パンデミックを引き起こした新型コロナウイルスはどこからきたのか、世界中で議論がなされている。
ほとんどの研究者は、コウモリが新型コロナウイルスの感染源である可能性が最も高いと推測している。それでもウイルスの正確な起源はまだ明らかにされていないため、様々な理論が生まれているが、その根拠の程度もまた一様ではない。中国の山東第一医科大学の病原体生物研究所のシー・ウェイフェン教授は「新型コロナウイルスが発見されて以来、ウイルスの起源は人為的なものであるという根拠ない憶測が存在する」と論文で述べている。
「特にS1/S2の挿入(注:後述)は非常に珍しく、研究室で操作された可能性を示すものであると指摘されている。我々の論文は、そういった挿入が自然界で起こることを明確に示している」
奇妙なゲノム やっぱり研究室で生まれた?
コウモリの研究を行う中国とオーストラリアの生物学者らは最近、新型コロナウイルスに最も近いウイルス株と考えられるRmYN02ウイルスを同定した。そのゲノムのいくつかの部分には新型コロナウイルスに特徴的なアミノ酸配列の挿入が見られ、何箇所かでは新型コロナウイルスとの一致率は90%を超えていた。
研究者らが同定したRmYN02は、雲南省でコウモリから採取された227種類のウイルスの分析で見つかったものだが、このコウモリは新型コロナウイルスが出現する前の、2019年5月〜10月に採取されたものだった。この論文は、新型コロナウイルスの表面にあるスパイクタンパク質にS1/S2のアミノ酸配列が挿入されている点に焦点を当てている。このスパイクタンパク質があるためには、ウイルスは宿主の細胞に付着することができる。S1/S2の挿入は新型コロナウイルスの特徴であり、これまでにDNAシークエンジングが解析した全ての新型コロナウイルスに存在する。ウイルスが人工物であるという疑念を呼ぶのはまさにこのS1/S2の挿入が存在するからなのだ。
今回コウモリから発見されたRmYN02ウイルスにもS1/S2の挿入が含まれているが、これは新型コロナウイルスのものとは部分的に異なる。これらの事実は、両者のウイルスの由来が個別のものであることを示している。
研究者らは、RmYN02は新型コロナウイルスの直接的な進化の前駆体とは言えないが、RmYN02の存在は、異常なアミノ酸配列の挿入が進化の中で自然に起こり得ることを示すものだとしている。

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