自身の

「存在意義である」

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着物の伝統を守る田外桂子さん

美しい着物ハット創りに励む

洋服が日常のファッションスタイルになった現在、着物の伝統は失われつつある。着物市場を維持するにはどうすれば良いのか?着物への関心をふたたび高めるだけでなく、普段のファッションに取り入れられるようにするには何ができるのか?こうした問題に取り組もうと、田外桂子さんは日本の伝統である着物に新たな命を吹き込むため、着物を使用したハットを制作するブランドを立ち上げた。

「着物ハットは日本人としてすべき事を考えた結果」
田外さんは兵庫県生まれ。 2011年からフォーマルウェアのデザインと制作に携わってきた。仕事はとても気に入っていたというが、あるとき何か人のためになるような新しいことができないかと考えるようになったという。
仕事は楽しく不満があった訳でもありませんが、ふと自身の存在意義について考えた時に、もっと沢山の人を幸せにすることはできないかと思うようになり、何かしらの気付きを得ようと本や資料をただ読むという日々を数年過ごして、偶然、着物市場縮小・技術後継者不足についての記事を目にしました。
田外さん

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そして着物について詳しく調べていった田外さんは、着物はニーズがあるのに売れないという現状を知った。

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経済産業省のデータによると、着物を着たいと思う人が特に若年層に多く、また着物を着たことがない人も多く、その理由として着物の3K問題(着付け・価格・着用機会がない)がありました。 もしかしたら、私に何かできる事があるかもしれないと思い、京都の工場見学や図書館へ通い着物について学び始めるうちに、いつしか、着物生産者と消費者それぞれが抱える問題をクリアする、両者の想いを繋げることが自身の課題となりました。

田外さん
「同じことをしても市場を奪い合うだけで、殴り合っていても何も変えられない」
そこで田外さんは、この課題をクリアするには着物と今のファッションを融合させるしかないと思うようになったという。最初に浮かんだアイデアは、着物を使った洋服を作ることである。しかし、田外さんは着物をリメイクした普段着やドレスなどの洋服はすでに市場があることに気づいた。そして、「同じことをしても市場を奪い合うだけで、殴り合っていても何も変えられない。新たなニーズを生むためには、新規市場を創造するしかないと思った」のだそうだ。

驚いたことに、 国内外の市場には多くのオリジナル商品が溢れている。しかし、まだ市場にないもの、それがカジュアルからフォーマルまで対応するハットだった。そして田外さんは、「これだ!」と思ったという。

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「そこに1%の可能性があるなら、それをすることに私の存在意義がある」

田外さん:「もちろん、ハットを制作・販売したからといって、着物市場拡大に繋がりませんが、着物を着たくても様々な理由で着れない人や着物に興味のない人なども含め、国内外の方々に日本文化を楽しんでもらえる可能性はあり、着物の魅力を届けたい人、伝統技術を守りたい人、みんなの想いを繋げることはできると思いました。そもそも着物でハットを制作できるのか、そこに価値を感じてもらえるのか、喜んでくれる人はいるのかなど、当初は不安しかありませんでしたが、そこに1%の可能性があるなら、それをすることに私の存在意義があると思い、日々ハット創りに励んでいます」。

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田外さんのオンラインショップには日本語版と英語版がある。サイトで販売されているハットはすべてハンドメイドだ。しかもそのすべての工程を田外さんが一人で行なっている。

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着物の仕入れとデザインから創りまで全部私一人でしています。当初は国内の工場や帽子メーカーさんに依頼して精算していただくという考えでした。事業計画書を作成したんですけれど、実際、『制作が難しい、着物を使って帽子は作れません』という風に言われました。ですので、結局、自分で生産するしかないと思いました。帽子を作る技術もなく、帽子に使っている素材の品目までわからないレベルでありましたけれども、1年ぐらいで創れるようになりました。全部一人で創るのは大変ですけれど、とても楽しいです。

田外さん
着物ハット、どう被りこなす?
ハットは中折れハットやシルクハットのような、しっかりとした造りの帽子を意味する。田外さん曰く、この着物ハットは、癖のないデザインで、ユニセックス仕様になっているので、基本的にどのようなスタイルにも合わせることができる。
基本的には洋服に合うようにデザインしているので、もちろん、着物が好きな人は着物を着て、カジュアルに着て合わせてもらってもいいです。洋服で一番いいルック、目安としては小紋という着物を使用している場合は、極々普段着のデニムパンツにスニーカー、T シャツというように合わせてもかっこいいです。あと、黒い色の帽子、黒留袖の着物を使った帽子でしたら、カジュアルからフォーマルまで使っていただけるイメージで創っています。
田外さん

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田外さんは、このほか、自身のインスタグラムでいくつかのコーデ例を紹介している。

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昭和レトロな着物ハットには、洋服や着物など普段着と合わせて。
ちょっとしたお出かけや愛犬とのお散歩など、何気ない日常に+1すると、スタイリッシュで個性を発揮する。

例えば:

①ニットやダウンジャケット × デニムパンツ
②アンティーク着物 × ブーツ
③小紋 などなど
こちらの着物ハットは、ゴールドの龍が存在感あるので、全身カラーを統一すると合わせやすい。
例えば:

①ニットのトップス × レザーのジャケット
②ツイードのスーツ × エナメルのシューズ
③コットンのシャツ × サテンのジョガーパンツ
など、同じブラックでも異素材を組み合わせると、全体的に表情豊か(コントラストが効く)でスタイリッシュにキマります。
「着物の3つの問題をクリアしたハットを幅広い方々にお届けしたい」
田外さんはフルオーダードレスのデザインと仕立てでは、豊かな経験を有しているが、着物ハットの製作を始めたのは比較的最近の2019年である。新たな活動分野における今後の目標について、田外さんは次のように語っている。
最初に言いました通り、『着付けができない』、『価格が高い』と『着用機会がない』、この3つをクリアしたいのですが、現在販売中のハットは、どうしても制作に時間とコストがかかるため3万円前後でのご提供となり、価格がクリアできていないというのが自分としてもとても悔しいです。なので、この三つをクリアできるカジュアルラインも展開します。その第一弾として、3月中旬に1万円前後でのご提供が可能な新作を発売予定です。更に今後は、誰でも・いつでも・どこでも"粋"を楽しめる、あらゆるヘッドウェアを幅広い方々にお届けしたいと思います。
田外さん

田外さんの作品に興味を持たれた方は、ブランドの最新ニュースをインスタグラムでフォローしていただけます。インスタグラムでは、田外さんの作品の素材となっている着物について興味深い話題が投稿されています。

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