その課題について具体的に発表するという。イランのジャーナリスト、ムハンマド・ガラウィ氏は、スプートニクの取材で、何が米国をこのような行動に向かわせているのかについて、次のような見解を表した-

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「シリア、イラク、イエメンの状況は不安定だ。これが原因で、米国は独力でイランに対抗するのがますます難しくなっている。米国にはすでにそのために十分な兵士も、戦争をする資金もない。米国にとってイランとの戦いに加わるのは、地理的に非常に有利な位置にあるペルシャ湾岸諸国と協力する場合にのみ可能だということは明確になる一方だ。トランプ氏がアラブの人々から安全保障税を徴収すると公然と述べたことも重要だ。つまり、トランプ氏の考えによると、今後アラブ世界は自分たちの安全保障に対して支払わなければならないということだ」。

一方、ミハイロフ氏は、米国の道には障害があると指摘し、次のように語っている-

「米国が『アラブ版NATO』プロジェクトをしつこく勧めている中東の国々は、明らかに、自国の軍事力を単一管理センターの下に集結することを急いではいない。同地域の国々のほぼすべての指導者が、現在ロシアと緊密なコンタクトを持っていることを忘れてはならない。これは多くにおいて、シリア紛争中に中東で失われた軍事ポテンシャルをロシアが回復したのが主な要因となっている。そして、例えばサウジアラビアとアラブ首長国連邦、ヨルダンとカタールなど、米国の中東の同盟国の間には数多くの政治的矛盾が存在している。また『くすぶっている』シリアや、シリアの軍事行動地帯へのイスラエル軍の絶え間なき介入も、アラブ共同体全体が明確に承認しない要因となっている」。

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もう一つ重要な要因がある。ミハイロフ氏は、それはロシアとの武器供給に関する合意、契約だと強調し、次のように指摘している-

「サウジアラビア、カタール、エジプトは、ロシアのS-400地対空ミサイルシステムの供給について自ら交渉を行っている。ロシアは中東でソ連時代から小火器、陸上用戦闘車、対空システム、複合体、航空機、弾薬などを販売している」。

一方、米国は、「アラブ版NATO」の受益者となり、中東諸国が武器の購入先を切り替えて米国製の武器のみを購入するようになるという希望を持ち続けている。つまり、この同盟を(NATOのように)自国の直接的な経済的利益のために利用するということだ。

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