ロシアとウクライナの紛争で世界の食糧危機が深刻化 苦しむ国は?

© AP Photo / Tobin Jonesロシアとウクライナの紛争で世界の食糧危機が深刻化 苦しむ国は?
ロシアとウクライナの紛争で世界の食糧危機が深刻化 苦しむ国は?  - Sputnik 日本, 1920, 25.04.2022
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ウクライナでの紛争が世界の市場に影響を与えている。新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに始まった世界の食糧危機は、ロシアとウクライナから肥料や穀物などの輸出が滞るとの危機感を受けて、さらに深刻化している。ロシアとウクライナは穀物や油糧種子のほか、肥料についても、世界最大の生産国の一つであり、輸出国である。
国連人道問題調整事務所によると、ウクライナではこの春、小麦、大麦、ヒマワリ、トウモロコシの作付面積が約30%減少するという。ロシアは小麦の輸出にブレーキをかけている。また、ロシアとウクライナは同じような地域に農産物を供給してきた。中東とアフリカ諸国だ。2ヶ国の紛争が長引けば、パンデミック下で負債を増やし、半恒久的に食糧危機状態に置かれている多くの国々で状況が深刻化する。
Business Insiderが伝えたところによると、ロシアがウクライナで軍事作戦を開始してから、世界の小麦価格は19%上昇した。
食糧危機は時期的にパンデミックの始まりと重なった。ロシアとウクライナの紛争はその状況を加速させたに過ぎない。高等経済学院農業政策部長で、国連農業食糧機関(FAO)モスクワ事務所の元所長のエフゲニヤ・セロワ教授はスプートニクのインタビューでこのように語った。

「食糧危機の兆候は明確に出ていました。それが2年間も続いていたのに、国連もG7もG20も黙っていたのです。この問題を取り上げるようになったのは、2月末になってからです。まずひとつに、ロシアとウクライナが世界の一大穀物供給国であることが理由です。近年、世界の小麦輸出に占めるロシアとウクライナのシェアは約30%、ひまわり油では70%を超えていました。ひまわり油は非常にニッチな市場で、消費国も限られていますが、それでも40ヶ国近くがロシアとウクライナからの供給にほぼ100%依存しています。この2ヶ国はどちらも市場から退場しており、戻るのは難しいでしょう。世界の市場に開いてしまった「穴」は、現在の価格であれば、いずれ埋まるでしょう。痛みは伴うでしょうし、時間もかかるでしょうが。

問題のもうひとつの側面は、化学肥料市場からロシアとベラルーシが退場したことです。この2ヶ国にほぼ100%依存している国も約40ヶ国あります。つまり、これらの国々は、世界市場で調達できる量が減り、また、肥料は収穫に影響するため、自国での農業生産量も落ち込むことになります。もうひとつの悪材料は、2年間続いているコモディティ、特に石油、ガス、金属のインフレです。つまり、農業に必要な資源はすべて値上がりしており、それが農業生産の下押し圧力になっているのです。」

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セロワ教授によると、世界の食糧危機に「貢献」しているのは、今回のロシアとウクライナの紛争だけではない。ヨーロッパでは、温室効果ガス排出削減を目指すグリーンディール政策も、農業生産の伸びを抑えている。グリーンディール政策の要件を満たない農家がたくさんあることで、生産量の減少につながっているのだ。アメリカでは、原油価格の上昇を背景に、飼料作物であるトウモロコシや大豆からバイオエタノールが大量に生産され、畜産に影響を与えている。
国連世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビーズリー事務局長によると、現状が続けば、世界中の最貧地域で飢餓と政治的混乱が発生し、前例のない移民危機が起こり得るという。WFPは、セネガル、イエメン、シリアなど最貧国の約1億2500万人を支援している。しかし、ウクライナでの紛争により資金供給が不足し、WFPは支援を削減せざるを得なくなっている。ビーズリー事務局長は、世界に蓄積された富の総額は430兆ドルにもなり、そのため「子どもがたった一人でも飢餓で亡くなる理由はない」と語った。
食糧危機がもたらす直近の影響について、エフゲニア・セロワ教授は次のように話す。

「ヨーロッパとアメリカが飢餓になるという意見もありますが、それはないでしょう。食事内容が多少変化したり、物流などの問題が生じることはあるかもしれませんが、欧米諸国は解決できます。OECD諸国のように、食費が支出に占める割合が10%程度のところでは、それほど大きな影響にはなりません。もちろん、こうした国にも貧しい人や難民はいますが、社会システムがそのような人々を支援できるようにできています。最も大きな犠牲を被るのは、アフリカ、南アジア、ラテンアメリカの貧しい国々であり、食費が家計支出の50〜60%を占め、他の支出項目全体よりも大きい国々です。これをどうやって解決していくのでしょうか?何年も続いた干ばつが終わり、オーストラリアが輸出市場に戻ってきますし、インドも進出しています。

ヨーロッパでは、グリーンディールの中止を、つまり、農業生産への制限解除を求める声がすでに上がっています。現在の食糧価格であれば、新たな耕作地を開墾することもできるでしょう。ましてや、移民労働力も流入しているのですから。それでも、最貧国は飢餓の問題に直面する可能性があります。前回の2006〜2008年の食糧危機は「アラブの春」につながりました。今回の危機が何をもたらすのかは、推測することさえ困難です。だからこそ危険なのです・・・」

FAOの予測によれば、全員に足りるだけの食糧はある。ただし、貧しい国々の弱者にとって手の届く価格なのかどうかは、別の問題だ。世界飢餓指数によると、2021年には47ヶ国で高いレベルの飢餓がみられた。ウクライナの紛争により、2022年はこの数が60ヶ国に増えると考えられている。
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