アルゼンチンG 20における日露首脳会談の総括:元ロシア外務次官「交渉加速の背景に中国の影が見え隠れ」と指摘

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1日、アルゼンチンのブエノスアイレスで行なわれたG 20の枠内で、安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領の第24回目の首脳会談が行なわれた。会談は約30分で通訳のみが同席した。この会談の結果について、日露の専門家の見解をご紹介する。

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会談の前向きな成果としては、両国首脳による、平和条約締結に向けての交渉を促進させようという姿勢が挙げられる。2019年1月、安倍首相はロシアを訪問すると表明。さらに、両国の外務大臣を平和条約締結問題の交渉責任者とする新しい枠組みをつくり、ロシア側はイーゴリ・モルグロフ外務次官が、日本側は森健良(もり・たけお)外務審議官がそれぞれ国のトップの特別代表となる。

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露大統領特別代表と日本首相特別代表が平和条約問題に取り組む=プーチン大統領
もちろん、平和条約と直結する最も重要な課題は、領土問題だ。1956年の日ソ共同宣言を基礎に歯舞と色丹を引き渡すというなら、安倍氏とプーチン氏は、それぞれ何らかの形で世論の承認を得る必要がある。先日行なわれた世論調査で、南クリルの島を日本に引き渡してもよいと考えるロシア国民の割合は、7パーセントから17パーセントに増えた。しかし、プーチン氏が島の引渡しという行動に出た場合、ロシア国民の大多数の理解を得られないというリスクを負うことになる。

リスクを取ることになるのは安倍首相も同じで、それは政治生命をかけるレベルのものになる。なぜなら彼のしようとしていることは従来の「四島返還」から逸脱するものであり、日本の世論にとっては、外交の失敗であるばかりか、国家利益の裏切りだと受けとめられるかもしれない。

ちなみに、今回の会談に先駆けて、11月14日にもシンガポールで日露首脳会談が行なわれていた。産経新聞は、「3年以内に平和条約締結へ」と期限を明示して報じていた。

しかし、ロシア科学アカデミー極東研究所・日本研究センターのワレリー・キスタノフ所長は、まだ両者の溝は深いと見ている。

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日本へのクリル譲渡を支持するロシア人が増える=世論調査
キスタノフ氏「安倍氏は首相在任中にこの問題を解決したがっており、プーチン氏と一緒に、妥協できる解決案を見つけられると自信を持っています。妥協についてはプーチン氏自らも言及しました。しかしその妥協がどういうものになるのか誰も現段階で言うことができません。また私自身も、妥協を模索するにあたって両者の接近を見出せません」

元外務次官で、現在はロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所の研究員であるゲオルギー・クナーゼ氏は、平和条約締結問題にはもうひとつ重要な面があるとし、両首脳が交渉を急ぐ背景には中国の存在があると指摘する。

クナーゼ氏「プーチン氏は、ロシアの対極東政策において中国があまりにも影響力を持ちすぎていることを良しとせず、バランスを取らねばならない立場にあります。いっぽうの安倍氏は憲法9条改正の熱烈な支持者であり、この数年の間に、安倍氏の尽力により日本が9条に対する姿勢を見直すという可能性もあり得ます。そして軍事費の割合が、NATO諸国のスタンダードであるGDPの1パーセントに対して、日本は2パーセントにも達するかもしれません。もしそうなると、中国は強烈に反応してくるでしょう。この場合日本にとっては、ロシアが中国と連携し過ぎないようにしてくれることが大事になります」

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安倍首相、来年初めに訪露へ プーチン大統領訪日の可能性も
いっぽう、前向きな見解を示しているのは、領土問題に詳しい日本の専門家、法政大学の下斗米伸夫教授だ。下斗米氏は、首相特別代表・大統領特別代表が指名されたことは、この分野における協議がより具体的な形式をとることを意味している、と指摘。2012年、プーチン氏は領土問題に言及する中で「ヒキワケ」「ハジメ」という柔道用語を引用したが、現在の状態はプロセスが既に「ハジマッタ」と解釈できるものであり、両国が妥協点を模索し平和条約締結に向けて進んでいくという現在の状態は両国にとって前例がないと話した。下斗米氏は、この両国首脳による決定は時とともに熟するに違いなく、来年にもより詳細が明らかになるのではないか、と話している。

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