米国が制空権を失う日

© 写真 : U.S. Air National Guard/Ashleigh PavelekF35A
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2019年4月下旬、米国の太平洋空軍司令官チャールズ・ブラウン空軍大将がジャパン・タイムズの取材に応じた中で、米軍と太平洋地域における同盟軍の抜本的に新しい戦略について言及した。

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インタビューによると、2025年までに米、日、韓、豪を合わせて200機以上のF35戦闘機が太平洋地域には配備される予定だ。これらのF35は攻撃のほか、偵察としても運用される。

F35に極超音速ミサイル装備を計画 迎撃はほぼ不可能 - Sputnik 日本
F35に極超音速ミサイル装備を計画 迎撃はほぼ不可能
さらに中国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が米国空軍の主要基地を射程に収めた弾道ミサイルの開発に成功したことを受けて、米国空軍の司令部はこの地域における戦力を分散させ、比較的小規模の編成部隊で運用する計画を明らかにした。

これは太平洋地域におけるパワーバランスの長期的な大変動を反映した、実に興味深い発言といえる。

ブラウン空軍大将の発言が意味するのは、中国と北朝鮮によるミサイル戦略の勝利だ。両国は弾道ミサイルを開発しており、グアムまでを射程に収めている。その例として、中国は2013年にDF26を配備したが、そのミサイルはなんと「グアム・キラー」の名を冠している。北朝鮮には同じ射程を誇る「北極星2号」が配備されている。また、2017年に北朝鮮がミサイル実験を実施した際、日米両国は発射準備の様子を見逃しており、ミサイル攻撃による奇襲の可能性はいまだ残されている。

CC0 / U.S. Department of Defence / 180627-F-SX095-046F35戦闘機(アーカイブ写真)
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F35戦闘機(アーカイブ写真)

つまり、この地域における空軍の主要基地(特に日本や韓国)はミサイル攻撃の脅威下にあり、米軍司令部は対応を迫られている。

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また、戦力を分散させるのは合理的だとしても、得策とはいいがたい。地理的要因の結果、米国はこの地域で小型飛行場を網の目状に展開することが不可能だからだ。戦力の分散によって補給網が確保できず、機体整備が難しくなるほか、敵の空軍基地や艦隊の殲滅といった大規模な作戦に戦力を集中するのが困難になる。さらに、米軍側は陸軍や海軍をも分散させる必要がある。その結果、この広大な太平洋全域で戦力が散り散りになってしまう。一方、中国人民解放軍は陸軍、空軍ともに兵力を容易に集中できる。

そして米国はF35に期待しているが、主に偵察機としての運用が想定されている。つまり、F35は温存し、実戦投入は避けたいのが本音だ。

さらに退役軍人のローレンス・スタッツリム少将によれば、米国が保有する戦闘機の数は減少傾向にある。1990年に2893機だったその数は1755機まで減少し、そのうち爆撃機は175機に過ぎない。スタッツリーム少将によれば、攻撃用に配備されているのは最新型が400機、B2ステルス爆撃機は20機以下だ。

© 写真 : Public domain米国のF35戦闘機
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米国のF35戦闘機

これは米国を含む、ほかの国々でも運用されている戦闘機の総数で、太平洋地域に配備されているのはその一部に過ぎない。一方、中国人民解放軍が保有する戦闘機の数は2000機(そのうち600機が最新型)に達しており、さらにこの戦力はいずれも太平洋地域に集中している。

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これらの点を踏まえると、米国はもはや太平洋地域における覇権を失いつつあるといっても過言ではない。中国人民解放軍の空軍は米国、およびこの地域における同盟国を数的に圧倒しているだけでなく、質的にも迫っている。戦略の変化と戦力の分散により、米国はさらなる苦境に立たされる。有事となれば、中国空軍は米軍基地を個別に殲滅していくだろう。まずはミサイルで空軍基地を破壊し、4倍から5倍の戦力で米国の戦闘機を撃滅するというシナリオだ。最新鋭のF35が200機配備されたところで、偵察任務が中心の機体がこうした戦況下で功を奏すとは言いがたい。

第二次世界大戦の歴史が示す通り、制空権を失った側の敗北は決まっている。

今日の太平洋地域におけるパワーバランスは米国とその同盟国にとっては憂慮すべきものであり、その状況は悪化の一歩をたどる。こうした状況を背景に、米国側が太平洋地域の戦略でラディカルな手を打つことも想定する必要があるだろう。

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