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    ガスプロム

    ガスプロムの政治経済学(2016年版) (2)

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    塩原俊彦
    筆者 塩原 俊彦
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    近く刊行する予定の『ガスプロムの政治経済学(2016年版)』(Kindle版)の序章をそのまま紹介したい。

    序章

    1. 単一ガス供給システム上のバランス

    ロシア連邦における天然ガスは「単一ガス供給システム」(ESG)と呼ばれる、ガスパイプライン(PL)網であるガス輸送システム(GTS)や地下貯蔵所などを連結したシステムのもとで、企業・家計に供給されたり、輸出されたり、あるいは地下貯蔵所に一時的にストックされたりしている。ロシアで採掘されるガスの9割前後がESGを通じて移送されており、輸出されるガスの9割以上はESGの枠組みで輸出されている。そこで、表1として「2010-15年の単一ガス供給システム稼働域でのガスの流入・配送バランス」を示してみた。表の上部はGTSに流入したガスを示しており、その多くはロシア国内で採掘されるガスで構成されている。ただ、中央アジア・センターPLを通じて、中央アジア産のガスもGTSに流入している。下部はGTSで配送されたガスを示している。主に国内消費分と輸出分からなっている。全体としての推移に注目すると、ロシアからのガス輸出の減少や国内消費の冷え込みなどを背景に、2013年に比べて2014年と2015年のESGの利用は低水準にあることがわかる。

    表1 2010-15年の単一ガス供給システム稼働域でのガス流入・配送バランス, 単位:10億㎥
    表1 2010-15年の単一ガス供給システム稼働域でのガス流入・配送バランス, 単位:10億㎥

    ガスプロムはここで紹介したESGを管理・運営している。ロシア国内でガスを採掘している他社はガスプロムにガス輸送料を支払って、GTSによる輸送に頼っているが、ガス輸出については、PLで輸出する権利が事実上、ガスプロムにしか認められていないため、他社は現状では、ガスPLによる直接的な輸出ができない状況に置かれている。

    2. 天然ガスの確認埋蔵量

    近年、「在来型ガス」と呼ばれる、比較的浅い堆積層の油・ガス田から採掘されるガスのほかに、「非在来型ガス」という、坑井から回収するのに最初から特殊な回収技術を利用しないと回収できないか、あるいは坑井掘削以外の方法で回収をはかる必要のある、比較的深い堆積層にある天然ガス(タイトガス、コールベッド・メタン、シェールガス)が北米を中心に採掘され、注目を集めている。世界中の天然ガスの確認可採埋蔵量は2015年末現在、186.9兆㎥と高水準にある(1)。1995年の同量は119.9兆㎥、2005年でも157.3兆㎥にすぎなかったから、近年、同量が急増していることがわかる。非在来型ガスの埋蔵量が確認可採埋蔵量としてより多くカウントされるようになった結果である。

    ガスプロムグループの天然ガスなどの各種埋蔵量の推移を示したのが表2である。2015年末の天然ガス埋蔵量は23.7兆㎥にのぼり、2014年末に比べて0.8%増と、わずかながら増加した。2015年12月31日現在、ガスプロムグループはロシア領内に炭化水素原料の探査・採掘向け地下資源開発の267のライセンスを取得していた。鉱区の総面積は54万6900㎢にのぼる。うち、33万1300㎢は大陸棚開発にあたる。面積2万2900㎢分の35ライセンスについては共同開発に分類されている。

    なお、ロシア式の埋蔵量(A+B+C1)でみると、ロシアのガス埋蔵量は2015年末で36.1473兆㎥、ガスコンデンセートの埋蔵量は14億9950万トン、石油の埋蔵量は20億8200万トンであった(2015年の年次報告)。ガスプロムグループのガス埋蔵量はロシア国内の埋蔵量全体の72%を占めている。

    他方で、BPが毎年公表しているStatistical Review of World Energyによると、2015年末のロシアのガスの確認埋蔵量は32.3兆㎥であった。世界全体の確認埋蔵量(186.9兆㎥)の17.3%にあたる。ロシアの確認埋蔵量はイランの34兆㎥についで、世界第2位だ。米国は非在来型ガスが開発可能となったことで、その確認埋蔵量を急増させており、1995年末には、4.7兆㎥だった確認埋蔵量が2015年末には10.4兆㎥と、イラン、ロシア、カタール(同24.5兆㎥)、トルクメニスタン(17.5兆㎥)についで第5位となった。

    表2 ガスプロムグループの埋蔵量*の推移(各年末)
    表2 ガスプロムグループの埋蔵量*の推移(各年末)

    3. ガスの採掘と販売(消費)

    BPの統計によると、2015年の米国の天然ガス生産量は7673億㎥で、ロシアの5733億㎥を大幅に上回った。米国は2009年から7年連続でロシアのガス生産量を超え、世界最大のガス採掘国でありつづけていることになる。その背景には、非在来型ガスの採掘量急増がある。米国の非在来型ガス(タイトガス、コールベッド・メタン、シェールガス)のうちシェールガスの生産量は2015年に9.96兆立方フィート(2820億㎥)まで増えた。2008年は1.98兆平方(561億㎥)フィートでしかなかったから、その急膨張ぶりがわかる。新しい技術によって、非在来型ガスの採掘が採算に乗るようになった結果だ。

    つぎに、ロシアにおける天然ガスの採掘量をみてみよう。表3からわかるように、ガスプロム本体の採掘量は近年、減少傾向にある。ガスプロムグループ全体としてみると、2011年の採掘量5132億㎥から2015年の4195億㎥まで18.3%も採掘量が減ったことになる。他方で、ガスプロムグループ以外の独立系会社の採掘量は比較的順調に増加傾向をたどっている。最大の独立系会社、ノヴァテクの採掘量は2015年に679億㎥と、2011年に比べて28.4%増えた。石油会社ロスネフチはイテラとTNK-BPの吸収により、2015年の採掘量を625億㎥と、2011年に比べて5倍に膨らませた。石油会社ルクオイルもガス採掘量を逓増させている。

    エネルギー省の分類では、ガスプロム、垂直統合石油会社(ロスネフチ、ルクオイルなど)、独立系会社(ノヴァテクを除く)、ノヴァテク、生産分与協定に基づく採掘の5種類がある。2015年のガス採掘全体に占めるそれらの構成比をみると、ガスプロムが63.9%(2014年に比べて3.4%ポイント減)、垂直統合石油会社が13.8%(同1.1%ポイント増)、独立系会社が9.9%(同2.6%ポイント増)、ノヴァテクが8.2%(0.2%ポイント減)、生産分与協定に基づく採掘が4.2%(同0.1%ポイント減)であった。

    なお、ロシアでは通常、採掘量が公表されており、生産量ではない。天然ガスの場合、採掘された天然ガスがそのままガスとして消費されるわけではなく、不純物の除去などの工程を経て消費される。このため、「採掘量>生産量」となるのが普通である。

    表3 ロシアにおける各社別のガス採掘量推移 単位:10億㎥
    表3 ロシアにおける各社別のガス採掘量推移 単位:10億㎥

    つぎにガスプロムグループによるガス販売量の推移をみてみよう(表4参照)。近年、ロシア国内でのガス販売量は逓減傾向にある。外貨獲得源である「遠い外国へのガス販売量」は年によって実績が増減しているが、「バルト・CIS諸国へのガス販売量」もまた減少傾向にある。大量のガス輸出先であったウクライナへの輸出の減少が響いている。

    表4 ガスプロムグループのガス販売量推移(単位:10億㎥)
    表4 ガスプロムグループのガス販売量推移(単位:10億㎥)

    エネルギー省の資料によると、2015年のロシア国内の消費の割合は輸出と国内消費を合わせた全体の67.7%まで低下した(2014年は68.9%)。輸出の割合は2014年の31.1%から2015年の32.3%に変化した。国内消費のなかで、公共日用サービス部門と工業部門を合わせた分野での消費が全体の39.1%、発電向けに供給されるロシア統一電力システムでの消費が23.1%、単一ガス輸送システムの送ガスモーター向けのガス供給が4.9%を占める。

    つぎに販売価格に注目すると、表5からわかるように、ロシア国内のガス販売価格がもっとも安く、ついで「バルト・CIS諸国」向けのガス価格が高く、「遠い外国」向けのガス価格がもっとも高い。その価格差は2015年でロシア国内価格の4倍強にあたる。この価格差を少しでも縮小するために、ロシア国内では徐々に国内価格が引き上げられている。

    表5 平均ガス販売価格(付加価値税、物品税、関税を差し引く)、年来
    表5 平均ガス販売価格(付加価値税、物品税、関税を差し引く)、年来

    ≪註≫
    序章
    (1) BP Statistical Review of World Energy (2016) BP, p. 20.

     

     

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