スリランカの危機はなぜ起こったのか?

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スリランカ デモ - Sputnik 日本, 1920, 15.07.2022
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スリランカの政治危機はきわめて衝撃的である。2022年7月9日、デモ隊が抗議行動を展開し、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の公邸に侵入、またラニル・ウィクラマシンハ首相の私邸に火をつけた。政府は事実上、打倒され、スリランカの行政機関は崩壊したも同然となっている。2022年4月以降、スリランカでは何度にもわたって政権交代が行われ、国を指導しようとする政治家の数はますます少なくなっている。
スリランカは、深刻な経済危機に陥っており、燃料不足に加え、マズート不足により電力が逼迫している。また資源はほぼ使い果たされている。2022年6月末、国の燃料の在庫は、9000トンの軽油と6000トンのマズート、つまり平均的に消費した場合の3日分以下の容量となった。またスリランカの通貨ルピーは暴落し、デフォルト(債務不履行)に陥った。スリランカは2022年に86億ドルの利払いをしなければならなかったが、外貨準備は23億ドルしか残っていなかったのである。
状況はきわめて深刻であり、スリランカはアジアで初めて「破産宣言」を行う国となった。経済の復興にはかなりの時間と尽力が求められる。しかし、こうした政治危機にまで発展した深刻な経済危機の原因は謎である。多くの専門家は、スリランカの危機は人工的なものだとの考えに同調している。
実際、ラージャパクサ大統領は、いくつかの奇妙な経済策を講じた。まず、2019年末に大統領は税金を大幅に軽減し、それにより国の収入が激減した。続いて2021年5月には、有機農業への切り替えを理由に、化学肥料や農薬などの輸入を禁止し、これがコメの収穫量の低下を招くこととなった。
スリランカ大統領、電子メールで辞表提出 - Sputnik 日本, 1920, 15.07.2022
スリランカ大統領、電子メールで辞表提出

高品質なコメを輸出する

コメの話から始めると、2019年から2020年にかけて、化学肥料の輸入禁止が導入されるまで、スリランカは321トンのコメを収穫していた。2020年から2021年にかけては339万トン、2021年から2022年にかけては292万トンである。ではこの収穫量は多いのか少ないのか。 スリランカの住民は、平均で年間114キロのコメを消費している。つまり、2190万の人口には250万トンのコメが必要になる。また種には、およそ23万トンのコメが必要となる。
つまり、スリランカのコメの収穫量は、基本的な国の需要を満たすのには十分だったということである。しかも、コメの輸入量は、2019年から2020年にかけては1万6000トン、2020年から2021年にかけては14万7000トン、2021年から2022年にかけては65万トンであった。つまり、スリランカのコメの量は、国民の需要分よりも遥かに多かったということになる。コメの備蓄は77万トン以上あった。化学肥料の輸入禁止は、有機米は普通のコメよりも高く売れるということを理由に導入されたものである。
インドでは、2022年3月の普通のコメの値段は1キロあたり60セントで、有機米は120セントであった。加えて、有機米は物価の高い国に輸出される。たとえば、日本ではコメは1キロ4ドル25セント、韓国は3ドル60セントという値段である。70万トンのコメは、日本の価格で言えば、29億ドルに相当する。スリランカの輸出業者は、普通のコメを国内市場向けにし、品質の良い有機米は輸出に回していた。
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税金と債務

スリランカの大統領が実施した税金の軽減という措置には大きな理由があるはずである。
国家予算の統計を見ると、2018年の収入は1兆7000億ルピー(111億ドル)、2020年と2021年は1兆3700億〜1兆4000億ルピー以下(71億〜72億ドル)となっている。
つまり、収入は40億ドル相当、36%減少しているのである。

大判振舞い? いや、おそらく理由は国債にある

世界銀行のデータによれば、この措置を講じた後、スリランカの国債は急激に減少した。2019年には556億ドルだったのが、2020年から2022年にかけては505億ドル、つまり51億ドルも減ったのである。
というのも、国債には、国家の債務と民間企業の債務が含まれている。スリランカ財務省の発表によれば、政府の債務は2021年、351億ドルであった。つまり、大手貿易会社を中心とする民間部門は205億ドルほどの債務を抱えていたということになる。税金の軽減は、こうした企業の債務負担を緩和する目的であったのは明らかである。スリランカの国債がこれほど大きかった理由はかなり単純で、対外貿易の赤字が慢性的に続いていたことにある。世界銀行のデータによれば、1962年以降、スリランカが対外貿易で黒字となったのは2回しかないのである。2011年から貿易収支の赤字は86億ドルに達したが、2020年には51億ドルに減少した。しかしこれはスリランカのGDP(国内総生産)の実に6.3%である。もし生産、販売しているよりも多く消費している場合、赤字は債務で補う必要がある。

危機と対外貿易

危機的状況にありながら、2022年初頭のスリランカの対外貿易はきわめて活発であった。1月から5月にかけての輸出高は51億ドルで、これは2021年1月から5月と比較して、9.7%増である。繊維製品の輸出が大きく伸び、24億ドルにまで増加した(16.3%)。また米国向けの輸出が急増し、13億ドル(20.3%)となった。輸入は83億1000万ドルであった。しかし、1月の輸入が19億6000万ドルだったのに対し、5月は9億8000万ドルにまで減少、つまり2分の1になった。興味深いことに、2022年5月の輸出高と輸入高は同じレベルとなり、それぞれ9802億ドルであった。2022年6月のデータはまだないが、輸入の減少傾向は非常に象徴的である。
つまり、この傾向は、国内の品不足が人工的なもので、輸入業者によって作られたものであるという結論を導き出すものである。おそらくそれは政治的な目的を持ったものだろう。
このように、スリランカの政治危機は、政府が経済モデルを変えようとしたことによるものだと仮定することができる。
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かつて、消費の一部は事実上、複数の製品に対する国の補助金を通じて、国債を使って融資されていた。しかし、債務の負担があまりにも重くなり、債務返済額は膨れ上がった。このことが、スリランカの輸入業者に苦しい条件を与えることとなった。というのも、彼らは自らの輸入債務を払えなくなり、破産する可能性が出てきたからである。そこで輸入業者らが輸入を停止し、その結果、品不足を生み出すこととなった。政府は不換紙幣を増刷するという典型的な過ちをおかし、それによりインフレを悪化させ、市民の不満を生むことになったのである。
その後、抗議行動が勃発し、政府の崩壊へとつながった。
政府と市民は、対外貿易の不足分を切り抜けるために、経済を立て直し、需要を自ら補償するために話し合う必要があった。
しかし、状況は袋小路に陥ったのである。新たな政権がどのようなものになろうと、これまでの経済政策を続けて行っていくことはできない。いずれにせよ、輸入代替と輸出部門の発展を中心とした大々的な経済改革を実施することになるだろう。つまり、最終的に、生産量を伸ばすことが求められているのである。
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