容姿に対する懸念によるうつ病、エピデミックの規模に

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女性(アーカイブ写真) - Sputnik 日本, 1920, 30.06.2021
サイン
モスクワ国立心理教育大学(MSUPE)の研究チームが、美を必要以上に重要視する身体的完璧主義という診断を下すためのツールを開発した。外見や容姿を気に病むあまり、摂食障害に苦しむ若者(男女ともに)も多く、論文を執筆した国際的な研究チームは、こうした状態はすでに「エピデミック」と名付けることができるとしている。今回、開発したツールについて研究者らは、精神衛生上の対策を講じ、うつを予防するのに役立てることができるもので、若者が自分の体型や容姿について健康的で調和のとれた考えを持つのを助けるものになるだろうとの見方を示している。論文は、医学誌「カウンセリング心理学と心理療法」に掲載された。

モスクワ国立心理教育大学の研究チームによれば、現代の社会において、自分の外見、容姿に対する不満を原因とするうつの問題が若者たちの間で深刻となっている。こうした問題を引き起こすもっとも大きな要因となっているのが、いわゆる身体的完璧主義、つまり美の基準を満たすことを必要以上に意識した自己形成のあり方である。過去20年の間に、美の基準は大きく変わった。とりわけ女性の間の変化は著しく、20世紀から21世紀の移行期には、不自然に痩せた体が標準であったが、現在は、ウエストは細く、腕の筋肉は鍛えられたスポーツ体型が標準となっている。

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L.S. ビゴツキーの文化的・歴史的概念によれば、人格の発展や形成は、文化規範、規則、慣習、基準を内面化するプロセス(外部から内部への移行)―言い換えれば、社会で構築されたイメージの社会化および獲得する過程で起こる。このイメージというのは、精神的な健康を促進するものではけしてない。研究チームによれば、文化が体型や容姿への評価に与える影響をテーマにした最近の研究では、自分の体型に対する否定的な評価の形成は、現代のマスメディアで広められている理想的な体型を内面化し、そのイメージと自分の体型を比較することにより起こっているという。

モスクワ国立心理教育大学、カウンセリング・臨床心理学科のアーラ・ホルモゴロワ助教授は、「マスメディアの中の理想的な体型は、修正や加工などを使って歪められたものです。そのイメージは非現実的かつ不自然なもので、それを実際に達成することは不可能であり、またそれにより人々にネガティブな感情を引き起こし、自分を受け入れられない状態を強いるものです。そしてフィットネスやトレーニング、過酷なダイエットによってそれを達成しようと時間と労力を無理に、そして無駄に使うことになるのです」と述べている。

美の基準が変わることにより、身体的完璧主義的な兆候を診断するツールも見直しが必要となってくると研究者らは考えている。そこで研究者らは、「身体的完璧主義の3要素による測定法」という新たな診断方法を考案した。

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診断法は10の設問から成る。設問リストには兆候を評価する3つの予備基準が含まれている。それは、外見の不完全さを修正するために整形外科をしてもいいと考えている、容姿に対する基準が高く、それに対する注目度が高い、自分の外見と他者の外見で社会的な問題を比較し、自分の容姿の不完全さについて触れられるのを恐れるなどである。

ホルモゴロワ氏は、「わたしたちは、若者たちを対象に、この方法論がどれほど有効かを確かめました。研究にはロシアの異なる大学の18歳から23歳までの女子学生が参加しましたが、自分の外見や容姿に自信がないことと、うつや不安障害の兆候とは密接な関係があることが証明されました。

このツールは、学生の間で、うつ病を発症するリスクが高い人たちを選別するのに利用できると研究者らは断言している。また、個人の不適切な行動(行き過ぎたトレーニング、絶食ダイエットなど)や外見に対する不満、精神状態の悪化を見出すための精神的な援助を行うのに有益だとも指摘している。

ホルモゴロワ氏は言う。「臨床心理学科では、高等教育機関や学校で身体的完璧主義の予防プログラムを展開するための前提条件をまとめています。重要なのは、それらが科学的根拠に基づくものであり、現代の国内外の研究データに裏付けられていることです。わたしたちが作った身体的完璧主義のアンケートは、こうしたプログラムを練り上げ、実現するのに有益であることは疑いようもありません」。

研究チームは、この新しいツールは精神衛生上の方策の取りまとめ、また過去10年で若者の間で急増している摂食障害、うつ、不安障害などの予防策を講ずる基礎になると考えている。国際的な研究チームによれば、問題の大きさはすでにエピデミック的な性格を持っている。

今後、研究者らは、近年の身体的完璧主義の変化や構造を研究し、また身体的完璧主義と、自分の体型への不満、精神疾患、非建設的な方法での理想の追求などとの関連についても研究を続けていく計画だという。

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