「水素社会」への仲間入りを目指す日本 サハリンは日本を助けることができるのか?

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サハリン州 - Sputnik 日本
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温室効果ガスの排出量でワースト5位の日本が二酸化炭素(CO2)排出量の削減に乗り出し、「水素社会」創設に向けたリーダーになるという目標を掲げた。日本は、2017年12月26日に、「水素基本戦略」を採択した最初の国となった。日本は、2030年までに国内での水素利用量を1,000万トン規模とする計画である。この課題を実現するため、日本政府は支援のための2兆円規模の基金を創設し、さらにこの分野で活躍する企業に対して税の軽減を行うとしている。

水素をめぐる日本の野望 

日本の菅義偉首相は、2020年10月26日に行った所信表明演説で、グリーン社会の発展促進などにより、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロを目指すと明言した。

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日本は、2030年までに水素の商用化を行い、2050年までに水素の輸入量を100倍以上まで伸ばす計画である。また日本は、水素のエネルギー源としての利用に加えて、水素を燃料とする交通機関を、今後も引き続き発展させていく意向である。日本政府はこれまでに、2020年に、東京オリンピック・パラリンピックの会場周辺と東京駅の間で、燃料電池で走るバスを運行させると発表していた。また水素は海上輸送の分野でも導入されることになっている。2019年に、液化水素を安全かつ大量に長距離輸送することができる世界初の運搬船「すいそ ふろんてぃあ」を製造した川崎重工業は、水素を燃料とした輸送船の建造を計画している。

2020年12月、日本では、88社の企業と大手銀行3行が、水素社会の実現を推進する団体「水素バリューチェーン推進協議会」を創設した。開発基金の創設や新たなプロジェクトの支持により、より幅広い水素の利用に貢献していく。会員には、日本の水素製造のおよそ40%を担う岩谷産業、水素で走る自動車「ミライ」の第2世代モデルの製造、販売を開始したトヨタ自動車、神戸港に液化水素荷役施設を所有し、水素を活用するための日本最大のインフラ施設を開発しているKHI(川崎重工業)などが名を連ねている。

KHIは、水素技術の発展に集中するため、2020年11月、株式会社アトックスとの間で、原子力事業の譲渡に関する基本合意の覚書にも署名している。

日本向け水素輸出で高い競争力を持つロシア

ロシアと日本は、2019年9月、日本への水素の試験的輸出プロジェクトの技術的・経済的根拠の共同研究で協力することで合意、署名した。これに関する協議は現在も続けられている。この共同研究に参加するのは、ロシア国営企業「ロスアトム」の子会社であるロスアトム・オーバーシーズ社と日本資源エネルギー庁の後援を受けたKHIである。12月に開かれたロシアと欧州による気候会議に参加したロスアトム・オーバーシーズ、マーケティング・ビジネス促進部のアントン・モスクビン副部長は、会議で、この協議の詳細について以下のように述べた。

「水素技術は、発電から交通機関、暖房、産業プロセスに至る様々な分野に適用できる厖大な潜在力を持っている。また環境に害をもたらさない水素製造を確立することが重要である。我々はクリーンなエネルギーの製造と国際的な水素サプライチェーン発展に向けた日本との協力のための国際プロジェクトの実現において、独自の専門知識を提示する用意がある」。

ロスアトム・オーバーシーズは2021年に、日本向け水素輸出のための技術的・経済的根拠の研究を終えるとしている。試験的プロジェクトの実施場所に選ばれたのは、水素の製造に使われる石炭、天然ガス、再生可能エネルギーを豊富に有するサハリンである。サハリンは、今後、輸出先になると見られる日本やその他のアジア太平洋諸国に近いという点でも大きな利点がある。ロシアのエネルギー戦略では、2024年に年間20万トン、2035年に年間200万トンの水素の輸出が見込まれている。ロシアの大手エネルギー企業であるガスプロム、ロスネフチ、ノバテクなども水素エネルギーに関心を示していることから、2050年には水素の輸出量が年間5,000万トンに達し、世界の消費のおよそ10%を保証できる可能性がある。

輸出:日本が必要なのは燃料エネルギーとしての水素

ロシア連邦エネルギー発展基金のセルゲイ・ピキン総裁は、水素は21世紀半ばには世界のエネルギー市場において重要な位置を占める可能性があると指摘する。

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「日本は精力的に水素経済への道を進んでいます。水素を製造するもっとも安価な方法が天然ガスであることから、天然ガスの埋蔵量が多く、掘削費が比較的低いロシアは、他の供給国に比べて大きな利点があると言えます。サハリンが選ばれたことについては、最良の選択だと評価しています。なんといってもサハリンは日本に輸送するのにも近いからです。しかし、もっと重要なのは、2009年に、サハリンでは、ロシア初の液化天然ガスプラントが稼働が開始されたことです。このプロジェクトには日本も参加しています。つまり、サハリンにはすでにインフラが整っており、何の変更を加えずとも、水素の製造と輸出に使えるのです。液化天然ガスを運ぶタンカーを使って、水素を運ぶことも可能です。現在、世界では、水素をそのまま、あるいはメタンと混合して輸送するテストが行われています。日本は2030年までに石炭火力発電所100基を休廃止しようとしていることから、水素を、何より燃料エネルギーとして必要としています。そこで日本に必要なのは、天然ガスから精製される“ブルー水素”です。オーストラリアのコンサルティング会社ACILアレンの計算によれば、ロシアは日本に、1キロあたり3.38ドルで水素を提供することができることになります。オーストラリアやカタールの水素の料金は4.6ドル、米国やノルウェーの水素の料金は5.2〜5.4ドルであることから、ロシアの水素はかなり安価となります。一方、再生可能エネルギーを利用した“グリーン水素”について言えば、ロシアにはその技術もありますが、世界でも製造にかかる費用は天然ガスを使ったものより4〜5倍は高くつきます」。

自国のエネルギー安全保障のため、日本は常に供給国の多角化を目指してきた。石油の場合も、天然ガスの場合も同様である。そこで、日本の企業は、ロシアだけでなく、オーストラリア、ブルネイ、インドネシア、ノルウェー、サウジアラビアなどの国での国際的な水素プロジェクトに参加している。

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