中国の国家主席の北朝鮮訪問は、朝鮮半島情勢に影響するか?

© REUTERS / Jason Lee習近平 【アーカイブ写真】
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20日に始まった中国の習近平国家主席による北朝鮮訪問が、シンボル的な意味を帯びたものになるだろうという点で、世界のメディアの意見が一致している。両国の外交関係樹立70周年に合わせて実現したこの訪問は、中国の国家首席の北朝鮮訪問としては14年ぶりとなった。

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習主席は会談に先駆けて、北朝鮮訪問の目的について「我々は地域の平和、安定、発展、そして繁栄を、北朝鮮との連携を強化することで積極的に手助けしていく」と話した。中国外交部は、今回の習主席の北朝鮮訪問と、今月末に大阪で行なわれるG20における米中首脳の会談は直接関係はないと事前に釘をさしている。18日に行われたブリーフィングにおいて、中国外交部の陸慷報道官は「中国が、この(北朝鮮への)訪問を、米国に対する圧力をかけるためのテコにしようとしている、と考えている向きもあるようだが、私は、深読みするのは避けた方がいいと強調したい。中国と北朝鮮に、我々の、二国間の議題があるのだ」と話している。

スプートニクは、習主席の北朝鮮訪問が朝鮮半島情勢にどのような影響をもたらすかについて、専門家らの見解を集めた。ロシア高等経済学院・国際政治経済学部東洋学スクール長のアレクセイ・マスロフ教授によれば、これは中国の大きな外交的一歩だという。

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「中国は、北朝鮮を援助なしで放置しておこうとは思っていない。最近、タジキスタンのドゥシャンべで行なわれた上海協力機構の会合で習主席は、中央アジアの国々は、自分たちの安全保障のコンセプトを構築するべきだと主張した。それだけでなく、将来、その目的に応じた組織を創設する可能性さえほのめかした。それがアジア版NATOのようなものになるのか、それはまだ判断できない。と言うのは、中国はこれまで、何らかの軍事同盟に入ることを避けてきたからだ。仮に、の話だが、中国は、北朝鮮を、何らかの一定の条件とともに、自分達の防衛範囲の中に組み込むこともできる。しかしこれは現在の話ではない。まだ中国は、自国のグローバル規模の成長の高揚の中にいて、朝鮮半島問題を含む、東アジアにおける地域のリーダーの役割を得ようと試みている。」

モスクワ国際関係大学の東洋学研究学科長ゲオルギー・トロラヤ教授も、似通った意見を持っている。

「中国は、米国に北朝鮮に圧力をかけることは許さないということを非公式的に示した上で、北朝鮮を支える方向に舵をきっている。この地政学的な戦いの中で、北朝鮮は実際的に、米国に勝利したと言ってもいい。なぜなら米国は何かラディカルなことを北朝鮮に対して行なうことはできず、北朝鮮側と合意しなければならないからだ。中国による北朝鮮への支援はじゅうぶん効果のあるものになり、重みのあるファクターになると確信している。そしてそのファクターによって米国は、北朝鮮に何も与えずして、瞬時に非核化させようという、実現可能性が非常に低い方針を手放さざるを得なくなる。」

ロシア科学アカデミー東洋学研究所の韓国・モンゴル課長であるアレクサンドル・ヴォロンツォフ氏は、朝鮮半島の不安定化は、中国自身にとっても危険なものであると指摘する。

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「中国は、貿易・経済関係において北朝鮮の重要なパートナーだ。そしてこの2国間では、1961年に交わされた中朝友好協力相互援助条約がいまだに効力を発揮している。今回の訪問では、この条約を新しい内容で満たし、アップデートすることに照準があてられている。そしてこのことは、米国と北朝鮮の対話が一時停止している間に行なわれることになる。非核化の問題が議題になるのは明らかだ。北朝鮮は今のところ一時停止を遵守しているが、米国は頑固な姿勢を崩さず、歩み寄りを見せていない。中国はこの問題の解決に向けては、段階的なアプローチと相互の歩み寄りが必要であるという姿勢だ。朝鮮半島が不安定化すれば中国自身にも大きな脅威になる。だから、北朝鮮と友好的な関係を保ち、朝鮮半島を安定化させることは中国外交にとって優先事項のひとつなのだ。しかしながら米国抜きでこの問題を解決することはできない。なんといってもこの対立は、朝鮮戦争が終わっていない、という状態から生じているものだからだ。米国と北朝鮮の間ではいまだに、1953年の休戦協定が生きている。つまり法的には二国は戦争状態にあり、これはこの二国でしか解決できない。中国は、何らかの形で関与して、二国の解決を手助けするかもしれない。」

習主席の北朝鮮訪問は、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム出席によるロシア訪問と、今月末に大阪で行なわれるG20の間に実施される。

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