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新型コロナウイルス
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コロナ禍のただ中で抗議行動 日本の政治意識は高まるか どこにたどり着くか

© REUTERS / Thomas Peter日本で抗議(2015年、アーカイブ写真)
日本で抗議(2015年、アーカイブ写真) - Sputnik 日本
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世界では今、多くの国、地域で抗議行動が盛んに行われているが、これは偶然のことではない。新型ウイルスのパンデミックは万人にとって揺るぎなさを試す過酷な試練となったためである。自国の政治に、今まで何かとこれを避けてきた市民まで関心を持たざるを得なくなった。なぜならウイルスが我々個々人の生活に直接的に影響を及ぼしたからだ。こうした傾向は果たして日本にも及んでいるだろうか? 日本人の政治意識は高まりつつあるだろうか? またそれはどんな変化をもたらすだろうか? こうした問いについて日本人専門家らに見解を尋ねた。

「日本人は政治に無関心」 嘘か本当か

日本人は政治に関心がないというイメージは外国人のみならず日本の情報空間でも目に付くが、研究者の中には現状を正しく示していないと考えを持つ人も存在する。

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2017年の調査では政治に関心があると答えた若者の割合は50.1%だった。一見するとこれはそう多くないように思えるが、外国と比較すると日本が決してアウトサイダーではないことがわかる。例えば、ほぼ同様の関心度が示されているのがスウェーデンの46.4%、フランスの51.8%、英国、米国はそれぞれ55.8%、59.4%となっている。こうした一方でどの国もどの時代でも若者の政治への関心度は中高年層より常に低い。だから早稲田大学の田辺 俊介教授が指摘するように日本の中高年は「意識高い系」に属しており、この評価は他国と比較した場合、妥当なのである。

過去100年で本当の意味での大規模な抗議行動が起きた回数が20年に1度というごくわずかな頻度であったのに対し、2011年にあの東日本大震災とそれに続く福島原発事故に震撼した後の日本では、デモ行動は目に見えて活発化した。2012年から数え、大規模な抗議行動はほぼ毎年のように行われている。 各種反原発集会 (2012年)、特定秘密保護法反対デモ(2013年)、集団的自衛権をめぐる動向及び反戦・反基地運動(2014年)、平和安全法制をめぐる動向(2015年)、そして 憲法改正をめぐるデモ(2017年)がそうした例にあたる。

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ところがこれをNHKが過去45年間実施してきた 「日本人の意識」調査から見ると、「選挙やデモ、世論などの国民の行動・意見が、国の政治に影響を及ぼしていると感じる人が、調査開始以降、長期的に減少している」という帰結が結ばれてしまう。

このことは、日本での投票率が急激に低下していることにも表れている。2019年の総務省の調べでは、参院選で投票した人は有権者の48.80%だった。過去24年で投票率が50%を切ったのはこれが2度目だ。政治への高い関心度と低い投票率が同時に成り立つというパラドックスは、たとえば日本とスウェーデンを比較した場合、特に際立つ。統計では日本人の政治への関心度は上がっていることが示されている。だが、スウェーデンの2017年の選挙の投票率は85% (81% は若者)であったのに対し、日本で同年に行われた衆議院選挙は53.68% と戦後2番目の低さとなった。

日本人の抱える『学習性無力感』 克服はできるか?

2020年1月に実施の 内閣府の社会意識に関する世論調査 では、国の政策に国民の考えや意見が「反映されていない」 と考える人の割合は67.1%だった。しかもそれから半年が経過し、安倍首相および安倍政権の支持率は危機的水準にまで落ち込んだ。日本国民は相次ぐ政治スキャンダルに否定的に反応し、ウイルス拡散の抑止政策、危機対策措置に不服を示した。

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コロナウイルスによって生活状況は厳しくなったために、確かに日本人は以前よりもはるかに積極的に政治問題に関与するようにはなった。ただしそれも、社会科学者で明治大学国際日本学部教授の鈴木 賢志氏の見解では、まだ投票率の上昇には結びついてはいない。

「確かに、特に若者の政治への関心は上がったと思います。私は大学で日本政治のシステムについて大学生に教えているのですが、それまでは『他人事』と考えていたのが、今回のコロナで自分たちの行動が直接制限されたり、逆に給付金やマスクを直接支給されたりということがあって、かなり『自分事』と理解するようになったという意見をよく聞きます。ただし、それが投票行動に結びつかないというのは相変わらずであるとも思います。たとえば7月に東京都知事選挙がありましたが、投票率は前回よりも下がり、わずか55%でしたよね。」

この見解に 明治大学政治経済学部教授の井田 正道氏も同感を示し、世界で見られる傾向とは異なり、日本ではまだ政治への抗議行動はほぼみられていないと語っている。

「世論調査で内閣支持率が低下しているように、現政権のコロナ対応に対して多くの国民は不満感を抱いています。ただ、デモのようなかたちでの抗議活動はほとんど見られません。これは、自粛ムードが継続していることも影響しています。確かにコロナ問題で政治について考えることは多くなりましたが、それだけでは投票率上昇にはあまりつながらないと思います。」

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井田氏 は、過去に政治状況を変える上で日本国民が重要な役割を演じたケースは何度かあったという。だが21世紀初頭の政権交代という転換期を経て、日本人は次第に自分の声で政治を変えることへの希望を失っていった。

「日本人は自分の意識や行動で政治を変える経験は少なからず持っていると思います。世論の支持を失って退陣した首相も少なからず存在しますし、2009年には政権交代もありました。しかし、2012年以降の低投票率は、その前の3年間の民主党政権の失敗が影響しています。このことは、自民党に不満を抱いても、それに代わる政権の受け皿がない、という点に求められます。政権交代の可能性が高まれば投票率も上昇するでしょう。」

鈴木氏も同様に、日本国民が『学習性無力感』を感じ始めたのはこの頃からで、それは次のように説明できると語っている。

「ご指摘の『学習性無力感』を日本人が最近で最も強く感じたのは、2009年の民主党への政権交代だったと思います。政権が変わったところで、結局何も変わらない。自民党に戻って、結局もとのままだ、という思いを持っている日本人は多いと思います。

そもそも、日本人は、政治家は自分たちとは違う世界の生き物だと思っている感じがあります。『お上(かみ)』という言葉がありますが、いったん政治家になると、その人は別世界の人々で、自分たちの気持ちなんかわからない、自分たちの意見が通るはずがない、と思い込んでいるように思います。」

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世界では多くの国で頻繁に大規模抗議行動が行われ、その結果、新たな野党や指導者らが誕生しているが、こうした例は日本ではほぼないに等しい。これは日本の政治システムの特異性から説明がつく。なぜなら日本は昔から政権のパターナリズムを当てにしてきたからだ。この解釈では国の置かれた状況に対する重責はすべて政治家の肩にかかっていることになる。このため日本人は(西側的な考え方に照らした場合)受け身的で、政治には、その分野の専門家ではない以上、口をはさむものではないという確信が支配している。

鈴木氏 は、信頼崩壊の危機が起きたせいで「伝統的なパターナリズムは、もう崩れてしまっている」と見ており、「人々はかなりフラストレーションを貯めているのですが、(教育を受けていないので)どうしてよいかわからない、ということなのだと理解しています」と語っている。 

だが伝統的なパターナリズムが侵食されることで、日本人の政治行動は欧米化することはないのだろうか? これについて井田氏は次のように答えている。

「なかなか深く、難しい質問です。大衆的リーダーという意味では、橋本徹氏が大阪維新の会、日本維新の会を立ち上げ、自身も大阪府知事になったケースがあります。また、山本太郎氏も『れいわ維新の会』を立ち上げ、政界のキーパンソンの一人となっています。ただ、全体としてみるとご指摘の通りだと思います。これは階級意識が弱いことと、『和』を重んじる日本文化と関係しており、大衆運動自体が生じにくいという日本文化が関係していると思われます。『和』の文化は自己主張を抑制する文化でもあります。政治文化の欧米化は第二次大戦後ある程度進んだのですが、現状ではさらに欧米に近づくことはないでしょう。」

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慶応義塾大学総合政策学部の清水 唯一朗教授は、日本人の政治行動はコロナウイルスによる社会不安の増大という条件が働いて活性化しているとして、次のように語っている。

「今は二つの動きがあると考えます。第一に生活が困窮したことにより、特に若い世代の声がSNSを通じてメディアにも取り上げられました。これを受けて、野党、与党、政権は、給付実現の手柄を争うようにこうした声を取り上げ、給付政策が拡大していきました。

こうした結果は、声を出すことで政策が変わるという実感を広げ、政治的有効性感覚を高めているように感じられます。これは若者世代からの政策提案が盛んに行われるようになったことからも見て取ることができるでしょう。」

この他にも清水氏は、コロナウイルスの感染拡大にともなって日本国民がアクセスできる情報量が増加し、国民の政治意識の向上につながったとみている。このことは言い返せば市民が政治により積極的に働きかける能力を得ていることになる。

「もう一つの変化は、COVID19の状況下でさまざまな専門家が情報や分析を発信するようになったことで、多くの国民が政府の発する情報に対しチェックする意識を持ち、自らの意見を主張するようになったことでしょう。この数年、政府が必要な情報を隠しているのではないかという疑念が募り、政府への不信感があることがこの変化の背景にあると考えます。

コロナへの対応をめぐる不満が増大していけば、SNSを通じた政策要求の拡大という状況と相まって、政治的な動きに繋がっていく可能性もゼロではないでしょう。それが建設的なものとなることを望みます。」

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