G7 自国経済への損害を回避して、ロシアに痛みを与えることはできるのか?

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欧州とロシア - Sputnik 日本, 1920, 28.06.2022
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米国、英国とその同盟国は、ロシアに対する圧力を強めていく意向である。しかし彼らは同時に、ロシアに「最大限の痛み」を与えながら、その他の世界に対する影響を最低限に留めたいと考えている。これを目的に、西側の首脳らは、ドイツで開かれるG7サミットで、燃料エネルギーによるロシアの輸出収入をさらに減らしつつ、世界のエネルギー市場を安定化させるための具体策について話し合う計画である。
しかし現段階で、この「良い考え」は成功を収めておらず、逆に、まったく反対の結果を生むことになっている。英国のボリス・ジョンソン首相は、「新たな経済制裁として」、英国は2022年末までロシア産石油の輸入を停止すると表明した。しかし、これにより英国は、「経済の低迷とインフレの上昇という不安定な状況」に直面している。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのビジネスエコノミストであるクリス・ウィリアムソン氏は、英国の経済について、「まるで空っぽの状態で動いているかのように見え始めている」と指摘している。
中米国旗 - Sputnik 日本, 1920, 27.06.2022
G7サミットとNATO 中国もロシアと同様に狙われるのか?
一方で、日本の岸田文雄首相は、G7サミットを前に、ロシアに対し、さらなる圧力をかけることが必要不可欠だとの見方を示している。
しかし、ロシアに深刻な危害を加えるという、この西側と日本の新たな努力は、果たしてついに当初の目的を達成することができるのだろうか。あるいはまたもやブーメランのように自国の経済に打撃を与えることになるのだろうか。
金融アナリストのアレクサンドル・チモフェーエフ氏はこう述べている。
「この問いに対する答えは、ユーロ圏における5月の貿易バランスに表れている。EU諸国の経済は、新型コロナによるパンデミックの制限が解除されたあと成長が見られていたものの、再び停滞し始めています。予算に余剰があるのは実質、ドイツ一国だけです。その額はおよそ30億ユーロですが、しかし、対露制裁の発動前は300億ユーロでした。ですから、これほど深刻な減少は、破綻にも近く、大きな懸念を呼ぶものです。これに対し、米国経済は(少なくとも)パンデミックのときに比べれば、それほど悪くない状況で、貿易高も輸出高も増加しています。このように、G7のパートナー諸国(EUと米国)の経済問題は、サミットを前にして、同等とは言えない状況です」。
アナリストらの評価によれば、2022年、資源の輸出による国の収入は1800億ドルに達する可能性があるという。同時に、G7加盟国がロシアに圧力をかけるために行う「制裁対象」の数は大幅に削減するだろうと専門家は予測している。
「ロシアの銀行部門をブロックする可能性は、事実上、失われています。ロシアの銀行はすでにかなり前からSWIFTからの除外に適応しています。貿易バランスについて言えば、現在、ガスプロムがより高い料金でガスを販売していることから、ロシアの輸出は伸びています。ただし、輸入(電化製品やその他の製品)について言えば、事実、問題はあります。制裁がある限り、近い将来、それが元のレベルに戻ることはないでしょう。とはいえ、この問題もそれほど危機的なものではなく、解決可能なものです。ですから、西側による7弾目、8弾目、9弾目の制裁がロシアに何か新しい大打撃を与えたり、ロシア経済にマイナスになるようなことはないでしょう。たとえば、ギリシアやキプロスの桃は、今、イランの桃やスイカに取って代わっています。ロシア統計局のデータによれば、フルーツや野菜の値段は下がってきています。しかし、EUが、ロシアの燃料の代替(生活と産業にとってきわめて重要なもの)に関する問題を解決することは、それよりはるかに難しいことなのです。しかも、先ほど述べたドイツ(EUのリーダー)のインフレは30%を上回っているのです」。
こうした中、ロスネフチは、原油の在庫がないと報告を行っている。つまり、インドや中国からの注文が、需要を満たす量を上回っているということである。原油は今、低価格で販売されている。しかし、ロシアの予算は、1バレル60〜70ドルを見込んでいるが、現在は値下げをしても1バレル120ドルで売られており、今後、価格がさらに高騰することは疑いようもない。
LNG事業 - Sputnik 日本, 1920, 22.05.2022
対露制裁を強める日本にとって、エネルギー分野は例外となるのか?
そこで、ロスネフチもロシアの国家予算も、いずれにしてもプラス傾向となるとアレクサンドル・チモフェーエフ氏は指摘している。

「EUが安価なロシア産の燃料エネルギーを拒否すれば、ロシアではなく、ドイツの工場が停止するようになり、欧州の空洞化を招く可能性があります。しかも、米国は、自分たちはまったく安全だと感じています。というのも、近くに石油やガスを採掘しているカナダがあるからです。また米国自身、主な産油国に含まれています。しかも、米国(欧州諸国と異なり)は燃料エネルギーの供給において、ロシアのパートナー国の上位にあったことは一度もないのです。ですから、この部門での制裁に苦しむことになるのは、他でもない欧州です。ロシアも苦しい状況ではありますが、しかしそれほどではありません。なぜならロシアにはこれに対処する方法があるからです。燃料エネルギーは全ての国に、いつでも必要なものだからです。EU諸国には、実質的に資源がありません。さらに、欧州の在庫が空になれば、代替燃料、グリーンエネルギーというものの素晴らしい未来についての言葉もそれほど魅力的なものではなくなります」

一方、欧州がエネルギー不足によって、弱体化すればするほど、米国の産業の優位性が高まる。しかしながら、米国は、EUや日本に連帯を呼びかけ、両者が対露制裁を強める必要性があることに疑いを持つことなどないと考えている。しかし、制裁の目的である壊滅的な効果は依然として得られていないことから、ドイツで開かれるG7サミットには、今回、ロシアに対する中立的な立場を変更するよう求められているインドも招かれている。最近、デリーを訪問した英国首相は、インドに対し、技術提供や新たな契約など、多くの特典を約束した。しかし、今のところ、インドと中国は共に、自国の国益を失うことを望んでおらず、西側の圧力にうまく抵抗している。
一方の日本は西側の路線に全面的に支持を表明しているが、この連帯による「対価」は、EUより高くつく可能性があるのではないだろうか。
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