08:20 2020年10月26日
経済
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米国のドナルド・トランプ大統領は、Tik Tokの米国事業を、ウォルマートとオラクルという2つの米企業と提携させる案について承認した。この提携案は当初、トランプ大統領が要求していたものとはかなりかけ離れたものとなっているが、大統領はこれを「素晴らしい」と評価した。事実上、米国が始めた貿易戦争と技術覇権争いは、米政府が求めていたような結果をもたらすことはできなかった。

結果的に米国は自国の経済にとっての損害を最小限に抑えるため、あらゆる局面で譲歩し、最初の計画を断念することになったのである。

Tik Tokとの戦い 

バイトダンス社(Tik Tok運営企業)との合意だけを見ても、環球時報紙の胡錫進編集長は、もちろんこれは公正なものではないが、最悪の事態は避けられたのではないかと指摘する。トランプ大統領は当初、米企業がTik Tokを買収できない場合は、この動画アプリを米国で禁止するとしていた。バイトダンスにとって、米国との合意はきわめて深刻な結果をもたらすものであり、それは、国際的な事業と独自のユニークな技術を魅力的とはとても言えない価格で譲渡するか、あるいは1億人ものユーザーを持つ米国市場を失い、その結果として企業の資産を最低のレベルにまで減少させるかのどちらかの選択だったのである。

動いたのは中国政府である。中国は、AI(人工知能)アルゴリズムを含むハイテク技術の輸出を禁止するとの決定を下した。これはトランプ大統領が最初に提示した合意が不可能となることを意味した。そこで結果として、Tik Tokの外国事業を分離して設立する新会社にオラクルとウォールマートが20%出資し、残りの80%の株式をバイトダンスが所有することになったのである。この合意では、中国側の企業の支配権と主要技術は守られることになった。また米国市場への新規株式上場の展望においても、中国企業にとっては有利な状況となる。

一方、トランプ大統領にとって、この合意は本質的には屈辱的なものだったであろう。しかし、バイトダンス社から、 Tik Tokグローバルという新会社を米国に設立し、2万5,000人の新規雇用を創出し、50億ドルの税金を支払い、また若者のための50億ドルの教育基金を設立するという約束を取り付けた。大統領選を前に、新型コロナウイルスによる経済低迷と社会的な悪影響を背景にトランプ大統領の支持率が低迷する中、今回の合意は社会経済的な面で肯定的な結果と評価してよいだろう。

ファーウェイとの戦い 

同じような例は他にもたくさんある。ファーウェイとの戦いは、米商務省がこの企業を初めてブラックリストに含めた2019年に始まった。これは公式的には、米国企業はファーウェイに自社製品を供給する場合に特別な許可を取得することが求められるというもので、取引をかなり複雑にすることを意味する。ビジネス界からの圧力を受けて、米商務省は新たな体制にスムーズに移行するため、ファーウェイ向けの輸出に対する暫定的な許可を出したが、この許可はつい最近まで、何度も期間延長された。そして米国はファーウェイへのほぼすべての半導体チップの供給を制限するという新たな制裁を導入した。この半導体チップには、米国が管理する米国の技術が用いられているとして、どの国で製造されたものもその対象となっている。

これはファーウェイにとって、「死刑」とも取れる決定である。しかし、インテル社に対しては、ファーウェイ向け輸出のための暫定的な許可が依然、有効となっている。また最近では、半導体チップ製造会社AMDも同様の許可を得ている。つまり、米国が下ろした技術分野での鉄のカーテンは穴だらけだったというわけである。その理由は単純だ。ファーウェイだけでも、技術と製品の輸入に毎年100億ドル(およそ1兆530億円)もの額を拠出していたからである。中国は毎年、3,000億枚の半導体を輸入していたが、これは石油の輸入の規模をも上回っている。中国市場を失えば、米国の技術関連企業の多くが、大部分の収益を失うことになるのである。米国政府は、とりわけこの危機的状況にあって、ビジネス界を無視するわけにはいかない。

現実に直面したトランプ大統領の反米政策

トランプ大統領の政策が現実に直面したと指摘するのは、スプートニクの取材に応じた中国国際問題研究院のヤン・シユイ研究員。ヤン研究員は、トランプ大統領は中国との経済関係を断絶するという路線をとっているが、これは現実的には達成不可能なものだと述べている。

「トランプ大統領は中国との経済関係を全面的に断絶するという政策をとっていますが、実際には、これは達成不可能なものです。たとえば、トランプ自身の会社が今年上半期に、中国で製造された6トンもの机を輸入しており、これは中国と米国の貿易経済関係は依然として非常に強く、完全に分離することは不可能であるということを物語っています。ですから、トランプ大統領は選択的に分離することを選択したのです。たとえば、中国企業を米国の投資市場から追放したり、また技術分野で制限するなどです。しかしこれには裏の面があります。技術協力分野で距離を置くことは、中国だけでなく、米国にも害を及ぼすのです。ですから、米中関係の分離政策においては、一定の妥協点を探る必要があるのです」。

米国と中国の貿易不均衡は、依然、拡大を続けている。しかし、トランプ大統領が制裁関税を発動しても、トランプ大統領在任の4年間で、米国との貿易による中国の収益は合計で25%拡大し、3,000億ドルを超えている。米国による制裁は、中国を今年下半期にGDPの伸び率を記録した唯一の国にする妨げにはならなかったのである。国際通貨基金(IMF)は、中国はコロナウイルスの危機にも関わらず、2020年に経済成長を見せた唯一の国になるだろうとの予測を示している。ちなみに、コロナウイルスの感染拡大は米国の医療システムが脆弱であることを露呈した。いずれにしても、コロナウイルス対策における中国と米国の違いがきわめて大きいものとなったことは事実である。

米国は一見、経済力においても、技術力においても、中国を上回っているように見え、両国の対立においては米国が勝利するかのように思われる。実際、中国の不均衡から始まった貿易戦争に対称的な答えを出すことはできない。また中国は、米国の技術入手への制限に対し、同様の対抗策を打ち出すことはできない。なぜなら中国は米国と競争できるだけの技術的なコンピテンシーを溜め込むことができていないからだ。しかし現実はさらに複雑なものである。米国政府は短期間で中国にとっての問題を作り出すことに成功した。しかし新たな中国の5カ年計画においては、技術輸入と自国の基礎研究の発展が重要な位置を占めていることは明らかである。最終的に、資金とその他の資源を正しく配分することによって、中国はより独立した存在になり、米国は世界経済2位としての国の達成に対する需要を失うことになるのである。そして、このときまでに米国はGDP規模においても、中国にトップの座を譲ることになるかもしれない。

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