「議員給もクーポンに」 なぜ子どもへの支援金はクーポンになったのか、そしてなぜこの支援金が社会を分断させているのか?

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日本人の子供たち - Sputnik 日本, 1920, 13.11.2021
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日本の与党は、コロナ禍における支援策として、年収960万円以下の家庭の18歳以下の子どもに10万円相当を給付することで合意した。しかし、この決定に、政治家や一般市民からは不満が噴出している。なぜ岸田総理大臣はこのような賛否両論を呼ぶ決断を下したのか、またこれを受けて人々の間ではどのような声が上がっているのか、「スプートニク」が取材した。

支持されない決定

選挙前の公約の時点で、公明党は18歳以下のすべての子どもに10万円を支給することを提案していた。1ヶ月半前にはポピュリズムだと思われたものが、現実になろうとしているのである。しかし、年収制限はあるものの18歳以下に給付金を支払うという岸田総理の決定は、与党でも、社会でも、批判的に受け止められている。計画では、年末までに現金5万円、そして来春をめどに子育てに使えるクーポン5万円相当が支給されることになっている。
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この支援金の給付が、新型コロナによるパンデミックの影響で生活に苦しむすべての人ではなく、子どもに限定していること、加えて給付金の10万円を現金とクーポンに分けたことに対し、批判の声が上がっている。インターネットのユーザーたちからは、クーポンが便利だというのであれば、自分たちの給料や年金をクーポンで支給すればよいとの意見も出ている
「税金は現金で納めるのに、何故かクーポン寄越しやがった」
「クーポンで家賃払えるのか、光熱費払えるのかって何度言えばいいんだ。現金しかないよ。現金を十分な額配れよ」
「こういうのはスピードが命だから年内に配れよ、年度内に5+5なんて悠長すぎるし的外れ」
「議員給も議員年金もクーポンにしたれ」
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政治家の中にも、今回の決定に抗議を表明する者もいる。かつての大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は、TBSの番組の中で、納税者は政府の寛大な政策に対する代償を払わなければならなくなると批判し、次のように述べた

「子育て支援対策で子どもを持たれている方に支援するのは賛成ですけど、それはしっかり議論をして、現金ワンショットで配るやり方じゃなくて。子育て支援対策というのは、来年に向けしっかり議論する話ですよ」と述べ、その上で「今この時点ですぐにやらなければいけないのは、困窮者救済じゃないですか。ないしは経済対策。経済対策だったら子どもがいる、いないに関わらず渡さなければいけないし、困窮者経済対策でも同じですよ、子どもいる、いないは関係ないので。今この時点で子どもがいる、18歳以下と絞っているところに絞っている理由が全く分からない」。

自民党の高市早苗政調会長も、11月8日に開かれた記者会見で、岸田総理大臣の支援案について、「私たちはお困りの方に経済的支援をするという書きぶりで政権公約を作った」と厳しい意見を口にした。

妥協の道

公明党との間で、年収の制限について調整した茂木敏充幹事長は、「960万円以上はかなり高所得の世帯。それ以外の9割をカバーすることになり、大半の子どもに支給できる」と述べた。
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一方で、今回の決定には落とし穴がある。子どもへの給付金の分配に際しては、夫婦どちらかの年収の高い方が制限の対象となるというのである。どちらかの年収が960万以上である場合は、給付金を受け取る権利はないが、たとえば、共働きの夫婦の年収が共に950万円で、家庭の年収が1,900万円である場合には、この「制限」には該当しないことになる。
ここで指摘しておくべきは、2021年3月に、立憲民主党、日本共産党、社民党が、新型コロナウイルス感染症の経済支援策として、生活困窮者に1人10万円を支給する「コロナ特別給付金法案」を衆院に共同提出したことである。しかしそのとき、与党はこれを拒否し、協議しなかったのである。

「18歳以下に10万円」を、国民の多くはどう考えているのか?

第2次岸田内閣の発足を受けて、日本経済新聞とテレビ東京が10、11両日に実施した緊急世論調査では、消費喚起策として打ち出した18歳以下への10万円相当給付について「適切ではない」が67%で、「適切だ」の28%を大きく上回った
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また、共同通信社が同じ時期に実施した全国緊急電話世論調査でも、新型コロナ禍の経済対策として18歳以下へ10万円相当を給付する政府方針について「適切だ」は19.3%にとどまった。「一律給付すべきだ」は24.0%、「年収960万円の所得制限の引き下げ」が34.7%、「給付すべきでない」は19.8%だった。
日経の調査で、優先的に処理してほしい政策の1位は「景気回復」の41%、2位は「年金・医療・介護」の39%。「新型コロナウイルス対策」は36%の3位で、選択肢に加えた2020年9月以降で初めてトップにならなかった。
では一般の市民は今回の措置をどのように捉えているのだろうか。「スプートニク」は、東京在住で2人の子どもを持つ佐藤貴之さんに、10万円の給付金についてご意見を伺った。

「我が家では2人の未就学児を育てていますので、助成金はもちろん助かります。ですが、そのために膨大な補正予算を組んで、結果的に国民全体の借金を増やすことには疑問を感じます。また、コロナの感染拡大が落ち着いてきた今のタイミングで助成金を払うことに合理性は感じられません。選挙で公約していたバラマキ以外の何物でもないと思います。ウィズコロナの社会が確実に待ち構えているわけですから、失業手当を充実させたり、リモートワークに企業や大学がシフトしやすいよう、支援したりする方がより社会のためになると考えています。朝晩、東京都心の通勤電車はコロナ禍前の状態に戻りつつあり、時に恐怖を感じます。

現金とクーポンに助成金が分けられることには不便を感じません。現金による支給分は子どもたちの貯蓄に回し、クーポンで支給される分は日々の生活費に充てることになると思います。仮に助成金が全て現金で支給されたとしたら、全額子どもの貯金に回してしまう人も多いでしょうから、経済活性化への効果は著しく低下するはずです。」

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