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国際外交官芸術展に駐ロシア日本大使夫妻が出展、ロシア人もびっくり

10月26日、モスクワで1日だけ、ユニークな展覧会「第3回国際外交官芸術展」が開かれた。ロシアで働く各国の外交官が、自身の絵画や彫刻、写真などを持ち寄ったもので、どれも趣味の作品とは思えないような、ハイレベルなものばかりだ。上月豊久駐ロシア日本大使と、大使夫人の上月裕子さんも、それぞれ油絵とイコン(聖像画)を出展した。特に裕子さんのイコンは、来場したロシア人を大いに驚かせた。

文・写真 徳山あすか
国際外交官芸術展は、歴史的な建物が並ぶモスクワの中心部にあるロシア美術アカデミー「ズラブ・ツェレチェリ・アートギャラリー」で行われた。会場となったホールは、とても天井が高く、大型彫刻や様々なモニュメントが並び、荘厳な雰囲気だ。
絵を描くことで、気持ちを解放
子どもの頃から絵が好きだった上月大使。大人になってからしばらく描いていなかったが、十数年前にモスクワに駐在した時、ロシア人の先生の指導を受けたことをきっかけに、趣味を再開した。「絵を描いているときはそれに没頭して、他のことを忘れ、自分の気持ちが解放されます。私にとって絵を描く時間は、普段の生活から離れる重要な時間です。」
上月大使が出展した絵のモチーフになったのは、世界遺産・ノヴォデヴィチ修道院や、モスクワ近郊の小さな町だ。
「ロシアの風景の中で教会は非常に良いアクセントになるので、今回の絵にも多く入っています。」
会場には、ギリシャ、イタリア、ベトナム、ガーナ、レバノン、イエメンなど様々な国の外交官や招待客が集まった。ブラジルのゲストがピアノとバイオリンの生演奏にあわせて妖艶なダンスを踊ったかと思えば、ベルギー大使が自らベルギーチョコレートをふるまってくれるなど、終始フレンドリーで和やかな雰囲気だった。アメリカ出身の俳優で武道家のスティーブン・セガールさんの姿もあった。各国の大使が出展した作品の中には、お国柄を反映した情熱あふれる絵や、抽象画、魚の頭の彫刻などがあり、バラエティに富んでいた。
イコン制作を20年以上修行
この芸術展に初出展し話題をさらったのは、上月裕子さんのイコンである。国際女性クラブ(IWC)の活動がきっかけでイコン制作と出会い、その後20年以上に渡って現在に至るまで、ロシア人の先生の指導のもと、イコンを描き続けている。

イコンとはイエス・キリストや聖母、聖人、聖書の一場面などを板絵で表現したもの。教会で人々は、イコンに祈ったり、口づけしたりする。イコンは単なる装飾のための絵ではなく、信仰の媒介として重要な役割を果たしている。

会場では、イコンのあまりの出来栄えに「教会に飾れる本物」「正教会の信徒ですか?」と驚きの声が飛んだ。

(写真:作品を鑑賞に訪れたコロンビアのアリフォンソ・ロペス・カバリエロ大使と上月裕子さん)
イコンの魅力と難しさとは?
制約がある中でのオリジナリティ
もともと中世の宗教美術が大好きで、ロシアの教会や修道院を回り、宗教建築や壁画を鑑賞してきた裕子さん。好奇心から始めたイコン制作だが、描いているうちにどんどん夢中になった。今では、聖母子の微妙な向きの違いやテーマの差など、より深くイコンを理解できるようになり、教会訪問が更に興味深いものになった。

「イコンは自分で自由に描くものではなくて、すでにあるイコンを、模写というか、写し取る作業なんですね。テーマや色、構図が決まっている中で、オリジナリティを出すとしたら、飾りとか、模様などに少し遊び心を入れることもあります。グループで、どうやったらイコンの崇高さを表現できるか話したりもします。」
手間も時間もかかるテンペラ画
先生のもとには時おり、新弟子が入門してくる。20年以上修行してきた裕子さんは大先輩だが、「イコンは描けば描くほど難しい、と感じています。先生が新しい方に説明するのを聞くと、すごく勉強になります」と話す。

イコン制作にはテンペラという技法が使われている。顔料を卵やニカワなどで混ぜ合わせた絵の具を用いる技法で、5〜6世紀ごろ登場し、中世イタリアで発展。油絵に比べて手間も時間もかかるが、鮮やかな色を長期間保つことができる。
画家のドブリン氏、イコンの精神性を語る

会場を訪れた画家のニコライ・ドブリン氏は、イコンの精神性について説明してくれた。「正教会のイコンは祈りであり、神に通じています。プロの画家だからといって誰でも描けるものではありません。イコンを通して愛や信仰の真髄を表現することは難しいのです。私もチャレンジしたことがありますが、作品には満足していません。正教会のイコンは神秘的で、ある種の秘密を含んでおり、まるで暗号のように色々な記号や表現が組み合わさっています。イコンそのものがカノン(正典)であり、芸術の中の芸術です。裕子さんのイコンからは本物の美しさが感じられたので、あなたは正教会の信徒ですか?と思わず聞いたほどです。このイコンはロシアの教会に置いて、その前で神に祈ることができるほどの出来栄えです。」

この芸術展で、皆さんすごい才能を隠し持っているなと思いました。その中にイコンも入れてもらうことができ、とても光栄です。「本物だ」と言ってもらえたことが嬉しく、今後の励みになります。イコンはロシアの心だと思っています。まだまだ修行中なので、できる限り続けていきたいです。
上月裕子さん
駐ロシア日本大使夫人
上月大使夫妻のために、歌手が「恋のバカンス」を披露してくれた。日本で作られたこの歌は、ロシアでも年代を超えて愛されている。公務で多忙な大使にとって、この芸術展は安らぎのひとときになったに違いない。
ロシアは多民族多宗教の国ではあるが、国民のおよそ8割をロシア人が占め、その多くは正教徒である。不安定な世の中にあって、信仰を心のよりどころとする人も多い。ある来場者は「文化が全く異なる国の人がこのような絵を描いたことが驚きです。特にイコンは正教会の文化に深く入り込んでいないと描けないものです」と、また別の来場者は「日本の大使夫妻には、ロシアの魂、ロシアの心を理解してくれてありがとうと言いたい。おふたりのロシアへの愛が、作品からひしひしと伝わります」と話してくれた。

© 徳山 あすか / スプートニク日本

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