中国の食肉でドーピング違反=禁止物質クレンブテロールでキャリアを失った選手たち

© Depositphotos.com / SimpleFoto
肉 - Sputnik 日本, 1920, 13.01.2022
サイン
ドイツの国立反ドーピング機構(NADA)は、来月開催される北京冬季五輪に参加する選手に対し、中国産の肉を食べないよう勧告した。禁止物質であるクレンブテロールを摂取する危険性があるとしている。
クレンブテロールは筋肉増強の効果を持っていることから、ドーピング規則に基づくクレンブテロールの検査は、異なる競技の選手に対し実施されている。中国やメキシコなど世界の複数の国では、公式には禁止されているものの、食用の豚や牛の体重を増やすためこのクレンブテロールが餌に混ぜて与えられていることから、選手たちが肉製品からこの物質を体内に摂取することは珍しくない。
Олимпийские объекты зимних Олимпийских игр-2022 в Пекине - Sputnik 日本, 1920, 01.01.2022
IOCは、どのような方法で北京五輪を安全に開催する計画なのか?
クレンブテロールは気管支ぜんそくなど肺疾患の治療に使われる。またスポーツ界では、薬物検査を受けないアマチュアのボディビルダーの間で主に人気がある。さらにクレンブテロールは、脂肪を燃焼させる働きがあることから、ダイエットにも用いられている。クレンブテロールとその塩酸塩が、動物の筋肉増強を促進することが分かり、畜産農家らが家畜の餌に加えるようになったのは1980年代になってからである。しかし、人間の身体には芳しくない影響を及ぼすとして、1988年にEU(欧州連合)が、1991年に米国が、そして1997年には中国が、これを餌として使用することを禁止した。しかし、畜産農家らの行動を完全に監視することはできず、中国では食肉を食べた人が、そのなかに含まれたクレンブテロールの塩酸塩によって中毒を起こすことが起こっている。2021年3月、中国の農業農村部は、肉製品の安全性と品質を維持するため、羊、豚、牛など食用の家畜に対するクレンブテロールおよびその他の筋肉増強剤の使用に関し、厳重な措置を講じると発表した。
Отсчет времени до старта Олимпийских игр в Пекине  - Sputnik 日本, 1920, 11.01.2022
中国の「グリーンオリンピック」に暗雲 北京のスモッグで

クレンブテロールの犠牲になった選手

世界のスポーツ選手のドーピング違反をめぐるスキャンダルで、食肉によって体内に摂取されたクレンブテロールで陽性反応となった例は少なくない。1992年には、ドイツの陸上競技選手で、1991年に世界陸上選手権の100メートルと200メートルで金メダルを獲得したカトリン・クラッベが、当時はまだ禁止物質には指定されていなかったクレンブテロールの摂取によって3年間の出場停止処分を受けた。これにより、クラッベは1992年の夏季五輪に参加することができず、事実上、引退を余儀なくされた。また2008年には、米国の競泳選手ジェシカ・ハーディが同じ理由により、1年間の出場停止処分を受けた。このときハーディは、故意的に禁止薬物を摂取したのではなく、サプリメントの中に入っていたのを知らずに摂取したと説明した。また2010年、スペインの自転車競技選手のアルベルト・コンタドールが同じくこの物質で陽性反応を示したことから、2年間、競技大会への出場停止処分を受けた。コンタドールは後に、2010年のツール・ド・フランスのタイトルと2011年のジロ・デ・イタリアのタイトルを剥奪されている。さらに2011年には、サッカーのメキシコ代表の選手の血中からクレンブテロールが検出されたが、食肉から体内に取り込まれたことが証明されたことから、世界反ドーピング機関(WADA)は薬物違反を取り消した。2013年にはメキシコのボクサーのエリック・モラレスがクレンブテロール検査で陽性反応となり、2年間の出場停止処分となった。2018年には英国のリオ五輪に出場した陸上選手ナイジェル・レヴィンも、ボクシングのサウル・カネロ・アルヴァレスも、同物質でドーピング違反とみなされた。こうした例はこれ以外にもまだまだある。
この問題について、2006年のオリンピックの陸上競技の金メダリストで、現在は国家議会の議員を務めるスヴェトラーナ・ジュロワ氏は次のように述べている。

「オリンピックで選手たちは基本的にオリンピック村から離れてはいけないことになっています。しかも現在、世界はまだ新型コロナウイルスによるパンデミックが終息していない状況です。選手用として出される食事はすべて、国際オリンピック委員会との間で調整され、綿密にチェックされています。質の良くない食べ物をめぐる騒動など誰にも必要ないからです。トレーナーたちは選手に対し、それがいくら魅力的な場所であっても、指定された場所以外で食事をしないよう厳しく注意しています。コーヒーを飲むことなども禁止しています。ただし、例外があります。選手に対して、自分で食べ物を持ってくることが許されていることがあるのです。その場合は、選手とコーチ自身の責任になります。中国やソチで開かれた五輪でもそうであったように、ケータリングが認められたり、特定のレストランで食事をオーダーすることができることがあります。しかしいずれの場合においても、オリンピック村以外での食事というのは、リスクを伴うものです。食中毒を起こすかもしれないという危険性は、食べ物の質が悪いからという理由だけではなく、食べ慣れないものに対する反応としてもありえるからです。クレンブテロールやその他の禁止薬物は、一定の選手の間で人気があるバイオサプリに含まれていることがあります。WADAが禁止している薬物に対する陽性判定に対し、見直しを求めることはできますが、その調査には数ヶ月を要し、その間、選手が資格を剥奪されることもあります。しかも、クレンブテロールに陽性反応が出た選手が、偶然、摂取してしまったのか、肉製品やサプリに含まれていることを知っていて、故意に摂取したのかをはっきりさせることはできないのです」。

ジュロワ氏はまた、北京冬季五輪に出場するすべての選手に対し、次のように助言している。

「リスクを冒さず、国際オリンピック委員会が認めた場所のみで食事をすることです。昨年の東京五輪でもそうでしたが、オリンピック村の食事は非常に多彩で、種類も多く、世界中の人々の好みを考慮したものになっています」。

なお、2018年、サッカーのワールドカップを前に、ロシアサッカー連盟は、クレンブテロールが含まれている可能性がある南米および中国から輸入されたすべての食肉に関して、その証明書を確認するよう呼びかけていた。
ニュース一覧
0
コメント投稿には、
ログインまたは新規登録が必要です
loader
チャットで返信
Заголовок открываемого материала