TikTok禁止で米国はどうなる?

© REUTERS / Jonathan Ernstトランプ氏
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マイク・ポンペオ米国務長官は国内のTV局に出演した中で、中国の「スパイ」行為 に対する報復として米国は中国のアプリ「TikTok」の禁止に踏み切る可能性があることを明らかにした。米国がこうした制裁にのぞめば、TikTokの発展に影が差すことは間違いない。だがTikTokを禁止した場合、選挙戦ただ中にあるトランプ氏自身は打撃を喰らわないのだろうか?

トランプ VS TikTok

マイク・ポンペオ国務長官はテレビ局「フォックスニュース」からの取材に中国のSNSアプリ「TikTok」が中国政府によってデータ収集とプロパガンダに利用されている恐れがあるとして、トランプ政権は米国人ユーザーのこれへのアクセス制限問題を検討していることを明らかにした。

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「我々は事態を極めて真剣に受け止めており、問題を具体的に検討している。中国のスマホ用アプリに米国は間違いなく、しかるべき措置をとる。」

ポンペオ長官はこう述べる一方で、トランプ氏の声明に「先んずる」ことはしたくないとして詳細の言及は避けた。

長官はさらに米国民に対し、自己の個人情報が「中国共産党の手に渡る」ことを望まないならば、TikTokの利用は注意が必要と警告を発している。

ポンペオ長官に続いて、この情報をマイク・ペンス副大統領も確証した。

こうした声明は米国のSNS政策の一環で現れている。5月末、トランプ大統領は、SNSが「保守主義者たちの意見を抑え込もう」とし続けるのであれば、米国のSNSの運営により厳しい規制を行うと怒りを露わに発表した。2020年1月には、米国務省と国土安全保障省が職員に省の機器にTikTokのアプリをダウンロードすることを禁じた。この決定は「存在し、また発生しうる脅威への対抗策」の枠内で採択されている。

TikTok  VS トランプ

TikTokを運営する中国の ByteDance(字節跳動)社は中国政府を含め、いかなる政府とも関係していないと再三にわたって結びつきを否定したが、それでもTikTokаユーザーらはトランプ米大統領のイメージをすっかり損ねてしまった。

6月20日、トランプ氏はコロナウイルスのパンデミックの開始で中断していた選挙活動を再開し、オクラホマ州のスタジアムに集まった支持者 を前に演説を行った。ところがこの集会、実施前には100万人を超す参加者が登録されていたにもかかわらず、実際はスタジアムの観客席は半分が埋まっていなかった

トランプ氏に反対する市民は集会に登録し、無料チケットを獲得しておいて、集会自体はボイコットするよう呼び掛けた。ニューヨークタイムズ紙は、この呼びかけに大人数で応じたはK-POPのファンだったと報じている。彼らは偽のメールアドレスと携帯電話番号で集会の座席を確保すると、これをTikTokでウイルス的に一斉に拡散した。数日後、ユーザーらは、自分らの考案した抗議の準備を集会組織側に知られないようにとそのビデオを隠蔽あるいは廃棄した。

米国の政治家の多くは、トランプ氏のPR活動の失態をそれぞれのSNS上であざ笑った。かつて、共和党の選挙参謀を務めたスティーヴ・シュミット氏も自身のツィッターも「米国のティーンエージャーはドナルド・トランプ氏に手痛い打撃を喰らわせた」と書きこんだ。

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米国のTikTokユーザーらは愛用のSNSが禁止になりそうだと知ると早速アクションを起こした。数日のうちに数千人ものユーザーがアップルのアプリ配信サービス「アップストア」にアクセスし、トランプ氏の支持者向けの専用アプリ「Trump 2020」に対する否定的なレビューを書きこんだのだ。米調査会社「 センサータワー」の調べでは、「Trump 2020」の欄には7月8日のわずか1日の間に700件の否定的レビューと26件の肯定的レビューが書きこまれた。これだけの数の否定的レビューが書かれたと言っても、これがトランプ氏のアプリに何らかの影響を与えることは一切できない。それでも若者たちは、選挙年齢に達していない人も含めて自分たちの声が反映される方法を模索している。

禁止はこれが初めてではない

TikTok禁止を望んでいるのは何も米国一国ではない。4月、インドの司法はGoogleとAppleのスマホ向けアプリショップはインド国内ではTikTokアプリの販売を停止するようを命じた。裁判所の命令にはTikTokがポルノや非道徳的なコンテンツの流布を促していると指摘されている。6月末、インド政府はVodafoneなど、国内のインターネットオペレーターらにTikTokのブロックを命じ、これにより事実上、ユーザーのTikTokへのアクセスを封じた。政令の出される前にTikTokをダウンロードしていたユーザーもこれでアクセスが出来なくなった。

オーストラリアでは、TikTokが中国政府と結んだデータ収集の実態をより入念に調査するよう政治家らが呼び掛けた。上院が捜査のイニチアチブをとろうとした原因のひとつがTikTokで行われている検閲だ。ユーザーがサインするTikTokのダウンロード同意書には危険でショッキングなコンテンツや暴力の場面、ポルノなどを禁じた標準的なルールが列挙されているが、マスコミも政治家らもTikTokには政治的な検閲が存在するはずだと疑っていない。

TikTok VS「貧困」「醜悪」

TikTokに検閲が存在するという情報は、TikTokのモデレーション(投稿検閲機能)ガイドがネットに漏洩した後に流れ始めた。英ガーディアン紙が入手したTikTokのガイドラインによれば検閲対象となるコンテンツは2種類に分けられる。

1つめのカテゴリーが、動画が削除され、これをアップしたユーザーのアクセスがブロックされる「違反」コンテンツで、これに当てはまるのが 「法輪功」(中国で活動が禁止されている宗教組織)とオウム真理教の活動をサポートする動画。 もうひとつのカテゴリーは中国政権への批判を含むもので、 六四天安門事件やカンボジア人大量虐殺についての内容が該当する。

例えばTikTokは17歳の米国籍女性フェローザ・アジズさんのプロフィールを削除した。フェローザさんはまつ毛のカール方法を教授したある動画の中で中国でウイグル人がいかに迫害されているかを話した。フェローザさんのプロフィールは、世界のマスコミがその削除をこぞって書き立てた後、復元されている。

この他にもTikTokは、民族間対立、宗教間紛争やチェチェン、北アイルランド、チベット、台湾などの分離主義についての動画も検閲の対象としている。

この他に載せてはいけない、世界で影響力のある指導者、国家の重要人物トップリスト20が存在しており、北朝鮮の元指導者、金日成氏、金正日氏、現在のトップの金正恩氏、インドの独立運動の理想を唱えたマハトマ・ガンジー氏、ナレンドラ・モディ首相、日本の安倍晋三首相、米国のドナルド・トランプ大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領などが挙げられている。

2020年、規則は更新され、モデレーター用ガイドラインがまたネット上に漏れた。これによると、「醜さ」や「貧困」に関するコンテンツは目立たせないようにしなくてはならない。これらはTikTokに悪いイメージを作り、プラットフォームの新たなユーザーを驚かせてしまうからというのがその理由だという。

例えば、ボディポジティブの歌手リゾさんはTikTok が自分の水着姿のビデオを削除したとして抗議している。

この記事をスプートニクが公表した直後(7月16日)FacebookがTikTokに類似のスマホ用動画アプリの始動を準備しているという非公式情報が流された。新アプリの名称は「Instagram Reels」。米国をはじめ世界50か国以上で利用が可能となる。米国が中国のアプリTikTokを禁止した背後にあったのは、対中政策だけではなかった可能性がある。

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