米の月探査計画で日本にはどのような役割が与えられるのか?

© 写真 : NASAアルテミス計画
アルテミス計画 - Sputnik 日本
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日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年7月9日に、米航空宇宙局(NASA)との間で、米国主導の有人月面探査プログラム「アルテミス」の枠内での協力に関する合意を締結した。日本がこれほど大規模な宇宙開発プロジェクトに参加するのはこれが初めてで、この合意はプログラム実現に向けた日本の役割を決定づけるものとなっている。

一方、日本は独自の月探査計画を進めている。このプログラムの一環として、日本は2007年9月に月探査機「かぐや」を打ち上げ、2009年6月に月の表側に制御落下させているが、このJAXAにとっての最大規模の月探査ミッションは無事、成功に終わっている。

月と飛行機 - Sputnik 日本
日本、月に工場建設へ 水から燃料をつくる=共同通信
JAXAは、月面の土壌サンプルを地球に持ち帰る探査機の打ち上げから、宇宙飛行士を滞在させる月面基地の建設に至る月面探査計画を取りまとめているが、JAXAは似たようなコンセプトを持つNASAのプログラムにも参入することになった。

アルテミス」計画は2017年12月にスタートした米国の有人月面再訪計画である。「アルテミス」はいくつかのプログラムを含んでいるが、その中の一つが、商業月面輸送サービス(CLPS)で、これは月面の資源探査、資源の加工処理テスト、またその他の研究データの収集を行う無人着陸機を打ち上げるというものである。計画では、10kg、500kg、1,000kgと異なる貨物重量の無人機が開発されることになっている。

またプログラムには新型宇宙船「オリオン」の開発が含まれている。地球低軌道を超えて飛行を行う「オリオン」には最大で6人の宇宙飛行士が乗り込むことができる。「オリオン」は宇宙空間に21日間滞在でき、宇宙ステーションとドッキングすれば6ヶ月ミッションを実施することが可能である。

また月周回軌道上には、有人宇宙ステーション「ゲートウェイ」を構築することが検討されている。これは燃料モジュール、科学実験室、居住区画などが一体となったもので、太陽光発電で駆動し、4つのドッキングポートと生命維持システムが設置されることになっている。ステーションには、ドッキングした「オリオン」の乗組員4人が30日間、滞在でき、貨物輸送船「ムーン・クルーザー」がステーションへの貨物の調達を行う。

さらにプロジェクトの一環では、月面着陸船「Integrated Lander Vehicle」(ILV)の開発も進められている。

この月面探査プロジェクトに日本はどのように参加するのだろうか?まず国際宇宙ステーションに物資を運ぶ物資輸送機「こうのとり」の参加である。「こうのとり」は、2020年5月20日から25日にかけて、9回目の飛行を行った。JAXAは「こうのとり」の改良型「HTV–X」を開発しているが、これを月面に打ち上げる可能性がある。

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次に日本は、国際宇宙ステーションの技術を活用した、月軌道プラットフォーム「ゲートウェイ」のためのガスおよび液体の貯蔵用タンクと蓄電器の開発を行っている。

そして3つ目は、JAXAが提示するもっとも興味深いもので、月面探査車の改良と開発での協力である。この探査車には与圧キャビンが備えられている。一方、NASAが開発を検討しているのは、宇宙飛行士が宇宙服のまま乗り込む、キャビンのない月面探査車で、これは、探査車の自律性と走行距離がかなり制限されるものである。宇宙服を着た飛行士が船外に滞在できる時間は7時間から8時間しかなく、この時間内に乗組員らは宇宙船に戻らなければならないからである。月面車のスピードはソ連製で時速4キロ、米国製で時速13キロであることから、これらの月面車の走行距離は16キロから52キロとなる。

しかし日本が計画している月面車は与圧キャビンを備え、また宇宙ステーション同様、走行に必要なエネルギーを搭載している。居住空間には2人が14日間滞在でき、2人が交代で操縦すれば、時速4キロで走行しても、336時間で1,344キロを走破することが可能となり、このことは月面探査に大きな可能性を開くこととなる。つまりこの車両を使うことによって、広範囲にわたる詳細な地理的データを収集し、月面資源に関する数多くの実験を行い、月面基地の建設の準備を進めることが可能となるのである。基本的に、着陸モジュールからの燃料補給システムが装備された月面車が数台あれば、月面ステーションとしての役割を果たせることになる。

日本の月面探査車の開発は、本質的に、「アルテミス」プログラムを新たなレベルに引き上げ、有人月面着陸と月面長期滞在、そして月面経済開発を現実に近づけるものとなるだろう。

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