「アフリカの人たちのために何かすることが仕事になり・・・」ベナンで働く日本人ビジネスマンのストーリー

綿貫大地さんのベナンの生活
綿貫大地さんのベナンの生活 - Sputnik 日本, 1920, 30.11.2021
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独占記事
西アフリカにある小さな農業国ベナン(人口1,200万人)は、多くの野生動物が生息する雄大な自然で多くの人々を魅きつけている。ベナンの人々は、この国を訪れた人たちの目には、子供のように純朴で屈託なく映るが、この屈託のなさには実は別の側面がある。読み書きができるのは人口の半分以下であり、また60歳以上まで生きられる人は少なく、過去50年間に政治危機を何度も経験してきた。日本のビジネスマンがなぜベナンに向かい、ベナンに暮らし、働くようになったのか、「スプートニク」が取材した。
夢はアフリカの生活をより良くすること
綿貫大地さんはベナンで働いてもう4年になるが、アフリカへの関心を持つようになったのはもっとずっと前のことだという。きっかけとなったのは2002年に日本と韓国で開催されたサッカーのワールドカップのときで、「アフリカから来ていた選手たちが楽しそうにプレーする姿を見て、彼ら楽しそうに生きてるな〜と思ったこと」なのだそうだ。
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その後、埼玉大学在学中に、NGOの国際協力プログラムの存在を知り、アフリカに住む人々を助けたいと思ったという。
綿貫さんは当時を振り返り、「アフリカの人たちのために何かすることが仕事になり、しかも楽しそうな彼らの世界を知ることができるのであれば、国際協力という分野でアフリカに貢献したい」と思うようになりました。ビジネスの面白さや可能性を感じ、『ビジネスでアフリカに貢献したい』と思うようになりました」と話している。
ベナンに向かうまでに、綿貫さんはまず、大学在学中にザンビアでボランティア活動に参加。その後、英国サセックス大学開発学研究所で修士号を取得し、社会人経験を積んだ。それから青年海外協力隊として再びベナンへ赴き、現地の野菜農家グループの収入向上にも貢献。こうした経緯を経て、綿貫さんはベナンに会社を設立することとなった。それでもベナンで生活を始めたばかりの頃は、いくつもの困難に直面した。
綿貫大地さんのベナンの写真
綿貫大地さんのベナンの写真 - Sputnik 日本, 1920, 30.11.2021
綿貫大地さんのベナンの写真
「ビジネスでアフリカに貢献したい」
綿貫大地さんは、知識も経験もない状態で、まったく一人でアフリカに行く勇気はなく、まずは日本の青年海外協力隊の隊員としてベナンに向かい、そこでアフリカでのビジネスを始めるための可能性を探ろうと思ったと打ち明けている。
「ベナン共和国を選んだ理由は、言語や地理的な問題から日本人起業家が少ない西アフリカでビジネスをやってみたかったこと、そして、西アフリカ諸国の中で一番自分のバックグラウンドに合っていて強みを活かせる協力隊の要請内容がベナンにあったという2点の理由からです。」
綿貫大地さんのベナンの写真
綿貫大地さんのベナンの写真 - Sputnik 日本, 1920, 30.11.2021
綿貫大地さんのベナンの写真
現在、ベナンは、農業(トウモロコシ、タピオカ、ヤムの栽培)と綿花栽培を主な産業とし、経済的にはあまり発展していない。
綿貫さんは、自身がベナンで出会った農家のほとんどは働き者でモチベーションもあるが、収入はかなり少ない状況だと話す。こうした状況を改善しようと、2021年3月、綿貫さんは、農家が顧客を見つけ、栽培した野菜―にんじん、キャベツ、キュウリ、じゃがいも、レタス、バジル、ピーマンなどを販売することを可能にする会社を立ち上げた。
「出会った農家さんの殆どはモチベーション高く農業に向き合っているにもかかわらず農業だけでは生きていけず、バイクタクシーの運転手などの副業をしながら辛うじて生活していました。」
安全と識字率
ベナンは長きにわたりフランスの植民地だったことから、公用語はフランス語と地元のフォン語とヨルバ語となっている。
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綿貫大地さんは、普段の生活では主にフランス語を使っているが、現地語を話さなければならない場面もあると話す。
「フランス語は本当に難しいので、勉強の毎日です。都市部では多くの方がフランス語を話します。しかし、農村部に行くと現地語しか話さない方々もおります。私の場合は、基本的にはフランス語で、挨拶や値段交渉では現地語を使います。」
日本は識字率が100%という国であるが、ベナンでは読み書きできる人の割合は40%以下である。都市部の顧客は裕福で、高等教育を受けた人ばかりであるため、このことによる問題に直面したことはないと綿貫さんはいう。しかし、医療や安全面についてはそうとも言えないと綿貫さんは語っている。
「医療技術や設備の差が大きな要因だと思っています。充実した医療がないということで怖くないといえば嘘になりますが、普段から気をつけながら生活するしかないかなと思っています。」
日本とベナンの生活に共通点はあるのか?
綿貫さんは、日本とベナンの大きな違いはインフラのレベルだと指摘する。
「日本は圧倒的に便利です。日本は電気水道も安定して公共交通機関も地方部まで整っています。」
「他の生活面での違いでいうと、こちらでは宗教がより生活に浸透しているということも言えると思います。日本では特別なイベント以外で宗教を意識することがあまりないという方が多いと思いますが、こちらでは宗教が彼らの人生設計や生活にとても密着に関わっていると思います。さらに違いを見つけていくと、日本では核家族が多く子育ても各家庭のみで行っていることが多いと思いますが、こちらでは親戚なども含めた大家族で一緒に生活し、子育てもその大家族や、地域コミュニティ全体で一緒にしていくこと多いです。
ベナンと日本の意外な共通点を挙げてみると、家の中では靴を脱ぐとか、年上を敬うところ、またこちらではお辞儀をする文化があるので、そこは似ている点かなと思います。」
「ただ、日本などの先進国とベナンを比べて、圧倒的な違いは、医療と機会の2つだと思っています。既に述べたように、ベナンでは日本のような安価で充実した医療を受けることができません。例えば、ここベナンの地方部で重傷事故に遭ってしまうとそれはほぼ死を意味します。もしくは、マラリアなどの迅速な対応をすれば助かる命も病院に行くお金がないなどの理由で、命を落としてしまうこともあります。
もう一つは、機会が圧倒的に少ないこと。これには貧困が大きな要因になっていることは言うまでもありませんが、その他にも、コネクションの欠如や情報格差の問題から、若者がたとえ夢や志を持っていたとしても、それに向かって生きていけない、そのような機会を与えられていない、という現状があります。」
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で不透明な状況ではあるものの、綿貫さんは今後数年間はベナンで生活し、会社の事業を安定させたいと考えている。来年には、妻をベナンに呼び寄せることになっているそうだが、夫婦は一生、ベナンに暮らすつもりはないという。
「子育ての問題や親のために将来は日本にいたいという思いがあります。ただ、今のベナンの会社は仲間と一緒に創業し、本当にゼロから積み上げてきたものですので、20年後30年後も関わっていきたいと思っています。その頃は、日本とベナンもしくはアフリカの両方で仕事ができるようになっていたら嬉しいですね。」
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