北極における露日協力の潜在力について 日本の専門家に聞く

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日本の旗とロシアの旗 - Sputnik 日本, 1920, 05.05.2021
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4月21日、ウラジーミル・プーチン大統領は、連邦議会への年次教書演説の中で、北極の豊富な天然資源を開発する重要性について強調した。一方、日本でも最近、この地域への関心が高まっている。これは今後の露日協力の新たな分野となるのだろうか?ロシア問題の専門家、石川一洋氏にお話を伺った。

北極における現在の露日協力

現在、北極における露日の協力は、「アークティッLNG2」の枠内で実現されている。これは、年間1,980万トン(660万トンx3系列)の生産量を持つ天然ガス液化設備を建設するというロシア企業「ノバテク」のプロジェクトである。最初のプラントは2023年、2つ目が2024年、3つ目が2026年にそれぞれ稼働を開始する計画となっている。「アークティックLNG2」の給源はヤマロ・ネネツ自治管区、ヤマル半島の東側ギダン半島のウトレニエ・ガス・コンデンセート田である。

2019年から日本は「アークティック LNG2」の株主の一角を担っている(三井物産株式会社と独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構=JOGMECで10%)。加えて、日本は、2021年から、フランスのトタルとの長期契約の枠内で、ロシアのヤマルガス田からの液化天然ガス輸入を開始した(ノバテクの別のプロジェクト「ヤマルLNG」)。「アークティック LNG2」と「ヤマルLNG」の魅力はガスの輸送費が中東などよりも安いことである。

これに関連し、石川一洋氏は、「北極海航路をめぐって、こういう経済面での協力は非常に重要なことです。先ほどのスエズ運河封鎖事故を受け、日本として航路というのはできるだけ沢山あった方がいいし、エネルギーの供給のこともできるだけ多角化した方がいいというのは日本にとっては国益であると思います」と説明している。

また日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、最近の声明のなかで、「新たな中東」になる可能性があるとも言われている北極海航路に対する日本の関心が高まっていると述べている。またそれによれば、2021年、JAMSTECは北極調査を目的とした新型砕氷船の建設に着手する計画である。

北極地域における露日の協力には他にどのような可能性があるのか?

石川氏は、まずは温暖化が近い将来の露日協力の分野となるだろうと指摘している。

石川氏: 「最近、温暖化ということが北極圏は特により深刻な影響を受けているということで、この温暖化についてどう取り組んでいくかということがもう一つのテーマになってきているのではないかと思います。温暖化については専門家ではありませんけれども、北極圏の永久凍土が溶けてきて、中に閉じ込められていたメタンガスが出るというようなことはロシアだけではなくて、地球的に非常に大きな問題になるということです。日本とロシアは、こうした温暖化の影響や今後の予想についての共同研究みたいなものが必要になってくるのではないかと思います」。

さらに石川氏は、脱炭素もロシアと日本が北極圏で協力できるもう1つの重要なテーマだと考えている。

石川氏: 「プーチン大統領も連邦議会に向けた演説の中で、脱炭素というのを強調していたと思います。そういう脱炭素というもう一つの観点で、新たなエネルギー源ということで水素であるとかアンモニアのような脱炭素の新たなエネルギーということについて、日本もロシアもこれから開発、実用化に取り組むということです。これも北極圏にある資源、天然ガスなどを元にして、あるいは発電なども利用して作られるものです。そういう中、温帯温暖化と脱炭素という視点も北極圏の今後の発展あるいは環境保護などにおいて日本とロシアの協力という視点も加える必要があるのではないかと思います」。

概して、石川氏は、北極における日本の関心は主にエネルギー資源の供給元の多角化と関連しているとの見方を示している。しかし同時に、この地域は地政学的にも重要な場所であるとの考えに同意している。

石川氏: 「ただ経済面での利点ということとともに、北極圏というのは米ソの核戦力が冷戦時代から向き合ってたところですから、そこが軍事拡張とか、ある一国のためだけに使われるというようなことはもちろん好ましくないし、国際協調の場になるべきだと思います。航路が開いて経済活動ができるようになるということは逆に軍事的な利用もしやすくなるということにもなるので、そういう軍事対立の場になるのは日本としては好ましくないし、一国だけが利益を得るというような状況も好ましくないということも言えると思います」。

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