日本は「和牛」と引き換えに装備品を輸入することができるのか?

© AP Photo / Eric Talmadge米軍普天間飛行場(アーカイブ写真)
米軍普天間飛行場(アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 03.03.2021
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日本の防衛費は年々、増加を続けている。しかし、人口の減少と、それに伴う労働力の減少、加えて新型コロナの感染拡大によってもたらされた、けして良好とは言えない経済状況から、防衛費の増額は国にとって大きな負担となりつつある。これに関連して、日本の元防衛大臣である中谷元衆議院議員は、多くの国で慣例となっているいわゆるオフセット取引を日本が取り入れることによって、武器装備品購入の費用を削減することができると指摘している。

オフセット取引というものが、武器の輸入において、どれほど広く適用され、どれほど効果があるのか、「スプートニク」が調査した。

日本の2021年度予算案における防衛費は5兆3,400億円以上であり、防衛費の増額は7年以上、連続となっている。

中谷元氏によれば、2021年度、日本は3兆7,000億円分の武器装備品の購入を計画しており、そのうち、国内向けは約3兆1,300億円、国外向けは約5,000億円(いずれも概算要求額)になる見込みだという。しかも輸入の割合は年々、増加している。そこで、中谷氏は、他の国々が、装備品を輸入するためにその見返りとなる付帯条件を輸入国に提示するというシステムがあることを指摘し、日本もそのシステムを取り入れてはどうかと提案している。とりわけ、タイが米国からF–16戦闘機を購入するのと冷凍鶏肉が交換条件になったことに言及し、日本の場合、農産物であれば、コメや「和牛」、果物などを交換条件にすることが考えられると中谷氏は述べている

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オフセット取引は、装備品の輸出競争が激しさを増す中で広く活用されている。これは高額の取引に対するいわば「見返り」である。多くの場合、輸出国はなんらかの形で、売上金の一部を輸入国の経済に投資するというもので、たとえば、輸入国での共同生産、技術移転、兵器開発への参加、専門家の養成などである。一方で、これらの見返りは購入した設備とはまったく関係ない場合もある。たとえば、輸入国領内での生産工場の設立、防衛技術とは関係のないプロジェクトへの支援、あるいは輸入国からなんらかの製品を購入するなどというものである。

オフセット取引を最初に始めたのはフランスで、世界的な軍用品の輸出における米国との競争の中で、フランスは輸入国にとってきわめて魅力的な斬新な提案を行った。たとえば、1989年、サウジアラビアに「ラファイエット」級フリゲート艦を輸出した際、フランスは契約の35%分をサウジアラビアに投資することを条件としたのである。そして、カタール、トルコ、インドネシアに対しても同様のオフセット取引を行った。これが世界の兵器市場におけるオフセット取引発展を促すものとなったのである。輸出国は自国の製品を他国に売り込むことができ、一方の輸入国は装備品の購入費用を抑えることができるだけでなく、自国経済への投資を引き込み、防衛産業を発展させ、最新技術を手に入れ、雇用を生み出すことができるのである。

これに関連し、軍事政治分析局の専門家パヴェル・カルムィコフ氏は、「スプートニク」からのインタビューに対し、「オフセット取引の創始者は日本だ」として、次のように述べている。

「日本はこのシステムを1960年代から取り入れています。米国から軍事システムを購入するにあたり、兵器の開発と生産プログラムへの参加を含めた軍事技術協力を付帯条件としたのです。米国にとってこれは、同盟国への支援であり、これが日本の防衛産業の発展を促すものとなりました。2000年代になって、世界の装備品貿易において、オフセット取引は急速に増加し、現在その総額は1,000億ドル(およそ10兆6,770億円)ほどと評価されています。兵器市場の拡大とともに、オフセット取引は増加していくでしょう。ただこの取引はときに合法的な賄賂とも呼ばれています。もちろん、オフセットが兵器輸入国の経済発展、技術発展に大きな役割を果たしていることは否定できませんが、この取引は不透明なことが多く、入札なしで選ばれた企業が契約を結び、その結果、特定の企業だけが利益を獲得し、他の企業が損害を被るということがあるのも事実です」。

しかし、オフセット取引に関する諸問題は国際的なレベルでは整備されておらず、また然るべき合意の締結を急ぐ国もないのが現状である。

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