「イルカ監獄」が閉鎖されない理由は?グリーンピースと学者の意見が異なる箇所は?シャチが囚われたそもそもの経緯は?

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ウラジオストクの「イルカ監獄」 - Sputnik 日本
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2018年7月からロシア沿海地方のスレドニャヤ湾にある動物のリハビリセンターに閉じ込められている違法に捕獲されたシャチやベルーガ(シロイルカ)について、ロシアの4つの学術機関の学者らによって構成される協議会が、その先行きについて中間決定を下した。

学者らは、シャチやベルーガの現在の状態を注意深く分析するために、動物たちはすでに慣れたスレドニャヤ湾に3~4カ月は残った方がいいと判断した。一方、環境保護団体グリーンピースは、「捕虜」となっているシャチやベルーガは彼らにとって不適切な生活環境に置かれており、いつ死に至ってもおかしくないため、早急に開放する必要があると考えている。

通信社スプートニクは状況を分析し、「なぜ『イルカ監獄』はまだ閉鎖されていないのか?」、「『捕虜』たちに生き残るチャンスはあるのか?」、そして「なぜシャチやベルーガは生け捕りにされたのか?」という主な疑問の答えを見つけることにした。

2月末、グリーンピースの訴えにより、「イルカ監獄」の問題解決にプーチン大統領も乗り出し、その後、検察庁、捜査委員会、連邦保安庁も加わった。このような機関の参加は、シャチの捕獲割り当てにおける違反事実を明らかにすることを助けた。しかし、シャチやベルーガの解放プロセスを著しく促進することはできなかった。

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ウラジオストクの「イルカ監獄」 

スプートニクは、シャチやベルーガがロシアでなぜこのような悲惨な状況に置かれることになったのかについて、グリーンピース・ロシア支部の調査責任者オガネズ・タルグリャン氏に話を聞いた。

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スプートニク:ロシアのシャチやベルーガが閉じ込められている場所は、この状況を懸念する人々によって感情的に「イルカ監獄」と呼ばれていますが、これは正当だと思いますか?

オガネズ・タルグリャン氏:全くもって正当だと思います。なぜなら狭い囲いの中に記録的な数の捕獲された動物が入れられているからです(現時点でシャチ10頭とベルーガ87頭)。(このようなことが起こった)副因は、中国における水族館建設ブームや需要です。そこではロシアからイルカ類を獲得することが強く望まれています。これは、世界には水族館向けのシャチを捕獲しているところがほぼないということと関係しています。ロシアはシャチの捕獲がまだ可能だった数少ない国の一つですが、所謂「グレイゾーン」です。

スプートニク:それはどういうことですか?

タルグリャン氏:これは学術研究および教育目的のためであればロシアでシャチを捕まえることは許可されているが、販売はできないということです。だがそれにもかかわらず、捕獲割り当てを得たロシアの会社は、数頭の動物を売りました。それが1~2頭だった時は、違反を見て見ぬふりをしていたのではないかと思われます。しかしこれが中国の水族館に大量の動物を送るというビジネスに様変わりし、今回のスキャンダルが起こりました。

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スプートニク:商事会社らは、シャチを捕獲するために必要なすべての許可を得ていたと主張しています。つまり彼らは法律に従って行動していたとうことです。それなのに検察庁が現在この問題に取り組んでいるのは何故でしょうか?

タルグリャン氏:シャチ捕獲を何年も手がける会社は実際に、捕獲割り当て取得をロシア連邦漁業局に申請しました。そして彼らは割り当てを取得しました。ですがグリーンピースは、割り当て発行の際に違反があったと見ています。まず、その数です。数ヶ月でシャチ11頭が捕獲されました。一方、2013〜2015年の4年間で捕獲されたシャチは21頭。また、2016、17年には捕獲割り当ては全く発行されませんでした。第2に、この手続きの禁止対象である未成体も捕獲されました。違反発覚後、(この許可発行を許した)国の生態学的評価の決定が取り消されました。ですが結果的に生まれたのは法的対立です。会社側は許可を取得し、シャチは捕獲されましたが、沿海地方でのシャチとベルーガの留置と会社の動きが間もなく違法になったのです。

スプートニク:学者らによる協議会が必要されたのは何故でしょうか?

タルグリャン氏:省庁間でこの問題に対して全く相反する立場があり、お互いに対立さえしていると判明しました。検察庁と調査委員会、連邦天然資源・環境省、下院は、捕獲が違法で動物が解放されるべきだとの見解を支持しています。他方で、捕獲許可の根拠を準備していた連邦漁業局やその下位機関もあります。彼らはシャチ販売での金稼ぎに関心があると仮定できます。逆説的な状況が形成されつつあり、漁業局が検察に対立しています。そして最後に、現段階、動物の状態を評価する必要がある学者がいます。海の囚人を自由に放つという最終決定が取られる場合は、イルカ類が健康で、全く問題ないという確信が必要です。

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ですがこの他にも、シャチやベルーガを捕獲していた「アファリナ」社の広報担当もいます。彼らは最後まで戦い抜き、動物を中国に売却する権利を守るつもりです。彼らはすでに大統領に書簡を送り、論拠を述べています。論拠の多くは非常に印象的で脅迫的ですらあります。これがその一部です。

「軽率な動物の放流は彼らの大量死をもたらす。動物の長期的リハビリテーションの専門家は現時点でロシアにはいない。一方で外国の経験は少数のサンプルのリハビリテーションに限られている。例えば、わずか1頭のシャチのケイコの放流準備だけでも、(費用が)1998年までに2000万米ドルに達し、その手続は6年近く続いた。だが動物は結局、外洋に帰還せずに死亡した」

「締結済みの契約に違反して動物を放流すれば、外国の水族館に対する義務の不履行につながる。これは我々企業に対する外国企業の訴訟、そしてロシア連邦に対する法的要求の根拠となる」

スプートニク:沿海地方のシャチやベルーガがそれでも解放されるべきだとする、同様に説得力のある論拠をお持ちでしょうか?

タルグリャン氏:囲いのなかのシャチは、エレベーターの中の人間のようなものです。1日に数百kmを泳ぐシャチにとって、これは致命的です。人道的観点から、いずれにせよシャチの解放がベストです。十分に健康ではない個体でさえ、正常な食事を始めるとき、生まれながらの環境では快方に向かいます。捕獲されたシャチはカムチャツカ地方のレッドリストに掲載された肉食性海洋生物です。野生では彼らはアザラシやセイウチを食べます。原則として、生息地において敵がいない頂点捕食者です。シャチは自然環境で100歳まで生きます。基本的には人間より長生きです。一方で水族館での寿命は10〜15年と、10分の1ほどです。これは重要です。なぜなら野生の個体は数百頭しか残っていないためです。同様にレッドリストに掲載されているアムールトラより少ない。書簡で言及されているシャチのケイコに関しては、必ずしも彼女が死んだとは言えません。センサーは数年間、存命を意味する彼女の動きを示していました。そしてその後、一定の動作期間がある機器が単に切れた可能性もあります。契約履行ですが、もちろん、シャチやベルーガを捕獲していた4社のビジネスマンは売却に関心を抱いており、最後までその権利のため戦い切るでしょう。

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世界の著名人がベルーガとシャチを「刑務所」から解放するよう求める
スプートニク:学者による協議会の最初の決定についてはどうお考えでしょうか?

タルグリャン氏:複雑な思いです。シャチとベルーガのリハビリテーションと観察を行い、3〜4ヶ月後の6月末に(捕獲場所でもある)オホーツク海で自由に放たれるとすれば、理想的ではなくとも、彼らの救出に向けたグリーンピースの努力の良い結果です。とは言え、私達の調査の一部は、シャチを4月末にもタタール海峡(間宮海峡)南部に放流可能だと示しています。つまり、格段に早い。これは囚われの身にある動物にとっての最重要事項です。第2の側面として、活発な報道や情報が止んだ時、動物は何か体のいい口実の下、永久に囚われの身として残りうるという気持ちから離れることができません。グリーンピースがこれに同意することはありません。

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スプートニク:グリーンピースがベストだと考える、沿海地方のシャチやベルーガ解放の解決手段はどのようなものでしょうか?

タルグリャン氏:問題解決に、ロシアの学者だけでなく、こうした作業の経験を有する国外の専門家も呼ぶことです。動物が最終的に救われた場合、これはロシアのイメージのプラスになる合同プロジェクトになるはずです。ですが第1に、囲いを拡張する必要があります。グリーンピースの声が届くことを期待しています。沿海地方の海の囚人保護を呼びかける私達の請願書は百万超の署名を集め、中国への動物売却プロセスを一時停止する助けに実際になったのですから。

海洋学者ジャック=イヴ・クストー氏の息子、ジャン=ミッシェル氏と女優のパメラ・アンダーソン氏は先に、プーチン大統領に協力を申し出た。俳優のレオナルド・ディカプリオ氏はまた、シャチ解放を求める請願書への署名を呼びかけた。

今月11日、沿海地方の「イルカ監獄」に囚われているシャチやベルーガの保護を求める一人デモがモスクワで複数件行われた。16日にはウラジオストクでも、保護を求める抗議活動が実施された。動物保護を呼びかける人々は、日毎に海の囚人の健康状態が悪化しているとして、解放を要求している。

現在、通信社スプートニクは学者らによる協議会の議事録のコピーを有する。議事録によると、沿海地方のシャチやベルーガの保管ないし食事改良のため、出来得る限りのことが間もなく行われる。健康的な個体に関しては、最短期間でベストな放流時期と場所が決定される。病気の個体は治療を受け、チップを埋め込まれる。リハビリテーション後も依然として危惧するような状態だった場合、学者らは特別な機関への引き渡しに関する推奨策定を提案している。

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