南クリルの主権にロシアが固執する理由とは

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14日、モスクワで露日外相会談が開かれた。この会談は、平和条約締結までに根本的な障害が残っていることを再び示すものとなった。焦点は、南クリル諸島(北方領土)に対するロシアの主権を日本が認めるか否かだ。なぜこのことが必要なのか?

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会談を終えたロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「私たちは今日、1956年の宣言に基づき作業していく用意を確認した。このことは、はじめの一歩が不変で議論の余地がないことを意味している。その一歩とは、日本側が、南クリル諸島の全ての島に対するロシア連邦の主権を含む、第2次世界大戦の結果を完全に承認することだ」と述べた。

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また、16日の記者会見でラブロフ氏は、日本の南クリルに対する要求が、国連憲章に矛盾するとも強調した。

ラブロフ外相の発言を受けた菅義偉官房長官は、日本政府が依然として南クリル諸島を「日本固有の領土」と見なすか、との質問に対し、「政府の法的立場は変わらない」との認識を示した。

ロシアにしてみれば、主権承認の拒否は、日本がハボマイ(歯舞)諸島とシコタン(色丹)島の引渡しに関する1956年のソ日共同宣言の第9条の承認を依然として拒否していることを意味する。

第9条の条文には、ロシア語でも日本語でも「引き渡す」という言葉が使われている。もし「返す」という言葉が使われていれば、他人のものを本来の所有者返すということになるが、「引き渡す」となれば、論理的に引き渡し可能なのは自らの所有物のみだ。この場合、所有されているものは諸島である。そのため、この単語の使用は、ハボマイ諸島とシコタン島に対するロシアの主権、そして引き渡しの義務を実質的に意味している。そして、日本が固有の領土と見なすその他の島々に対するロシアの主権も同様に、間接的に認めていることになる。

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現在の状況はこうだ。ロシア政府は露日関係の礎である文書、ソ日共同宣言の全条項を認めるとしている。ソ連は、1960年、日本が米国との安全保障条約を改定したタイミングで対日覚書を発出し、ソ日共同宣言の第9条を拒否した。このソ連時代の遺産を現代ロシアは完全に見直している。

その上、ソ日共同宣言に関わらずロシア政府が現在の日本の立場を認めれば、日本以外との交渉でもロシアの立場が完全に弱まってしまう。ドイツやその他諸国との国境に関する全戦後協定が危機に瀕する。ロシアが第2次世界大戦の結果の承認を求めるのは、イデオロギー的、そして法的な側面を持っている。

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ロシア政府が日本との関係発展を望んでいても、喜んでこうした先例を作ろうとしないことは明白だ。そしてこれは気まぐれなわがままでも、平和条約締結交渉にブレーキをかける手段でもない。

ソ連が1960年に発出したソ日共同宣言の第9条の拒否について日本は「共同宣言の内容を一方的に変更することはできない」として反論した。日本が共同宣言を認めるというとき、日本は自国の立場の不変性に常に言及している。しかし共同宣言の中にある「引渡し」を認めるということはロシアの主権を認めているということと同義であり、ここにどちらとも言えかねない曖昧さがあり、そうした議論からは脱却する必要がある。

それでも、長年何の成果も得られてこなかった平和条約締結交渉は、今になってやっと、どうやら具体的な積み重ねを得ることができそうだ。

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