エマニュエル駐日米国大使、「北方領土の日」にスパイス?日本支持発言の真意とは

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ウループ島の夕焼け - Sputnik 日本, 1920, 14.02.2022
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日本では1981年に制定され、すっかり無味乾燥になってしまった「北方領土の日」だが、これにスパイスを加えようとしたのが、ラーム・エマニュエル駐日米国大使である。ツイッターに投稿した動画の中でエマニュエル大使は、「米国は北方領土問題で日本を支持しており北方四島の主権を1950年代から認めています」と述べた。さらに日露間に平和条約が存在しないことについて「長年の懸案である平和条約の実現に向けた日本とロシア政府の取り組みを支援します」と付け加えた。
翌日、林芳正外務大臣は、記者会見で「今般エマニュエル大使が、共有する価値観と原則のために、米国は日本と岸田氏を支持する旨発信したことを歓迎しております」と発言し、実質、エマニュエル氏に対する感謝を述べた。
当該のエマニュエル氏の投稿のコメント欄には、「ありがとう」「こんなクリアなメッセージを日本の指導者からも聞きたい」など、感謝や賞賛のメッセージが数多く書き込まれた。いっぽう、「ありがとうございます。ヤルタ協定についてはどう思っていますか?」「フルシチョフ時代に2島返還の話があったのを、ぶっつぶしたのはアメリカさんだったような気が」「あなた達が数十年前から支持してくれていたら、返ってきていたかもしれないのに。無責任なことをツイートしない方がいいのでは?」などと、突っ込みを入れる人も見られた。
ウループ島のカモメ - Sputnik 日本, 1920, 10.02.2022
モスクワが「北方領土の日」を祝う
この発言は日本メディアでも大きく取り上げられた。数多いコメントの中には賞賛の声もあるが、多くは米国が過去に果たしてきた役割についての指摘である。その一部は「よく言いますね。そんなことをしたら沖縄を返還しないぞ、というダレスの恫喝で日ソ間の北方領土交渉を頓挫させておいて。日露間の北方領土問題の存在はアメリカにとって都合の良いものでしょう。日米の結束を強めるためには共通の敵のアピールが有効でしょうから」「日本と全く関係のないウクライナ問題でロシアに制裁するのに協力しろというわけだからこれくらいのリップサービスはしますよね。真面目に受け取ると損をします」というものだ。
これを受け、ミハイル・ガルージン駐日ロシア大使もすぐさま、英語で発言した。駐日ロシア大使館のツイッターで彼は、ロシアは南クリルの島々における日本の領土主張を認めておらず、南クリルに対するロシアの領土管轄権の正当性を強調した。「領土の引き渡しは1945年のヤルタ協定で明確に規定されており、ソ連、米国、英国は戦争において、ナチスドイツと、その同盟国である軍国主義国家日本と敵対する同盟国として、これに署名した。」
2021年9月、ウラジオストクで行われた東方経済フォーラムにて、プーチン大統領は、ロシアも日本も、完全に両国関係を平常化させたいと思っているにも関わらず、両国間に平和条約が存在しないことをナンセンスだと述べた。また、プーチン大統領は、安倍晋三前首相と、1956年の日ソ共同宣言に基づいてこの作業を進めていく用意があることを話し合ってきたが、日本側は何度も態度を変えてきたと強調した。プーチン大統領によると、ロシア側は日本に対し、米軍や米国のミサイル防衛システムがロシアの国境付近に設置されるかもしれない可能性について、(それが起こらないように)日本に約束を求めたが、日本はその問いには答えていないという。
プリマコフ記念世界経済国際関係研究所・国際安全保障センター所長のアレクセイ・アルバトフ氏は、エマニュエル大使の発言は注目に値しないと話す。

「今、ロシアと米国とはウクライナ情勢をめぐって関係が先鋭化しており、バイデン米大統領は、大使の口を借りて、自身の同盟国への支持をデモンストレーションしてみせたのでしょう。特に何も新しいことはありません。私が思うに、エマニュエル大使の発言は、プーチン大統領が中国を訪問した時に署名した文書と関係があると思います。その中では、台湾は、中国から切り離せない、中国の一部であると記されています。つまり、今回のことも、同盟国に対し、領土問題においてエールを送ったに過ぎません。そもそもNATO内部でも、スペインとイギリスのジブラルタル問題、トルコとギリシャの小島をめぐる問題、米国とカナダの北極圏における海上輸送ルートをめぐる問題など、領土問題は枚挙にいとまがありません。なので、今回の騒ぎも、そのうち忘れられるでしょう。」

岸田文雄首相は2月7日の北方領土返還要求全国大会で、2018年の日露首脳による合意に言及し、粘り強く交渉を進めると述べた。アルバトフ氏は、対話継続はロシアにもメリットがあると考えている。

「日本との対話は続けるべきだと思います。極東における日本の投資はとても必要です。そこに日本の投資が来ないなら、それは領土問題ではなく、投資環境が悪いことが原因でしょう。もしかすると強固で双方に益のある経済関係が、領土問題の解決に一役買ってくれるのではないかと期待します。」

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